JAの活動:持続可能な社会を目指して 希望は農協運動にある
【特集:希望は農協運動にある】「農村ユートピア」実現へ 道民と共に輝くコミュニティ 小野寺俊幸JA北海道中央会会長に聞く(2)2020年10月15日
土地は先人からの預かりもの
小野寺 北海道農業について言えば、先ずは開拓時代の先人のおかげで現在の私たちがあるのです。これをいかに次世代に継承するかを考えなければなりません。後継者を育てるためには、農業をやりたいという人が誰でも参入できる職業であるべきだと考えています。土地は先人からの預かりものであり、個人のものではないのです。例えば、30年預かって農業をやったら、それを次世代につなぐ。これをスムーズに行うのがJAの役割だと思います。
北海道農業の課題の1つが、女性が活躍できる環境づくりです。これまで女性は、経営で重要な役割を果たしていただいていながらも、経営のパートナーではなかった面があります。女性の能力はすばらしいものがあります。女性が輝く組織や地域にならないと、農村は変わりません。女性の皆さんが輝くことで、本当の「農村ユートピア」が実現できるのです。
――男女共同参画でこの国は、著しく立ち遅れています。農業では専業地帯ほどそうした傾向が強い。会長の思いとは異なり、男性の意識があまり変わっていませんが。
小野寺 一番のハードルは、そこにあります。その壁をいかに取り払うかです。早急に取り組まなければならない課題だと考えています。アメリカ研修で最も大きなカルチャーショックを受けたのは、農家の女性の暮らしでした。経営に携わりながらも、パンやハム・ソーセージなどは農家の女性の自家製である等で、ゆとりのある生活をしていました。当時、北海道では私の母もそうでしたが、農作業で真っ黒になり遅くまで働いていました。いつかは北海道でも、アメリカのような農業・農村社会をつくりたいなと思ってきました。
これからは、女性もどんどん海外に出かけ、欧米の先進的な実情を見てきてほしいですね。よいと思ったことはすぐに採り入れる実行力が女性にはあります。また、命にもっとも近いところにいるのが女性であり、母親です。安全で安心な食べ物を子どもたちに食べてもらうのは私たち農業者・JAの役割であり、そのことを強く実感・意識できるのは女性なのですね。
准組合員と一緒に
――JAグループではいま、組合員との対話運動に取り組んでいます。正組合員はもとより、准組合員との関係をさらに深める挑戦ですが、准組合員の比率が高い北海道ではどのように考え、受け止めていますか。
小野寺 職員に、やれというのではなく、トップみずから率先垂範することが大切だと思います。すると職員もついてきます。対話運動で、特に女性との対話を重視しています。なかでも若い女性(フレッシュミズ)の出番をつくり、北海道農業をいっそう輝かせたいと思っています。
准組合員の農協事業の利用規制に関しては、今日の農村の人口減少による疲弊をよく見て考えてほしい。農村の現状や実態からすれば、正組合員も准組合員の区別もありません。漁協や生協なども含め、お互いが力を合わせて地域を守らなければならないのですから。生産者も消費者も、共に時代を生きる地域生活者であるという基本を大切にしたいですね。
JAの経営基盤強化も必要です。それには、組合員一人ひとりの経営力のアップが前提になります。JAを大きくし、組織は守れても農家が滅ぶようなことがあってはなりません。一人ひとりが力をつけ、その力をJAに結集するという基本が大事です。
――この国のカロリーベースの食料自給率が38%に対して、北海道は196%と高い数値を誇っています。自他ともに任じる食料基地として、農畜産物貿易の自由化の影響などについてはどのように考えていますか。
まず自給率アップ
小野寺 やはり畜産物が心配です。チーズであれば世界で一番おいしいチーズが日本にはあります。量ではなく、質です。新型コロナウイルスが拡大し、一部の国で輸出制限をする動きがありました。日本の農業はこれからしっかりと国内自給率を高め、一方で高度な技術力を生かし、海外に積極的に打って出るべきだと考えています。
私たちに必要なことは、38%という食料自給率の危うさを国民にきちんと伝えることです。これを農協運動の中軸に据え、積極的に取り組むべきです。
北海道では、多くの人が第1次産業に関わっています。地元、常呂町では、漁協との協同組合連携で、農業が成り立っています。このような事例を中央会が示していくことが必要です。JAグループのためでなく、道民全体のJA・中央会であるべきだと考えています。内輪だけでなく、広く議論を起こし、新しい道を「アグリアクション」として提示し、実際にチャレンジしていきたいと考えています。
「AGIRIACTION」起こす
小野寺 新型コロナ禍ウイルスの戦いが長期化することが想定される中、ウイルスは国民や生活者の意識に大きな影響を及ぼしており、今後、食料・農業・農村をめぐる環境も変化することが予測されます。こうした中、北海道農業からアクションを起こして発信していこうということが「AGIRIACTION HOKKAIDO」(アグリアクション ホッカイドウ)です。
コマーシャルを打ち知事にも前面に出てもらい、道民の皆さんにも知ってもらうことでリアクションを起こしてもらい、沈滞ムードを変えていこうということですね。
――ただ危惧されるのは、農家の減少ですが。
小野寺 これからは規模の拡大とともに、「パラレルノーカー」(農業と他の仕事の並立)も必要だと考えています。今まで農業をするというと、新規就農というイメージがありましたが、農業には1日単位での携わり方、多様な働き方があることを知ってもらい、より多くの方が農業をすること通じ、将来的に農業を職業の選択肢として考えてもらうことも期待しています。
新型コロナウイルスで仕事のなくなった航空会社の職員が農家を手伝っています。「パラレルノーカー」から新規就農希望者が出てくるかもしれない。感染を避けて東京から北海道にきた人たちが、ネットで仕事を続けながら農業ができるのではないか。
以前は、酪農ヘルパーが就農するケースがありましたが、いまは農業を知らない若者が労働者としてやってきて、就農する人も生まれています。「アグリアクション」と「パラレルノーカー」この2つがキーワードです。
――最後に道民の皆さんや協同組合に関わる仲間の皆さんへのメッセージを聞かせてください。
小野寺 まず、新型コロナウイルスによる学校給食の停止や、飲食店等の営業自粛に伴い生乳の行き場を失う状況となりました。しかし、道民、全国の皆さんのご協力によって一滴も無駄にすることなく、乗り切ることができました。ありがとうございます。
次にやはり何といっても「地域社会づくり」ですね。地域コミュニティがなくなれば、人は暮らしていけません。若者も女性もやってこない。オーストラリアやアメリカのように、ぽつんと一つの農場があるのではなく、地域コミュニティがあっての北海道です。
どのようなコミュニティをつくるかが、私たちの課題です。その役割を力強く内外に発信し、私たちの運動が農業者やJA以外の皆さんにも積極的に受け止めていただけるようにならなければ、「自分だけ」と誤解されかねません。北海道の農業の発展は消費者の皆さんと共に、地域生活者の皆さんと共にあるのです。
――550万人の道民の皆さんの心をつかむJAグループの旗振り役として、これからのご活躍を大いに楽しみにいたします。
<インタビューを終えて>
「そだねージャパン」で名を馳せた女子カーリング・チーム「LS北見」の活躍が思い出される。小野寺さんは常呂町カーリングの「生みの親」の一人でもある。ソチ五輪の日本代表キャプテンを務めた歩さんは会長のお嬢さん。謙虚で懐が深く情に厚い骨太の人柄は、青年部時代から少しも変わらない。ますます好きになった。(大金)
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