JAの活動:持続可能な社会を目指して 希望は農協運動にある
【特集:希望は農協運動にある】協同の原点見据え地域支える先導役に JAの展望を語る(2) 中家徹 JA全中会長 村上光雄 JA三次元組合長2020年10月20日
准組対応で地方創生

准組の参画は多様
村上 政府・与党は、准組合員の扱いについて組合員に任せると明言しているのですから、JAは地域ごとに、組合員の参加・参画について大いに知恵を出すべきです。地域を守るために、JAが准組合員を含めて一丸となって取り組んでいる姿を示したい。
中家 その通りです。准組合員のJAへの関わり方は、さまざまです。支店運営委員会や総代会への参加など、全国のJAの取り組み事例を横展開したり、さまざまなメニューを提案したりして、それぞれのJAにふさわしいやり方を取り入れるようにしたいと思っています。
組織の危機の最大の要因は、組合員の意識変化です。組合員の「数」も大切ですが、組織力は「質」の問題でもあり、JAと組合員を結びつけている糸をいかに太くするかということが重要です。それが組織づくりであり、対話運動や広報誌の発行などを通じて、組合員との接点をいかに多くするかがポイントです。
村上 組織づくりは、JAが組合員に対してプッシュする一面と、組合員が自主的・意識的に参加・参画してJAをプルする一面とがある。この両面を生かし、ただ「参加してください」と言っているだけではだめなので、まずは自ら出向き、組合員の話に積極的に耳を傾けることが大事です。それが対話運動ですよね。
中家 JAを取りまく金融環境も厳しくなっています。これまでの経営モデルは通用しなくなってきている。経済事業改革で求められる購買・販売事業の収支改善などに取り組む際に、何より大事なことは組合員との対話です。
販売手数料などの値上げは、これまでのJAにとってはタブーでした。組合員の所得に直結するし、他の事業収益を回すことで賄えたからです。それが総合農協の「強み」ですが、値上げをするにしても、組合員と徹底して話し合い、自分たちのJAの状況を深く理解していただかなければなりません。対話の結果、最後に一致点を見出し、団結して実行すれば協同組合運動はさらに強くなります。
新規の事業開拓を
村上 組合員の高齢化や地域の人口減少で、JAは今まで通りの事業展開では持ちこたえられない。現場をよく見ると、組合員が本当に望んでいる仕事が実はたくさんあります。高齢化した農家の仕事を手伝うなど、新しい事業分野を開拓する積極性がほしいですね。
大金 持続可能な地域社会のためには、農業や地域の実態を精緻につかみとり、これに適切に対応することが求められる。JAだけでなく、異種協同組合や異業種との連携も重要ですよね。
中家 言われる通りです。JAだけで対応することは、無理なことが増えている。そのために一昨年、協同組合同士の連携を強化するためJCA(日本協同組合連携機構)を立ち上げました。現在、19の協同組合団体・組織が加盟し、多彩な活動をしています。また、JAと漁協・森林組合・商工会議所・商工会との5者連携協定も実現しました。
私の地元である和歌山県のJA紀南では買い物弱者のために、移動購買車6台が地域を巡回し、併せて高齢者の安否確認も行い喜ばれています。収支はトントンですが、こうした事業は株式会社では困難です。地域の生活を守るのがJAです。そのためには経営が健全でなければ、組合員や地域の負託に応えられない。
行政がやるべきことをJAが引き受けているケースも多々ありますが、それでもJAだけでは、やれることに限界がある。他業種や行政との協力が、これから一層重要になると思います。
村上 JA三次は第3セクターでワイナリーやCATV(ケーブルテレビ)などを運営し、農業振興計画を行政と一緒に策定しています。いまや三次では、農協がなければ地域は回らないと評価されています。
大金 農業は労働力不足も深刻で、農業界だけでは解決できなくなっていますね。
中家 新規就農や他業種から参入してもらったり、省力化のためのスマート農業を積極的に導入したりすることも必要ですね。
大金 人と人との新しいつながりを介して、農業界が人びとに働く機会を提供する。そんな力もJAにはありますが、経営がおぼつかないようでは話になりません。厳しい経営環境で、どのように経営基盤を強化していけばよいと考えていますか。
中家 経営基盤の強化については、中央会・農林中金・共済連・全農が密接に連携し、JAの経営改善を支援しています。急速に変化していく社会のなかで、これまで通り現状維持の姿勢では将来が見通せません。それをどうするかが大きな課題です。また、JA経済事業の収支改善に向けて支店・支所の統廃合が進んでいますが、これは「廃止」ではなく「機能再編」として考えるべきだと思っています。
広域的な施設の共同利用も必要ですね。さらには膨大なお金のかかる事業・事務システムの統一などもあります。全国で統一システムを共有し、トータルにコストを引き下げる。これについてはいま、JA全中が中心に取り組んでいるところです。
村上 この機会にぜひとも実現してほしいですね。IT化・オンライン化を真剣に考えるべきです。直接相手と会わなければ、仕事にならないという旧来の固定観念にとらわれがちですが、そうでない世代も数多く登場している。いずれにせよその基本には、協同組合ならではの「相互信頼」がなければならなりません。
それともう一つ、中家会長が指摘された支店機能の強化ですね。支店は地域の協同活動の拠点ですが、協同組合の教育機能も担っています。JA三次はすべての支店で支店だよりをつくっており、広島県で3年連続最優秀に選ばれました。いまのように出向いて直接会うことが難しいなかで、組合員とのつながりを続けるために貴重な活動になっています。さらに、子どもたちの食育の拠点としても、支店には重要な使命があります。
大金 最後に家族農業について。家族農業のスタイルはさまざまですが、国連も再評価しているように、家族農業は文明の流れを変えるような潜在力を持っていると私は考えています。新型コロナ対策などを含め、家族農業を再評価する視点が必要です。家族農業は、すべての物づくりの原点ですからね。
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