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JAの活動:全国集落営農サミット

【特集:JA全中 全国集落営農サミット】広域化の有効性を探る(下)2020年12月21日

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労働時間半減、契約栽培も 農事組合法人「たねっこ」(秋田県大仙市)近隣法人と連携した一層の経営発展
農事組合法人「たねっこ」(秋田県大仙市)


労働時間が半減

法人のある大仙市小種地区は約300haの水田を中心に5集落が点在し、約2haの中規模農家が自己完結型の個別経営を展開していた。平成14年の担い手育成基盤整備事業を契機に、これからの地域農業を考えるようになった。法人設立時には、「農地が自分のものでなくなるのか」、「今ある農機具はどうするのか」などの不安の声があった。農事組合法人たねっこ工藤修代表理事は「 アンケート調査を行い、メリット・デメリットを明確にして集落座談会などの会合を繰り返し、合意形成に努めた」と言う。
現在(令和2年)の法人の規模は、構成員128人で、経営する水田面積298haとなっている。法人の組織として5集落から選出された委員による運営委員会があり、ここで意見・要望・提案・苦情などを汲み上げている。意見は理事会で集約・検討し、幹事会において組織運営に反映させている。こうした仕組みで、構成員・集落の自主性を尊重し、モチベーションの向上・維持をはかっている。
主な経営品目は、水稲に加え、大豆や野菜も作付けしている。同法人は秋田県で唯一の原種生産法人となっており、農業試験場と連携して栽培実証試験を担っている。こうした取り組みが、競売技術や経営管理能力の向上につながっており、他の一般品目の生産にも波及している。
水稲は、JA秋田おばこ等を通じ、イオン(株)との数量契約販売に取り組んでいる。減農薬・減化学肥料栽培により、安全・安心と良食味の厳しい基準をクリアしたものを販売している。
このほか、地域の高齢者や女性を雇用し、野菜の栽培に取り組み、地域経済への活性化にも寄与している。野菜は、 JA秋田おばこを通じて首都圏の青果専門業者へ販売する。雪国のなかでロットを確保し、高価格販売を実現するため、隣接の法人との連携にも力を入れる。さらに県単事業で旧中学校校舎を改修した野菜加工センターで冷凍・カット加工する事業を開始し、周年雇用・周年販売にも取り組んでいる。
法人設立前はそれぞれの農家の経営面積が小さく、専業で農業をする若者は少なかった。法人化して経営面積が拡大したことで、将来の農業経営に希望が持てる後継者育成に取り組む。地域内で20~30代の若者を中心に11人を正社員として雇用するとともに、若者が興味を持つようにとスマート農業にも挑戦している。
工藤代表はこれからの経営戦略として、(1)遊休農地の解消と多品目導入による輪作体系の構築、(2)生産・加工・販売までの一貫経営、(3)担い手育成を踏まえた事業承継、(4)スマート農業の導入などに取り組み、周辺集落・組織も巻き込んだ広域的な活動を展開していきたいと展望を語った。


集落営農統合、雇用創出も 農事組合法人・城田西ファーム(佐賀県神埼市)10集落がカントリーを核に営農統合、雇用創出も
農事組合法人・城田西ファーム(佐賀県神埼市)


カントリーを核に

城田西地区は佐賀平野の平坦地にあり、水稲と大豆、麦作中心の典型的な土地利用型農業の地域。特に佐賀県オリジナルブランド米「天使の詩」は同地区だけで栽培されており、東京の米専門店と連携し、高い評価を得ている。
城田西ファームは、平成28年に地区のカントリーエレベターを利用する10の集落営農組織が統合して法人化した。法人設立の契機は、農業従事者の高齢化と後継者不足、それにリーダー不足にある。「半数の集落営農組織で現状維持が困難な状況が分かった」と、同ファーム樋口光輝代表理事は言う。そこで城田西カントリーを利用する集落営農組織の代表者で協議し、共同乾燥施設を核とした大規模法人の設立を目指すこととなった。
同ファームは従来の集落組織を作業班として残し、実際の農作業、労務管理は作業班で行っている。また、緊急の場合は作業班のエリアを超えて対応することもある。組合員からは、「複数集落で法人を立ち上げたことで情報交換ができ、共同作業などで進化が望めた」、「利用権設定による農地集約で、今後集落間を超えた耕作のめどがついた」など評価されているという。
一方、法人化設立後の課題として、組合員の高齢化で農地の維持管理が困難になりつつあること、共同作業・共同精算が進まず枝番方式のため会計担当など一部の構成員の負担増大していること、作業班ごとに取引先がバラバラで事務作業が煩雑であることなどが挙げられている。また、補助事業で導入した機械に更新期が来ており、修理費が増大している一方、各作業班の機械保有状況が異なるため一斉に農機導入が難しいことも課題。
こうした課題に対し、同ファームでは、JAのTAC担当者を中心に展開されている大口予約購買等を活用した更なるコスト低減や、法人全体での農機のシェア化、専任オペレーターの育成などに取り組んでいる。
最後に樋口代表は、「今後5年で法人の構成員の平均年齢は72歳になり、構成員数も100名を切る見込みのなか、今まで以上にスピード感を持って、法人のスケールメリットをいかした運営を行い、より良い法人運営をしていきたい」と、同ファームの理事会決意を紹介した。


県域で労働力支援
JAグループ山口

傾斜地の多い中山間地域が県土の7割を占め、平均年齢も全国平均より5歳上回るほど高齢化が進む山口県では、集落営農法人数は増加傾向を続けているものの、解散の事例も出てきている。法人の解散事由を分析すると、売上・交付金の減少や生産コストの増大といった経営面の課題と、作業従事者など労働力の確保や経営後継者の確保・育成といった人材面の課題がある。報告したJA山口中央会農政対策部の吉武悟志次長は「農事組合法人としての限界感」として、事業の制約やインボイスなど税制の影響、組合員資格の問題など、農事組合法人特有の課題も紹介した。傾斜地の多い中山間地域が県土の7割を占め、平均年齢も全国平均より5歳上回るほど高齢化が進む山口県では、集落営農法人数は増加傾向を続けているものの、解散の事例も出てきている。法人の解散事由を分析すると、売上・交付金の減少や生産コストの増大といった経営面の課題と、作業従事者など労働力の確保や経営後継者の確保・育成といった人材面の課題がある。報告したJA山口中央会農政対策部の吉武悟志次長は「農事組合法人としての限界感」として、事業の制約やインボイスなど税制の影響、組合員資格の問題など、農事組合法人特有の課題も紹介した。
生産コストの削減や収益力の向上など経営面での課題解決に向け、同県では、法人間連携、JAとの連携、他企業等との連携といった「連携策」を検討・実践してきており、現在、12法人の連合体が形成されている。また、JAが事務局を務める「山口県集落営農法人連携協議会」では、令和2年度の取り組みとして、円滑な経営継承を見据えた「わが法人の総点検」をメインテーマに、研究会や先進事例の情報共有に取り組んでいる。
人材面の課題に対しては、JA山口中央会で令和2年7月に農業専門求人サイト「アグポン」を開設したほか、令和2年4月に は関係団体で「やまぐち農業労働力確保推進協議会」を設立し、職業紹介事業のマッチングシステムの構築・運用、農業労働力に関するデータの収集、蓄積し活用などに取り組む計画である。報告では、県内3つの集落営農法人連合体の特徴的な取り組みや課題等が紹介された。萩市の萩アグリ(株)は、集落営農法人で若者雇用への経済力が不足していることを背景に、7法人で設立された。生産資材の一括購入や農機の共同利用によるコストの削減に取り組むとともに、連合体の新規事業として施設園芸にも取り組んでいる。課題として、既存の農事組合法人と萩アグリ(株)の経営の両立が挙げられた。
長門市の(株)長門西も、集落営農法人4法人とJAが新規就業者の確保・育成に向けて設立した法人。共同育苗の他、ドローンによる防除作業の受託事業などを実施しており、若手オペレーター13名、専従者1名を確保している。法人経営の存続が課題であり、収益の柱を作っていくことが求められている。長門地区には3つの連合法人が立ち上がっており、その存続や連携・再編なども課題として挙げられた。
柳井市の(株)アグリ南すおうは、構成法人17法人、エリア面積449haと、県内最大の連合体。各集落営農法人が持続できるよう様々なサポートをする会社として設立された。資材の共同購入や、機械の共同利用に取り組むとともに、直営事業として、無人ヘリ防除や芝吹付作業などを行い、8人のオペレーターを確保している。会社事務員、従事雇用従事者、経営候補者など「3役」の確保・育成が今後の課題として挙げられた。

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