JAの活動:JA全国女性大会 花ひらく暮らしと地域 時代を変える女たち
【特集:第66回JA全国女性大会】現地ルポ:輝くJA女性部 子ども食堂が地域のよりどころに JA高知県土長地区大篠支所女性部2021年1月21日
高知市東隣の南国市、その大篠地区のJA高知県女性部がめざましい活動で地域を元気にしている。2018(平成30)年5月に女性部が開設した「大篠子ども食堂」は、今や、子ども食堂の域を脱して、地域住民の「寄り合いの場」になっている。(取材・構成:村田武九州大学名誉教授)
大篠子ども食堂キッチン
広がる活動は宝箱
コロナ禍に対応し弁当テイクアウト
「子ども食堂」が同JA土長地区大篠支所の2階にオープンしたのはJA支所長の英断であるが、15年ほども前の、支所建物改修の際に、女性部の要望に応えて2階の広間の舞台をキッチンに変えていたことが幸いした。毎月第2土曜日の午前11時30分から午後2時30分に開かれ、毎回、バイキング方式で20種類ものメニューを用意している。
ちなみに第20回(2019年11月16日)のメニューは、ご飯(おにぎり・五目ずし)、みそ汁、シチュー、鶏肉の竜田あげ、ピーマンの肉づめ、あつやき卵、かきあげ、トウガンの煮もの、ダイコンとこんにゃくの煮もの、チャーテの炒めもの、ハクサイとホウレンソウの和えもの、ホウレンソウのマヨ白和え、ダイコンの二色酢の物、ダイコンの三色酢の物、パパイヤのシーザーサラダ、野菜サラダ、それにデザートとしてプリン、イチゴの牛乳かん、ミカンであった。
小中学生以下の子どもは無料、中高生100円、大人300円である。午前11時ごろには、支所の前は行列ができている。調理には毎回20人の女性部員が参加している。2018、19年度に合計23回開かれた子ども食堂に、延べ人数で子どもが2232人、中高生100人、大人が1398人も来た。
子どもたちは一人で来る子も、グループで来る子もいる。しかし大人の数の多いことには驚かされる。毎回少ない時でも全体で122人、多い時には215人が、支所2階の広間で、一緒ににぎやかに食事するさまは、まさに地域住民にとっての「寄り合いの場」である。
大篠支所管内の住民だけでなく、バイキング料理のおいしさにひかれて、南国市外、高知市の西部からも家族づれが来る。
2020年6月13日からは、コロナ禍に対応する「お弁当のテイクアウト」とし、高校生以下は無料、大人は100円で、毎回250食を配布している。250食の弁当詰めが大変だという。
テイクアウト弁当
昨年は10月10日までの5回の弁当配布で、小学生以下479人、中高生75人、大人696人に配布した。記録をしっかり取っているのがすごい。
この「大篠子ども食堂」のメニューづくりの責任を引き受けているのが、管理栄養士の高田昌子さん(70)である。高知市生まれで、結婚して大篠に来たとたんに婦人会に「強制加入」させられ、水田90アールの兼業農家だったので女性部にそのまま残った。保育園2園の管理栄養士を20年間やった経験がある。
高田昌子さん
「子ども食堂」の食材はほとんどが、女性部員や南国市内外の一般生産農家、養鶏場、さらにJA出資生産法人「南国スタイル」、肉屋さん、企業・スーパーマーケットなどからの無償提供によるものである。キッチンには冷凍庫がないので、魚はメニューに入れていない。メニューには、「家の光料理教室」などを参考にするが、食材は徹底して国産である。高田さんは、「国産にこだわる管理栄養士のおばちゃん」と高い信頼を得ている。
家の光記事活用 二四六九女士会
私が大篠支所女性部に注目したのは、2020年2月に福岡市で開かれた「第62回全国家の光大会」の「記事活用の部の体験発表」で、「家の光協会会長特別賞」となった大篠支所女性部長・窪田理佳(りか)さん(55)の「地域につなごう! 女性部は宝箱」という発表に感動したことによる。
窪田理佳さん
その窪田さんにお願いして、高田さんをはじめ女性部活動のリーダー的存在の5人に集まってもらった。その5人のうち3人は非農家女性である。というのも、大篠支所女性部は、かつては大篠地区の婦人会と一体であり、婦人会解散にともなって独立したJA女性部には、非農家の婦人会会員も多くが残ってくれたことによるという。
7年前に女性部の家の光記事活用グループ「お・楽・し・み 二四六九女士会(にしむくじょしかい)」(「小の月」に当たる月に集まろうという意味だという)を立ち上げ、その命名者となったのが前部長の垣内(かきうち)伸(のぶ)さん(79)である。週1回の踊りで身体を鍛えているという垣内さんは、20年も前に、女性部の旅行に参加したら、女性部に入会させられたという、本人にいわせれば「イベント会員」であったが、女性部部長を引き受けて立ち上げたのがこの活動グループで、略称「女士会」(士は11月の意味)には毎回30人は集まり、手作りランチに始まって、『家の光』読書会、手芸など、グループ活動が熟年女性の元気の源である。
垣内伸さん
助け合いが生きがいに
民生委員活動と一体の女性部活動
40年も前に結婚した時に地域の婦人会に入って以来の女性部員が川久保智恵さん(70)である、この20年余り大篠民生委員として活動してきた。生活困窮者の支援にはじまって、地域の福祉増進のために常に重要な役割を果たしてきた民生委員であるが、川久保さんにすれば「みんなに公平にという民生委員の精神が女性部活動とつながる」というのである。大篠女性部には5人もの民生委員が参加している。
大篠女性部が子ども食堂を立ち上げたのは、民生委員が児童委員を兼ねており、地域の子どもたちの様子に目が届いていたことが大きいのであろう。「女性部のメンバーこそ地域のことをよく知っており、民生委員活動は女性部とJA支所の職員に助けられています。女性部活動は私の生きがいです」とは、川久保さんの実感である。
川久保智恵さん
昨年4月に女性部員になったばかりの光野(みつの)恵美さん(63)も民生委員である。光野さんにとっても社会福祉協議会の民生委員としてのボランティア活動と女性部活動は一緒である。社協の独居老人のための弁当作りや、社協が主催する大篠の敬老会の花の飾りつけなどには、女性部のメンバーがたくさん関わっている。そのなかには踊りなどの出演で会を盛り上げてくれるメンバーもいるという。
光野恵美さん
野菜専業農家が女性女性部活動の要に
大篠女性部を引っ張る窪田理佳部長は、水稲・野菜生産農家である。水稲150アール、ハウス17アール、露地ダイコン、七草、さらに10アールのオクラ栽培で直売所に出荷しているから忙しい。そのなかでの女性部長であるから、若いからこそやれるというものであろう。
大篠支所女性部が地域婦人会から独立したJA女性部であるだけに、非農家のJA准組合員が会員の中核を占め、「JAにこだわらない女性部活動」ができていることは喜ばしい。そのうえで、窪田部長の頭にあるのは、「農協共販出荷をしている専業野菜農家の女性にいかに女性部活動に興味をもってもらうか。彼女たちと一緒に参加できる女性部活動の開発が必要です。JAの指導部にも知恵を貸してほしい」である。
【取材を終えて】
「大篠子ども食堂」については、本紙2019年1月25日号がすでに報道している。再度この大篠支所女性部を訪ねることになった経緯については本文のとおりである。今回の狙いは、女性部活動に参加する女性たちの思いを直接聞きたいということであった。女性部活動で地域を元気にし、自分も元気になるんだという思いを聞くことができた。なお、昨年末12月16日に行ったインタビューに際しては、JA高知県土長地区大篠支所の公文あや子支所長(49)にも同席いただいた。(九州大学名誉教授・村田 武)
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