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JAの活動:JA全国女性大会 花ひらく暮らしと地域 時代を変える女たち

【特集:第66回JA全国女性大会】座談会:園芸大国支える女性営農指導員 JAとぴあ浜松(静岡県)(1)2021年1月25日

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専門職として男性の仕事と考えられがちなJAの営農指導員。この分野に女性を積極的に登用するJAが登場してきている。その背景は何か。営農指導業務はJAにとって地域振興、協同組合の組織基盤につながる業務である。今、そこに女性の感性と視点が欠かせなくなった。そこに早くから気づいた静岡県のJAとぴあ浜松は積極的に女性の営農指導員(営農アドバイザー)を配置し、全国でも有数の園芸・花き産地を維持している。営農アドバイザーを統括する同JA営農指導課の専門指導員・水井理香子さんと、営農センターの現場で活躍する鈴木敦美さん、新木香織さんの3人に、営農アドバイザーの役目と仕事について聞いた。司会・進行は加藤一郎千葉大学客員教授。(構成:日野原信雄)

繊細な感性を営農にきめ細やかな指導へ

【出席者】
静岡県JAとぴあ浜松
水井 理香子さん(専門指導員)
鈴木 敦美さん(営農アドバイザー)
新木 香織さん(営農アドバイザー)
司会・進行 加藤 一郎千葉大学客員教授

農家の相談に乗る営農アドバイザー農家の相談に乗る営農アドバイザー


現場は自然体 JAも積極的

加藤 千葉大学園芸学部で客員教授をしていますが、園芸学部の女子学生は過半数を超え、今や卒業時の成績優秀者表彰(10人)の全員が女性です。JAの営農指導員になりたいという女子学生の就職相談を受けました。しかし残念ながら、JAの営農指導員になれる人は、きわめて少ないのが実態です。JAとぴあ浜松は、女性の営農指導員を積極的に採用し、実績を上げています。どのような背景と意図があったのでしょうか。また、営農指導を女性が担うことで、組合員や職員の反応はどうでしたか、JAにとってどのようなメリットがありますか。

水井  理香子さん水井 理香子さん

女性を一気に増員

水井 現在、JAとぴあ浜松には49人の営農アドバイザーがいます。うち女性が14人で、「技術指導」と「営農相談」の二つに分かれており、技術指導は28人のうち女性が6人、営農相談は21人のうち8人が女性です。

JAの基盤強化ということで2001年度から採用を始め、その後、3、4年は女性を中心に採用しています。営農アドバイザーは、「女性の持つ消費者の視点を取り込もう」「女性の繊細な感性で、きめ細かい営農指導を」という狙いで取り入れたものです。それも一人や二人では孤立したり、定着しなかったりする恐れがあるため、初年度、一気に8人を採用しました。全員が4年生大学の農業や食品・栄養関係の学部の卒業生でした。

その時の農家の反応は「女の子で大丈夫か」という半面、「細かいことに気が付き、明るくなっていいね」と、反応はさまざまだったようです。しかし、今では、女性だからといってどうこう言われることもなく、自然に受け止められています。

当時、生産現場や農家組合員宅への「出向く営農指導」という方針が、JA全国大会で示され、またマーケットインの考えで、市場で売れるもの、つまり消費者の求める農産物を生産する必要性が唱えられていました。

営農アドバイザーは、「技術指導」が品目ごとに分かれ、農家の生産指導、経営指導、組織運営、生産振興などを担当します。一方、「営農相談」はエリアごとに分かれ、農家のニーズの把握、購買提案・フォローなどを行っています。

JAとぴあ浜松には、野菜6カ所と果樹、花きがそれぞれ1カ所、合わせて8つの営農センターがあり、営農アドバイザーはそれぞれのセンターに配属されています。

加藤 最初から営農指導員として採用するのですか。

水井 入組前の新入職員全体の研修中に、希望する部署を書いて提出しますが、その通りになるかは、入組式の直前まで分かりません。

安全・安心追求 生産者と共に

食を通じて地域貢献

加藤 JAとぴあ浜松のように、入組の時点で営農指導員としての行先が決まっているのは珍しいと思います。営農指導に対するJAの積極的な姿勢がうかがえます。3人とも地元浜松市の出身と聞いていますが、いま、どのような仕事をしていますか。

鈴木  敦美さん鈴木 敦美さん

鈴木 農協に勤めて12年目になります。土壌農薬分析センターで6年間土壌・農薬分析を学び、その後、北営農センターに配属されて6年になります。センター管内の農家のチンゲンサイやブロッコリー、リーフレタスなどの洋菜類の技術指導を担当しています。

大学では食品栄養学を学びました。栄養士の資格を持っており、食品関係の会社に就職することも考えましたが、大学で学んだ「食」について関心があったので、安全で安心な農産物の生産に力を入れているJAのことを知り、就職先に選びました。もともと営農指導員をやってみたいという気持ちも持っていました。

新木 鈴木さんと同期で、入組12年目の技術指導担当です。西営農センターの営農アドバイザーを経て、現在、浜北営農緑花木センターの営農アドバイザーとして、管内のメロン、セルリー、サニーレタスなどの洋菜を担当しています。生物系の大学を卒業し、植物に関心があったことと、何か地域貢献できる仕事がしたいと考えていましたので、JAを選びました。

新木  香織さん新木 香織さん

水井 入組17年目です。浜北営農緑花木センターの技術指導営農アドバイザーを経て一昨年、営農指導課に配属されました。大学は教育学部でしたが、当時は就職氷河期で、公務員とか教員とかも考えましたが、一つの業種でなく、いろいろ挑戦して、自分に合った仕事を探そうと思っていました。さまざまな事業を行っているJAなら、それができそうだと考えJAを選びました。営農指導の仕事につけて、今では本当によかったと思っています。

地元にあった品種を

加藤 みなさんの仕事と活躍の様子がよく分かりました。大学で学生のベンチャー論を担当していますが、女子学生は卒業後の就職先に男子学生よりも明確な目標をもっているように感じます。しかし目標と現実の乖離には悩み、また保護者との意見調整も男子学生のように割り切れない状況もあるようです。しかし女子留学生も含め、その向学心とパワーには圧倒され、これからが女性の時代がくるなという思いを抱かせます。

加藤一郎さん加藤一郎さん

ところで、JAとぴあ浜松は、野菜の品目が多く、みなさんは野菜の営農指導を担当されているのでお聞きしますが、野菜の種苗は、昔から農家と地元の種苗店のつながりが強い傾向もありますが、料理の素材にしても、どのような品種を選ぶかは女性の感性が求められます。これは農家の信頼を高めるためにも重要なことですが、どのようにしていますか。

水井 この地区も地元の種苗店の力は強いものがありますが、例えば私の担当するキャベツで、種苗店が勧める品種だからというのではなく、土質が合うか、肥培管理はどうか、また経営規模として適切か、現場をよく見て情報を集め、判断しなければなりません。

JAの奨励リストに載せた品種でも病気が出たり、その土質に合わなかったりすることもあります、こんなときには、すぐに原因を突き止め対応しなければ、農家の信頼を失います。現場をよく見て、必要な場合は種苗会社にも対等にものが言えるように、力をつけなければならないと思っています。

新木 ブロッコリーを担当していますが、種子に関する農家の要望の一つに生育期間の安定があります。近年の温暖化で生育日数がずれるケースがあり、きちんと予定の日数通り収穫できないと、収穫リレーが成り立たなくなります。それに加えて作業性の問題があります。生産者の高齢化が進んでいる今日、これは重要なことです。もちろんおいしさも品種選択の際の重要な条件です。

鈴木 生産性や生育期間など、品目によって、農家の求めるものは違います。そのため、種子の開発の歴史や特性を一番よく知っている種苗会社ともっと協力してやっていきたいという思いがあります。

地域と連携しブランド確立

加藤 力のあるJAは営農指導を充実させ、種苗会社に直接情報を伝えるためのバイパスをつくる必要があるのではないでしょうか。ところで、みなさんの営農指導の仕事にとっての現場である生産部会は、野菜別にあるのですか、地域別にあるのですか。産地ブランドづくりの取り組みなどはどこで決めるのですか。

新木 生産部会の支部で、品目ごとに部会をつくっています。ブランドを決めるのは生産部会が中心で、新しい品目や品種、栽培方法はまず部会の役員が試験栽培します。洋菜は「浜松洋菜」としてJAブランドがありますが、品種というよりは、色・形状・日持ちなどの規格で決めています。さらに作業性の問題もあり、その意味で地元の条件にあった品種の開発が求められています。

継続的な研修機会を

加藤 営農指導に必要な技術や知識は、継続的な研修が必要です。みなさんの研修はどのようになっていますか。千葉大では、福島県のJA東西しらかわの営農指導員の研修を受け入れ好評でした。研究室の学生にも刺激になりました。JAとぴあ浜松の管内には、水耕栽培で日本のトップレベルの法人もあります。積極的に交流したらどうでしょうか。

鈴木 先進的な法人には技術的に教えられることが多くあります。営農アドバイザーとして求められるのは補助金の種類や申請の仕方など、経営全体についてのアドバイスです。これは勉強して手助けをしています。一般の農家は栽培方法、資材の種類や価格など新しい情報を求めており、細かい栽培面をアドバイスできるように努めています。

新木 新型コロナウイルスでは各種補助金の相談が集中しました。幅広い知識が必要とされることや、それぞれの状況も異なるので、本当に大変でしたが、農家に頼られると、それに応えたいという気持ちになります。

鈴木 経営が多様化するとともに、規模の差が拡大し、個々の農家から求められることが違ってきているので、勉強することが多くなります。個々の努力だけでは限界もあるので、職員個々の能力に合わせて継続的な研修の場をつくってほしいですね。専門的知識を持つ大学や研究機関との交流も、ぜひさせていただきたいです。

繊細な感性を営農にきめ細やかな指導へ JAとぴあ浜松(静岡県)(2)に続く

 

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