JAの活動:JA全国女性大会 花ひらく暮らしと地域 時代を変える女たち
【特集:第66回JA全国女性大会】座談会:園芸大国支える女性営農指導員 JAとぴあ浜松(静岡県)(2)2021年1月25日
地域農業と向き合う営農アドバイザーのみなさん
視野広く持ち将来像を共有
加藤 JA管内の7割は第2種兼業農家ですね。来年の生産はどうするか、農産物の価格が低迷したときどうするかなどはJAの営農指導の基本です。一方で、先進的農家や農業法人は、しばしば、すべてを自己完結しようとする傾向があります。これに対しては、JAの営農指導機能が問われます。農業法人も小さな家族経営も、地域にとって大切な資源です。地域を守るため、みんなが心をひとつにする必要があります。今は、それができるかどうかの岐路です。そこにJAの役割があり、男性にない感性を持つ女性が必要です。
また、指導員の研修には不断の努力が求められます。営農指導員やJA職員の研修体制をどうするか。県行政機関を含めて、大学も研修の受け入れをオープンにしています。JAの経営層は今後の課題として考えて頂きたいと思います。
ところで女性の「気づき」についてですが、千葉大学では人工光型植物工場の研究を進めていますが、チップバーンという生理障害があります。密閉下の水耕栽培ではレタスなどの生育上の小さな異変を見逃すと全滅のリスクがあります。その異変を見つける能力は女性が高いといわれます。営農指導の現場でそうした「気づき」の経験はありませんか。
水井 特に意識はしていませんが、営農指導経験の中で、「よくそんなところに気が付いたな」と言われることはあります。男性の方が同じ男性である農家の懐に入りやすいのではないかと感じる半面、女性はどうしても一歩引いたところから見るので、良く言えば広い視野で男性の気づかない気づきがあるのではないかと思います。また、農家の経営や出荷物で改善点がある場合、「ダメ」と言い放っておしまいではなく、女性は改善するまで寄り添い、農家とのつながりを深めていくことができるように思います。
水井 理香子さん
加藤 営農指導は地域の農業を守り、農家の農業所得を高めることが任務です。農家の高齢化が進むなかで農地を維持しなくてはなりません。私は千葉県の松戸市で農業委員を務めていますが、営農指導で管内を回るとき、農地に関して気づくことはありませんか。
鈴木 農地がいつのまにか工場用地に変わっていることも少なくありません。将来的には、工場用地と宅地、農地をどうやってすみ分けるか、JAを中心に、市民を含め、地域の将来像を共有して、市に働きかける必要があると感じています。
鈴木 敦美さん
新木 農地の転用については、情報の共有ができていないという印象です。農家とJA間の情報の共有はもちろん、農業委員会との連携が必要だと感じています。
#働く環境大切人材の育成も
後継者育成の体制を
加藤 女性の営農指導を、今後とも持続させるには、みなさんの後継者が必要です。どのように育成するのですか。またその体制はできていますか。
加藤一郎さん
水井 やはり結婚や出産のため、途中でやめる人もいます。子育てしながら男性と同じ部署で働くのは、女性にとって厳しい面もあります。昼間は農作業で、生産部会などの会議はほとんど夜になりますが、小さな子どものいる家庭には負担です。20kgもの肥料袋を担ぐのも大変です。もう少し働きやすい環境にする必要があると思います。
鈴木 営農アドバイザーをどう育て、業務を引き継ぐかは大きな課題です。新人職員は半年間、トレーナーと職場リーダーという教育係がつき、指導する制度がありますが、センター間を跳び越え、女性の営農職員同士の交流はもっとやりたいですね。
水井 15年間、営農アドバイザーをやりましたが、この仕事を言葉や文字で引き継ぐのは難しいところがあります。やはり一緒に行動して、見て、感じて覚えてもらうのが一番です。
新木 先輩から引き継いだとき、すでに分からないことばかりでした。事業報告書などで、生産部会の運営などは時系列的に分かりますが、農家対応をどのようにしていくかは引き継いだ者の課題だと思います。
新木 香織さん
水井 引き継ぎの大変さは、女性に限った問題ではなく、JAとぴあ浜松では、女性だから大変だということはありません。男性しか採用されない、他のJAでも、もっと女性を採用されてもいいのではないかと思います。
加藤 研修の体制づくり、他のJAとの交流、研修など、いかに制度化するかですね。JAの上層部へのメッセージとしてまとめさせていただきます。本日はありがとうございました。
農家の相談に乗る営農アドバイザー
【座談会を終えて】
女性の営農指導員 地域に新たな息吹
学生の保護者との面談で「息子は東京の企業に就職し、恐らく職場などで知り合った女性と結婚して地元には戻ってこないだろう。しかし娘には地元に戻ってきてほしい。地域の活性化には若い女性が重要な役割を果たすと思う」との話があった。「営農指導員になりたい」という女子学生に相談を受けたが、JAに就職すると信用共済事業に配属されるケースが多い。私はいくつかのJAに相談し、営農指導のポジションに新人から配属してもよいとの合意が得られて、女子学生が内定を受けることができた。
卒業までに当該JAの生産推奨品目について研究室の先生などから生産指導を受けており、今後の産学連携の楽しみな事例となっている。今回の座談会を通じて女性が営農指導員になることで、地域に新たな新風が吹きはじめていることを実感した。(加藤一郎)
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