JAの活動:第67回JA全国青年大会特集号 持続可能な社会をめざして 切り拓け! 青年の力で
【エール:切り拓け! 青年の力で】歴史に学び、青年の手で新しい時代を切り拓け! 村上光雄 (一社)農協協会会長2021年2月8日
JA全中の元副会長を努めた村上農協協会会長が全国青年大会に参加したのは、今から42年前の第25回大会だという。この間に日本の農業・農村は大きく様変わりし、当時とは「異次元」の風景となってしまっている。しかし変わらないものがある。それは、どんな逆境下にあっても、どんなに少数になっても、農業に夢を抱き、農村地域で力強く生きていく青年がいることだと村上会長はいう。そして、そうした「農業青年の手で新しい時代を創り切り拓いていってほしい」とエールを贈ります。「春はもうそこまで来ている」と。
一般社団法人農協協会代表理事会長
第67回JA全国青年大会、誠におめでとうございます。コロナ禍での大会史上初めてのリモートでの開催に踏み切られたことに敬意を表し、拍手を送ります。
私の青年大会についての思い出は1979年第25回大会であります。地元の盟友と大会の雰囲気を共有すべく、バスを貸し切り、18名ぐらいだったと思いますが九段会館へ乗り込みました。その後、前年に広島に来ていただき我家で雑魚寝してもらった川越市福原農協青年部を訪ねて交流したことが懐かしく思い出されます。
あれから、まさに42年、当然、世の中は大きく様変わりしてきました。我々の時代から始まった牛肉、オレンジの輸入自由化は質的にも量的にも拡大を続け、ついにTPP・EPAなどにより丸裸にされようとしています。そして食料自給率は54%から38%へと大きく下落しました。また私たち中山間地域では家並みはあるけれども空き家だらけで、耕作放棄地は拡大する一方であります。その光景は私たちが40年前に思い描いた明るく心豊かな農村風景とはかけ離れた、それこそ異次元の展開であり寂しい限りであります。
そうした中で変わらないこともあります。その一つは大企業中心の安上がり農政であり、農業が儲からないから後継者が育たないという状況であります。そして二つめはどんな逆境下にあろうとも、またどんなに少数になろうとも、農業に夢を抱き、農村地域で力強く生きていく青年がいるということであります。まさにその証が67回も続いているJA全国青年大会の所以であり重みであります。
さて拡大を続けているコロナ感染症でありますが、盟友の皆さんも生活面また経営面において何らかの影響を受けられ、ご苦労をされていることと思います。私も農村生活に三密なんか関係ないと気楽にかまえていましたが、最近ではじわじわと身近に迫ってきた切迫感で身構えるようになりました。そして、地域特産の酒米作付面積も今年は40%削減と経営的にも影響が出てきて、他人事ではなくなってきました。
それにしても、政府のコロナ対策の杜撰さには腹が立つのを通り越してあきれるばかりであります。安倍首相も菅首相も100年前のスペイン風邪のことをご存じなかったのであろうか。ご存じなかったとしても世界の感染状況をみて、ワクチンも出来ていない段階で少し収束したからと言って税金を使って、ゆけゆけドンドンGOTOトラベルはありえない。世界中を見渡しても物笑いになるようなこんな愚策はない。
人類の歴史はその始まりから疫病(感染症)との戦いの歴史である。地域限定の風土病的なものが往来の地域拡大と交通手段の発達とグローバル化により、あっという間に世界中に拡散するようになったものである。関税も何もかも障害物を取り払い、人も物も自由に出入りすればよいとする新自由主義の発想はまさに感染症にとっては最高の環境条件であったと言ってよい。
我々はTPP反対運動を展開する中で今回のコロナ感染症を想定したわけではないが、関税を含めすべての分野での国境措置が必要であることを訴えてきた。そのことは歴史的に見ても、自国ファースト的風潮が高まりつつある国際情勢から見ても当然のことであった。そして歴史的に見ても、今回のコロナ感染症はワクチン接種をしたから、少し収束したからといって安心せず、次の波があるかもしれないということを念頭に置いて対応策を講じ、気長に付き合っていかざるを得ないと思う。
そう言えば、安倍首相が就任間もないころ、「日本を取り戻す」ということをさかんに言っておられたことを思い出した。その時私は、この人は歴史的認識の無い人だなと思った。歴史とは絶対に後戻りはできないし、ましてや取り戻すこともできない。昔はよかったというのは、あくまでも懐古であって、もしそのような時代を実現したいのであれば、取り戻すのではなく、我々の手により新しく創りださねばならないものなのである。
農産物オール関税自由化の時代を迎え、コロナ禍の中、経営的にも青年部活動においても大変なことと思います。しかし嘆いていても仕方がない。この機会に是非歴史を学んでほしい。長い歴史の中、先輩たちはその時その時の難題に真正面から挑み、跳ね返されても知恵を出し合い団結して乗り越えてきた。その知恵と行動は、今の時代に直接適用できるものではないが、生き抜いていく方向と勇気を与えてくれる。歴史はその実体験の宝庫である。私たちは歴史に学び、先輩に学び、そして自然に学び謙虚に生きるべきである。どうか農業青年の手で新しい時代を創り切り拓いていってほしい。大いに期待するとともに最大のエールを贈ります。
物事は始めがあれば必ず終わりがある。そして冬来たりなば必ず春が来る。春はもうそこまで来ている。お互いに頑張ろう!
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