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JAの活動:築こう人に優しい協同社会

【乗り越えようコロナ禍 築こう人に優しい協同社会】対談:厚生連病院の思い 人を助け命を守る 地域と共に(2)2021年7月23日

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【乗り越えようコロナ禍 築こう人に優しい協同社会】対談:厚生連病院の思い 人を助け命を守る 地域と共に(2)

井關治和JA神奈川県厚生連相模原協同病院病院長
中村純誠JA全厚連理事長
司会・進行:根岸久子JCA客員研究員

協同理念の原点継承

根岸 自分たちで病院を作るという厚生連のルーツが体現されていると感じました。

中村 コロナ禍のなかで相模原協同病院は今年1月に移転し、JR横浜線橋本駅近くには旧病院が残ったわけですが、今、そこを新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ病床として再び稼働させているとのことです。

新型コロナウイルス感染症への対応病床の不足は日本全国で問題になっていますが、旧病院を活用し、対応病床を40床確保したということです。しかし、当初、国や県に旧病院の活用を相談した際には行政側で医療スタッフを用意することは難しいということでした。それに対して相模原協同病院のスタッフが手を挙げた。新病院に移転直後の慌ただしいなかで、さらに旧病院で再び医療をしているということです。

相模原協同病院の医療スタッフの方々のプロ意識に敬意を表するとともに、この取り組みを通じてプロ意識は当たり前だとして、人を助ける運動、協同組合運動の理念が実践されたと感じています。

厚生連のルーツは102年前。島根県の青原という無医村で当時の産業組合が農家の健康問題に端を発して診療所を始めたことです。それから100年あまり、農家と地域の医療のために運動を展開してこられた諸先輩がいて今の厚生事業があるわけです。

井關先生のお話にあったように脈々とその理念がつながっており、素晴しいかたちとして実現されています。

根岸 こうした医療機関の経営をJA全厚連としてどう支えるべきでしょうか。

中村 厚生連病院だけではなく病院の経営、とくに地方に存在する病院には三つの経営課題があると思っています。一つは医師不足。二つめは今の診療報酬体系です。たとえ不採算でも利用者のためにやらなければならないことが病院にはあります。診療報酬体系も地方の総合病院に合うような体系に変えてもらう必要があると考えています。

三つ目は消費税です。病院を建てれば相当な額の消費税を支払うこととなります。消費税について、事業者は、原則、受け取った消費税と仕入れ等で支払った消費税の差額を納付しています。消費税は課税売上に対応する分しか支払った消費税として控除することができないため、収入の大部分が非課税である病院では消費税の還付を受けることができず、損税が発生しています。厚生労働省は診療報酬に上乗せして補填しているとの見解ですが、本会の試算では損税が出ています。

この三つの課題について、改善を図っていただくように国に要請することが日常的には大きなテーマとなっています。

今回の新型コロナウイルス感染症対応ではわれわれJA厚生連だけではなく同じ公的医療機関である日本赤十字社と恩賜財団済生会とともに要請活動を展開しました。JA全厚連は井關院長をはじめ医師や看護師等の医療従事者が医療に専念できるように様々な課題に取り組んでいます。

岸 今度のコロナ禍のなかで厚生連病院が非常に大きな役割を果たしているということが認識されたと思います。一般の病院との違いや、厚生連病院の今日的な役割についてどう考えますか。

健康管理 軸足に

中村 JAグループの一員として地域の農家の人を中心として地域に住んでいる人々に誠心誠意、親身になった医療が提供できる体制をどう作りどう実践するかに尽きると思います。

そこに健康増進という原点を加えることだと思います。健康増進は厚生連病院のルーツですから、やはり未病というところに軸足のある医療事業がJAグループの特徴で、そこをきちんと維持していきたいと思います。

井關 厚生連病院はJAの病院ですからJAとどう連携をとるかということをずっと考えていました。今、JAの病院として考えているのは、人間の命を守るもののいちばん大事な表の部分はやはり食料だということです。食べ物がなければみんな死んでしまいます。ですから農業はいちばん大事です。そして同じく命を守るために医療がありますが、私のイメージでは表が農業でその裏に医療があるというものです。医療とは表舞台に出るものではなくて裏方でみなさんが活躍できることを支える場所だと思っています。

JA・厚生連はその両者を持っているわけですから、農業と医療を融合することによって地域の人々の健康を一緒に守るということができるのではないか。今具体策があるわけでありませんが、この観点から設立母体の違う他の病院群とは違う特徴をつくることができるのではないかと思っています。

日赤グループには日赤ファンという人たちがいて、ボランティア活動が活発です。これが厚生連には足りないような気がします。実はJAの組合員というのは多くの働き手、ボランティアになり得る。逆に病院というのは限られたマンパワーで動いているのですが、福祉の部分は准組合員を中心としたボランティアの人たちを中心に、病院からも担当者が参加してその両者で、その地域の市民の福祉のために一緒にやるということを考えていくこともできるのではないでしょうか。これはJAの病院である厚生連病院でなければできないことです。

中村 井關院長が指摘されたように農業と医療は同源だと思いますし、JAと厚生連病院が協力し合ってやっていける取り組みができるような働きかけが必要になると感じました。JAと厚生連が連携していくことが、地域の活性化やJAグループ全体の発展にもつながると確信しています。

根岸 ありがとうございました。

JCA客員研究員 根岸久子氏JCA客員研究員
根岸久子氏

【対談を終えて】
陣頭指揮に当たった井關院長と、課題解決に奔走された中村理事長からは、そこに貫く設立時の理念がひしひしと伝わってきた。そして全国組織をもつJAの強みを改めて痛感させられた。井關院長は日々実践されていることを語っているが、それが危機的状況なかでスタッフの一体感に繋がったと言えよう。「農業と医療の融合で地域の人々を一緒に守れる」とはJAとの協同へのメッセージ。JAはしっかりと受け止めてほしい。 (根岸)

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