JAの活動:【第29回JA全国大会特集】コロナ禍を乗り越えて築こう人にやさしい協同社会
【第29回JA全国大会記念座談会】協同と共生を力に JA全中中家会長 日本労協連古村理事長(上)2021年11月1日
第29回JA全国大会は「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」をテーマに掲げた。農業振興はもちろんのこと、多様な人々が暮らす地域を持続可能な形で元気にしていくことが、この国の未来のかたちをつくる。その実現に向け「協同」の力をいかに発揮するか。中家徹・JA全中代表理事会長、古村伸宏・日本労働者協同組合連合会理事長、村上光雄・農協協会会長に大会を控えて話し合ってもらった。司会は文芸アナリスト・大金義昭氏。
多様性と主体性がカギ
協同組合先頭に新たな社会構築
【出席者】
JA全中会長 中家徹氏
日本労協連理事長 古村伸宏氏
農協協会会長 村上光雄氏
司会・文芸アナリスト 大金義昭氏
左から大金義昭氏、古村伸宏氏、中家徹氏、村上光雄氏
大金 コロナ禍が世界的に拡大し、グローバル化した経済・社会が未曾有の混乱に陥り、国の内外で「格差」や「分断」が深刻化しています。しかし、「農と食」や「いのちと暮らし」を守る協同組合にとってはこのピンチを大きなチャンスにできないかと思っています。
今日は「協同の原理」を共有し、異種協同組合同士による連携への抱負などもお話しいただければと思います。まずは、新進気鋭の協同組合である労働者協同組合(ワーカーズコープ)を代表して古村理事長からお願いします。
古村 昨年暮れに「労働者協同組合法」が全党全会派一致で成立しました。施行は来年10月1日。日本では42年ぶりの協同組合法です。
ワーカーズコープの実践は約40年になります。もともと社会的に弱い立場の人たち、具体的には失業者の仕事づくり、職場づくりから始まりました。その後、なかなか就労にたどりつけないニートと呼ばれる人、引きこもりと呼ばれる人、あるいは障害があるなど働くことに距離がある人たちも、どう社会の一員として働けるようにしていくのか、これを大きな目標として取り組んできました。
その思いは法律の第一条に凝縮されており、基本目標は「持続可能で活力ある地域社会の実現」と書かれています。まさに今、全世界的なテーマである、持続可能性を目的として真正面に掲げた協同組合法であり、非常に先進的だと考えています。
もうひとつは、このコロナの問題は決して閉ざされた人間社会のなかで起こったできごとではなく、地球の生態系のなかで起きたということです。
「共生」とは、あらゆる命をテーマに考えたときの重要なキーワードだと思いますが、新型コロナウイルスのパンデミックは、人間のあり方が他の生命との関係で、このままでいいのかということを突きつけている。
人間社会における協同というテーマと地球全体の大きなテーマとしての共生を、どのように考え直し、新たな歩みを始めていくか。協同組合はこの先頭に立つに値する存在なのではないか。これを実践で示していければと思っています。
JA全中会長 中家徹氏
JA拠点に未来開く
大金 中家会長はいかがですか。
中家 労協法の成立は協同組合界にとって大変インパクトのあることです。ICAの理事会で労協法が成立したことを紹介すると各国から大変な反響がありました。
私は、かねてよりJAグループの立場で三つの危機があると言ってきました。農業・農村の危機、組織・事業・経営の危機、そして協同組合の危機です。
平成の時代はまさにこの三つの危機が負のスパイラルとなり、農業・農村を取り巻く情勢は悪化の一途をたどりました。どこかで打開をしなければと思いながら、なかなか手立てがありませんでした。そこにコロナ禍が襲い農家も大変な打撃を受けたわけですが、一方では三つの教訓を得たと思います。
一つ目の教訓は農業について。やはり自分達が消費するものは、できるたけ国内で生産しなければいけないのではないかと改めて多くの国民が考えた。マスクもワクチンも全部海外頼りというなかで、生きるために必要不可欠な食について、日本の農業を大事にし、応援したいという方々が増えてきているのは事実です。
二つ目の教訓は農村について。東京一極集中の是正、いわゆる分散型社会への動きにより農村の価値が見直されています。今回、テレワークが浸透し、デジタル技術の活用により地方に住んでいても仕事はできることが分かりました。
三つ目の教訓は協同組合について。JAによる子ども食堂への食材提供や、アルバイトがなくなった大学生にお米の提供など、助け合い、相互扶助、「1人は万人のために万人は1人のために」という意識が高まってきたと思います。
この三つの教訓をわれわれは追い風にしていかなければならないと思っています。
第29回JA全国大会の主題は「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」です。農業を元気にしなければならないのは当然ですが、それとともにやはり地域を元気にする。これまでのような競争社会ではなく共生社会をめざしていかなければなりません。
農協協会会長 村上光雄氏
村上 中家会長が三つの危機を指摘しましたが、実際に農村人口はどんどん減っていき、このままでは農村が持続できなくなるのではないかと、残念ながら絶えず危機感を抱いているのが現場です。
そのなかで農協が地域の柱として、また、みんなが集まる拠点としての機能を果たしてくれているのは本当にありがたいことだと思っています。私が以前から言っているのは、組織が大きくなると、どうしても現場や末端でのつながりが疎かになっていくということです。
そこで組織が大きくなっても末端で「小さな協同」をたくさん作っていくことが大事だと前から思っています。そうした取り組みが育っていく手助けを農協としてもやっていく必要があると考えています。
私たちも集落営農に協同で取り組んできましたが、今回、「協同労働」という形で新しくより鮮明な姿で表に出てきたことで、「小さな協同」の可能性がさらに広がっていくのではないかと思います。
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