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JAの活動:【JA全農の挑戦】

【JA全農の挑戦】対談:海外市場に見る日本農業の活路 PPIH専務・松元和博氏×JA全農参事川﨑浩之氏 (2)農畜産物の品質は『革命』級2021年11月2日

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日本の農畜産物の輸出が拡大している。人口の減少で国内市場が縮小しつつあるなかで、海外市場の拡大は日本農業に大きな可能性を示している。海外への店舗展開で、2030年までに海外売上高1兆円をめざすPPIHグループの松元和博取締役専務とJA全農で海外戦略を担当する川﨑浩之参事が、農産物の輸出の現状と将来について対談した。

シンガポールタンピネス店シンガポール タンピネス店

農畜産物の品質は「革命」級

日本米を売りたい

松元 力を入れようとしているのは米です。日本食を語る上で米は絶対欠かせません。

シンガポールでは11月1日におにぎり屋さんをオープンします。「何で日本人はそんなお米にこだわる?」とも言われるので、あきたこまち、コシヒカリ、ゆめぴりかなど違う品種を、シンガポール人スタッフに食べ比べてもらい、それぞれの特徴を比較してもらったりして日本米の奥深さを理解してもらうようにしています。今後米国でも日本米を売っていきたいです。

川﨑 現地の米と日本米を比べるとどうしてもコスト高ですが、良さがわかるようにしているのですね。

松元 お米に加え、おすしではネタと酢も訴求しています。おにぎりではノリも。日本のお肉はおいしいですが、東南アジアでは牛肉を食べる文化がまだ多くないので、文化として食べ方を提案していきたい。米国でもジャパンスタイルの食べ方を浸透させていけば、まだまだ伸びるとみています。

オールジャパンで

JA全農参事 川﨑浩之氏JA全農参事 川﨑浩之氏

川﨑 大きな可能性がありますね。ところで日本では、各県の産品のアピールが、海外での日本の産地間競争となっている実態もあるかと思いますが...。

松元 海外での産地間競争はもったいない面もあります。日本になじみがある国では、「九州」とか「北海道」といった地域アピールもいいですが、海外の顧客には「〇〇県」と言われてもわかりにくいので「日本」が大事。まずはオールジャパンでのプロモーションが重要です。

川﨑 海外の売り場で「棚」をできるだけ安定的に長期に確保し、その品目の良さをしっかりアピールし販売の拡大につなげていくためにも、できるだけ広域で協力し、リレー出荷のような形で「ジャパン」を売っていきたいですね。

松元 例えば、卵はジャパンとしての評価が高く、生食で食べられる卵って日本くらい。安全安心は生産者の努力のたまものです。香港でも卵かけご飯がブレイクしています。

川﨑 全農インターナショナルの香港事務所で、高校などに出向いて日本の卵の良さを「食育」で伝えました。

松元 その恩恵を受けています。

コールドチェーン課題

松元 ロングライフの牛乳を北海道から輸出しています。チルド温度帯の輸送はエア便に頼らざるを得ないのでコストが課題です。

川﨑 鮮度保持・コールドチェーンをどう構築し、コストを抑え、安定的な物流が組めるかが日本の農産物輸出の課題と私たちも思っています。

松元 産地から陸送で大都市ハブを経由するのと、産地から海外に直送するのでは、鮮度や歩留まりも違います。届くまでに時間がかかり、買って冷蔵庫に入れていたらすぐ腐ったとなると、「品質が悪い」と思われてしまいます。

川﨑 産地から海外消費地まで、途切れない鮮度保持・コールドチェーンと効率化によるコスト低減に向けて、物流やリテールの皆さんと一緒になって取り組んでまいります。

松元 ぜひ実現を。JAさんはグループならではの取り組みを期待しています。例えばイチゴの船便ですね。今のコンテナ状況では危険ですが、今後安定的に実現したら〝革命〟が起きます。

川﨑 日本の旬と海外の需要のピークをどうマッチングさせるかも生産・物流のチャレンジです。日本の需要のピークと中華圏のピークは違うんですね。日本のピークが年末年始でも、中国は1月末から2月初旬の春節と10月の国慶節。どのタイミングでどういったものが売れるのかを国別に把握することが重要です。

松元 そうです。中華圏の需要のピークに鮮度のよい「シャインマスカット」、柿など投入できれば、そこでも〝革命〟が起きます(笑)。

川﨑 加工品、飲料はどうでしょう。

松元 果汁100%のストレートジュースがよく売れます。日本は安過ぎますが海外ではよい値段で売れる。加工品では芋ケンピ、干し芋が売れ始め、イチゴをフリーズドライしてチョコレートかけしたものやグミも動いています。ドライフルーツはこれから、全農さんと協力して新たな需要を作れるんじゃないか。あとはお酒にチャレンジします。

川﨑 海外でJAグループのコーナーを作り、「ニッポンエール」のグミやドライフルーツ、100%ジュースなどを展開していければと思います。高級フルーツはどうですか。

松元 店頭に置いているだけでは良さを伝えきれないので、シンガポールでは、品質や食べ方を顧客に説明するコンセルジュを付けました。もともと、青果売り場の仕事は人気がなかったので、あこがれの職場にしようと制服を替え、コンシェルジュとして商品知識や生育方法・日本の文化までも消費者にアピールしてもらいましたが、これが当たって売り上げも伸びました。まずは注目してもらい、関心を寄せてもらい、しっかりと説明するという方式で盆栽といった新たな商材も売れることがわかりました。やはり、日本の良さを商品+αでマーケティングすることが重要です。

みんなでSDGs

川﨑 そういう意味で、海外の成長を取り込むことが日本農業の成長につながるのですね。SDGs(持続可能な開発目標)はどうでしょう。

松元 ホットな話題です。SDGs、ESG(環境・社会・企業統治に配慮した投資)の観点では、輸送ルートを短縮することでCO2の排出を削減しています。生産者のみなさんによる、たとえば「みどりの食料システム戦略」への取組みなどもキャッチアップして伝えています。

川﨑 SDGsは農産物輸出でも重要な要素になってくるでしょうか。

松元 そうなると思います。日本の食品は、健康、美味、安心、環境配慮だと伝えたい。「みんなで一緒にSDGs」です。

川﨑 「シャインマスカット」やサツマイモなど、日本の品種が海外に流出し大々的に生産され日本のマーケットが奪われてしまう、という問題も顕著になってきています。

松元 日本の開発者・生産者が苦労して開発・生産体系を構築したものが海外に流出し、安価に作られてしまう。私も危機感を抱きます。日本も知財ライセンスをグリップしつつ、重点品目を選定し、国と一体となってまさにオールジャパンで対応していく喫緊の課題だと思います。

川﨑 生産者と行政、JAグループ、PPIHさんのようなリテールがしっかりとタイアップして、品目別、国別に戦略を練る必要がありますね。

JAグループへの期待

川﨑 JAグループへの提言、期待、お叱りがあれば。

松元 期待しかないんですけど(笑)。

パートナーである生産の現場のみなさん、JAのみなさんとお話してこそ、各国の具体的課題を解決していけます。

川﨑 海外需要への対応ではタイムリーな判断が求められますね。

松元 旬を逃すと「それは来年」になってしまいます。私たちも包み隠さずデータを出すので、情報交換を密にしたいと思っています。

川﨑 最後に日本の農家のみなさんにメッセージをいただけますか。

松元 うちの(創業者の)安田も、「日本ブランドで食を世界に発信できる。幸せな国に生まれた」と言っています。私もそう思います。国内だけ見ると明るいニュースは少ないかもしれませんが、JAグループのみなさんが育てた1次産品は、おいしくて安心できると海外で高い評価を受けています。

PPIHは「2030年、1兆円」に向けて動き始めました。その実現には、みなさんが生産した産品が必要です。世界にむかって、ともに歩んでいきましょう。可能性は無限大です。 

川﨑 意欲がふつふつと湧いてきます。海外ではご苦労も多いでしょうが、海外の現場に大きなチャンスと課題解決のヒントがあるのも事実です。引き続き情報発信をよろしくお願いします。日本の産地と世界をつなぐことがJAグループの重要な機能であることを認識してしっかりと取り組んでまいります。

【PPIHグループの概要】
PPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)グループは、「ドン・キホーテ」「アピタ」「ピアゴ」を中核とする多様な店舗フォーマットで、国内でディスカウント事業、総合スーパー事業を展開する国際的企業集団。海外では2006年以来の米国事業に加え、2017年から「ジャパンブランド・スペシャリティストア」をコンセプトとした「DON DON DONKI」をアジア各国に出店して店舗網を拡大するほか、1次産業の農畜水産物を中心に、日本産品の海外輸出拡大を目的に設立した会員制組織「PPIC(パン・パシフィック・インターナショナルクラブ)」を通じて生産者・事業者との連携を深めている。1980年創立、資本金231億5,300万円(2021年6月期末)。

対談:海外市場に見る日本農業の活路 PPIH専務・松元和博氏×JA全農参事川﨑浩之氏 (1)オールジャパンで安定供給がカギに

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