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JAの活動:【第29回JA全国大会特集】コロナ禍を乗り越えて築こう人にやさしい協同社会

【わたし発輝く女性】栃木県JAはが野総代・前女性会会長・猪野 正子氏に聞く 尊徳の教え〝つなぐ〟「協同の原点」常に胸に【第29回JA全国大会特集】2021年11月17日

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栃木県真岡市で水稲、イチゴ経営を営む猪野正子さん(69)。農村ならではのさまざまな縛りや制約のなかで、持ち前の積極性・チャレンジ精神でJAはが野女性会の活動や地元JAの理事など幅広く活動。いまも総代の一人として後輩を育て、また組合員とのつなぎ役としてJAを支える。前JAはが野女性会会長猪野さんに聞いた。(日野原信雄)

栃木県JAはが野総代 猪野 正子氏二宮神社と猪野さん

――普段から二宮尊徳の名前が出ますが、猪野さんにとってどんな存在ですか。

私の住む栃木県真岡市の二宮地区(旧二宮町)には二宮尊徳先生ゆかりの桜町陣屋跡があります。自宅から200mほどです。二宮先生は疲弊した村の再興のため、この地に26年間在住し〝報徳仕法〟を成功させました。

二宮地区には尊徳先生の遺徳が自然と根付いています。子育てのころ、子守りで、この神社にきたときは「目をつむってごらん。尊徳先生の足音が聞こえるよ」と子どもに語りかけたものです。知識だけでなく、こうした体験も子どもの教育にとって大事です。地元の小中学校でも尊徳先生の教えを学ぶ機会もあります。

陣屋の隣には二宮神社や二宮尊徳資料館があり、また女性会も加わった20㌃ほどの「報徳田」を設けています。米は、尊徳先生の娘の名からとった「ふみの夢」として参加者に配り、子どもたちの食農教育に役立っています。

私は結婚した22歳からこの地に住み、自然に二宮先生の教えが身についたように思います。JA女性会を中心に、市や県、全国における多方面にわたる活動を続けてきましたが、その原点はこの地の歴史と風土にあると言えるかもしれませんね。

――積小為大(せきしょういだい)」「一円融合(いちえんゆうごう)」など、尊徳の教えが会話のなかで自然に出ています。猪野さんの活動を見ると、尊徳の教えをなぞっているかのようにみえますが。

そうですね、なかでも男女共同参画の運動は、私たち女性会が長年取り組んできた課題です。2002(平成14)年には女性参与10人、06年には総代600人の別枠で30人、10年には女性枠3人の理事を確保しました。当時のJA役員の理解と女性会運動の結果だと思っています。

私は参与から総代、そして理事を2期務めさせていただきました。2020年度、JA女性会長を退任して、今年度から地区選出総代を務めています。長年の女性会の活動や理事の経験を生かしてほしいという地域や仲間に推され、総代候補に手を挙げました。

地区選出総代の女性も2006年度の4人から、今年度は9人になり、女性も勇気を出して地域から手を挙げようと運動してきたからこその成果だと思います。

――どのようなことをやりたいと思って総代に手を挙げましたか。

JAの集まりに女性の出席者が少ないことが気がかりでした。総代として、地域や組合員とJAをつなぐ役割を果たしたいと思っています。地域での話し合いの機会を増やし、意欲ある女性を総代候補として送り出し、女性パワーを生かしたいと思いました。

JAについては、組合員、JAも本当に必要なJAとはどのようなものかについて考えることで共通の認識を持つようにしたいですね。共に必要とされるJAに「してください」ではなく、「共にしよう」という、共生への新たな協同の基盤づくりです。厳しいことも言いますが、支援は惜しまないつもりです。これこそ尊徳先生の「一円融合」です。

――地元FMの番組を持っているそうですが、どのような内容ですか。

番組名は「いちご一会 お元気ですか」です。スポンサーは息子の雄介(39)が代表を務める「猪野さんちのいちご農園」です。今だからこそできる私なりの発信をしたいとチャレンジしました。今年7月にスタートし、月1回、毎月15日、15時に放送する1時間番組です。「15」(いちご)にこだわりました。

農と食、郷土文化、SDGsの学びもあります。それに関わる人のことを伝えたいとの思いで、「お元気ですか」は〝一期一会〟の誰かを思い出すきっかけにと番組名にしました。放送日の夜には、電話やメッセージが寄せられ、農村女性の「勇気をもらった」との言葉に手応えを感じています。

――今もJA活動のほか、市や県のさまざまな役を務めていますが、その動機はどこからきていますか。

旧二宮町は公民館活動など社会教育が盛んなところでした。そのころの学びが、何にでも興味を持つチャレンジ精神につながっているのでしょうか。JAでの活動は、みそづくりに誘われて若妻会の活動に加わったのが始まりで、フレミズ全国集会実行委員長や県の女性会会長など、活動の範囲がどんどん広がりました。人との出会いに感謝です。

組織活動は常に原点に戻って、現在と未来を考えることだと思います。どんな組織にも設立した時の目的があり、それを次につなぐ人を育てることが私たちの役割で、10年後も地域に根ざした組織であり続けるためにも大切なことです。

仲間と一緒に一歩一歩前進すれば、必ず道は開けます。地域の理解を得て、小さな一歩の積み重ねが大きな結果を生むのです。まさに〝積小為大〟です。特に何かで人を説得する時など、一度に大きな負担をかけると「私には無理」と言われ、受け入れてもらえないこともあります。相手の気持ちや、その時の状況に合わせて、小出しにして仲間になってもらい、1㍉でも前進する。この積み重ねが大事です。どんなことでも諦めないで挑戦することで、これからも地域にたくさんの花を咲かせたいと思います。

――まさに組織づくり・組織運動の基本といえますね。



特集:コロナ禍を乗り越えて 築こう人に優しい協同社会

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