JAの活動:実現しよう!「協同」と「共生」の新しい世界へ
幸南食糧株式会社・川西修会長に聞く モノを売る前にやることがある(2)【特集:実現しよう!「協同」と「共生」の新しい世界へ】2022年1月7日
経済・社会環境だけでなく、人々の価値観も大きく変化する時代に、企業はどのように対応するか。このことは協同組合組織にも問われている。政策に翻弄され、消費の変化にさらされ米を扱い、小さな小売店からスタートし、独自の経営哲学で社員をやる気にさせ、年商250億円の米卸メーカーに育て上げた大阪・松原市の幸南食糧株式会社会長の川西修氏に聞いた。(インタビュアーは下小野田寛・JA鹿児島きもつき組合長)
幸南食糧株式会社・川西修会長
人材教育が大切多彩な声を糧に
――会長はどのような会社づくりを目指してきましたか。
「小さな一流企業」です。そのため「あいさつ」、「元気」、「きれい」、「ほうれんそう」、「身だしなみ」の五つの目標を掲げ、それぞれ「一流」を目指しています。この五つの目標は事業の達成目標よりも上位にあります。
掲げるだけではだめです。形にしなければなりません。このため、「元気」では、朝・昼・夕に、社内放送で社員が自分の決意を述べ、それに対して全員が拍手します。
「きれい」は、社員が1日二つのごみを拾います。一方で清掃活動は、新人も管理職も一緒に同じ作業をするので会話が生まれ、お互いを知る機会にもなります。「ほうれんそう」(報告・連絡・相談)では、どのような報告でも、目を通した日にちと時間を記入するようにしています。誰のところで滞っていたかが分かります。
もう一つ、会議の時は、発言の初めに、「わたしの声が聞こえていますか」、最後に「質問がありますか」と聞き、「はい」、「ありません」の返事を確認してから報告を終えます。言いっ放し、聞きっぱなしをなくすことができます。特に弊社は食品を扱う企業ですので、新人も管理職も身だしなみをきちんとするのは当然であり、マニュキュア、長髪はだめです。
弊社には「8・1の誓い」という『記念日』があります。1982年の8月1日、台風で近くの川が氾濫(はんらん)して工場が流されて再起不能の状態に陥り、一時廃業を決意しました。当時10人ほどの社員でしたが、このことを告げると、「社長はゼロからいまの会社を立ち上げた。もう一度やりましょう」と励まされました。「これからの会社は社員を幸せにしなければならない」と、つくづく教えられました。この時、法人組織にしようと考え、「幸せ」を「こう」と読み、「幸南食糧株式会社」と名付けました。8月1日は、それを思い出す大事な記念日になっています。
――私は40代で一度JAの組合長をやり、組織改革に取り組みましたが、そのときは制度・組織に目が向きすぎて、改革を支える人への配慮が足りませんでした。今は各事業所へ行ったときは、職員一人ひとりにあいさつして回ります。すると職員が変わってきました。上が変わらないと下は変わらないものです。
そうですね。長たるものは名刺が重くなる(肩書が増える)ほど、自分で気づかなければならないことが増えますね。役所でも同じことが言えます。来てほしい町にしたいというマインドが職員にあると、役所を訪れる人の受け止め方が変わります。市民課だけでも「いらっしゃいませ。市民課の○○です」とあいさつすると明るい町になり、人も育ちます。小さなことでもよい。そうした気づきがトップに必要です。
――これから農業や産地へはどのような対応をしていきますか。
農業に後継者がいないのは、もうからないからです。天候に左右される農業ほどリスクの大きいものはないでしょう。私は今年、NPO法人農産物加工協会を立ち上げました。
6次産業化によって農産物の付加価値を高め、農業者の所得向上を支援しようというもので、弊社の食品開発センターで加工できないものを、協会会員である食品加工メーカーに紹介しています。
――米の輸出が注目されていますが、沖縄で炊いて、パックで出せないものかと考えています。沖縄は貿易面で優遇されているので、それを生かそうということです。米の輸出についてはどう考えますか。
そうでしたらJAで炊飯工場をつくったらどうでしょう。これから日本は人口が減り、輸出は有望です。同時に需要を拡大するには産地と消費地の情報のパイプを太くする必要がありますが、いま弊社では焼き飯に適したインディカ米の加工を考えています。「国産インディカ米のピラフ」をつくってみたいのです。
これからの輸出を考えると、炊飯器で炊く日本の食べ方を提案するのは難しいのではないかと考えています。レンジでできる一食完結型のパックご飯がいいでしょう。私は、これから日本でも、簡単、便利、おいしい、安全・安心、健康のパックご飯が需要の主流になるのではないかと思います。15年もすると、家庭から炊飯器がなくなるかも知れません。これも「時代」の変化です。
農協は生産地の情報をもっとリアルに伝えると同時に実需者である小売店や消費者の声をよく聞いてほしいですね。生産地の情報を消費地へ、消費地の情報を生産地へ届ける情報交換が重要な時代になってきていると思います。弊社にも見学に来ていただきたい。弊社では、そのためのステージ(セミナー会場)も用意しています。
【インタビューを終えて】
とにかく元気な川西会長で、エネルギッシュでどんどん前へ向かっていく気迫と数々のピンチをチャンスに変えてきた気づき(発想の転換)のすばらしさを感じた。現在、全国の産地も大変厳しい状況にありますが、今こそ改めて気づきが私たちに求められています。そのためには何か大きなことをやるというよりも、小さなことを大切に、元気なあいさつから始めたいと思います。元気が出ました。
(下小野田寛)
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