JAの活動:第42回農協人文化賞
【第42回農協人文化賞】営農事業部門 京都農協前常務 (株)京都協同管理社長 高田己喜男氏 農家の思いと歩調合わせ2022年2月8日
京都農業協同組合前常務理事(営農・購買・畜産酪農担当)
株式会社京都協同管理代表取締役社長 高田己喜男氏
私は、昭和48(1973)年(20歳の時)に地元の農業協同組合に入組し、支店の営農指導員として、仕事をする事となりました。
農家の長男として生まれ、農業というものは幼い頃から身近な存在でありました。当時の農業協同組合は、地域にとってはなくてはならない存在で、就職先はおのずと決まっていたような感じもありました。
入組してからは、農業協同組合の本質とする営農指導と販売事業を受け持つ事となりましたが、農業の勉強はしたものの農協自体の仕事内容や地域性も分からず、組合員と接してきた事は今振り返ると、よく勤める事ができたものだと思い返しています。
その当時は、オイルショックと米余りの時代へと突入し、米の生産調整が始まった2年目であり、農家の戸惑いや不安が大きく膨らんだ時代でもありました。
勤務した支店は山間部に位置し、米・肥育牛飼育やシイタケの栽培等もあり、原木の手配から生シイタケの市場出荷等部会員と酒を飲みかわしながら、先の目標を掲げ日々邁進していました。夏場の早朝からの生シイタケの運送・出荷は、道中眠たい目をこすりながら運転した事は非常に辛いものでしたが、この事は京都市場での近郷産地としての位置を特徴づける成果となり、農家所得の向上へとつながり、生産農家と喜びを共有した時代でもありました。
時代は流れ、農協人としての経験も出来、職場も変わっていく中、「現場に出向く」「農家の声・現状を知る」「自分も経験する」事を最も大切にし、自分のポリシーとして仕事を進める事を体得致しました。
この事は、苦しい時ほど思い返す力となり、それは物事への取り組み姿勢以外の何物でもないと思っています。
本店業務の中では、市場原理に任せた農産物販売は、農業経営不安と「なぜ買い手に価格をつけてもらう」のかが、納得しにくい思いから、当時の若い世代の農業者からは、「自分たちで価格を付けて売っていこう」と農産物の直接販売を企てました。大手スーパーの地下休業店舗を借り、農家の顔の見える販売方法を編み出し、インショップ方式の直接販売を手掛け、現在では生産農家60人の組織で、13店舗へ農産物を持ち込み、年販売高2億円を超える販売方法へと発展する事ができました。
農協を取り巻く環境も国の施策や時代の変化とともに様変わりし、平成15(2003)年10月には、市町村を超えた広域合併が進み、入組した亀岡市農協は合併により京都農業協同組合へと生まれ変わりました。新たな組織・支店で支店長としての業務は、振り出しのように思えた経験となりました。
大型合併は、指揮命令の良さを感じる農協であり、不安を感じている組合員に、合併の良さを知って頂くための奮闘の日々であり、アッという間に月日が過ぎた感じがしています。
元来、営農関係の経験が長い中、平成22(2010)年7月から営農業務を担当する部長となり、「食と農を基軸に地域に根ざした協同組合」をめざし京都府下の6割を占めるJAの活動を、気候風土と統一したJAの方針に変えていく取り組みは、日夜厳しい物事が起こるような現実でありました。
賑わう農畜産物直売所
平成元(1989)年に始まった「京のブランド産品」認証事業も他産地の追随を受ける中、部会組織の強化と生産履歴記帳や農業生産行程管理への取り組みにも力を入れた、安心・安全な農産物の生産に奮闘した状況でありました。
一方、市場流通への期待とは別に、平成22(2010)年からは、生産者が直接販売できる環境整備を進める中、京都府内最大級の農畜産物直売所「たわわ朝霧」も開設され、高齢化する農業生産者や農家女性等の参画を基に、時代背景を取り入れた新設の農畜産物直売所は、「消費者と生産者」をつなぐ虹の懸け橋の機能が備わり、取り扱い金額は年々右肩上がりの状況となりました。
この事は、地域も取り込んだ事業へとつながり、出荷農家にとっては弾みのつく販売方法となり、現在も活気に満ちています。
農山村の環境は、全国規模で問題視されている耕作放棄地や有害鳥獣害問題で生産意欲が減退する中、「何とかしなくては」との中央会の指導の下に、狩猟免許のJA役職員による取得を進め、地元組合員と連携した許可捕獲の取り組みは、徐々に成果をあげつつあります。
このように、現場目線も取り入れたJA運動は組合員の関心事となり、捕獲要望と組織力が大いに期待され、現在も継続している状況です。これらの思いを基に、今後も微力ではありますが、JA・農業の発展に努力したく思います。
座右の銘
【略歴】
たかだ・みきお 昭和27(1952)年生まれ。昭和48(73)年京都府立高等農業講習所卒(現京都府立農業大学校卒)、昭和48(73)年3月旧亀岡市農協入組、平成15(2003)年10月合併により京都農協となる。平成22(10)年7月京都農協営農部長、平成25(13)年6月京都農協常務理事、令和元(19)年7月株式会社京都協同管理代表取締役社長。
【推薦の言葉】
"京ブランド"を強化
高田氏は「営農活動中心のJA」を経営理念に、安全・安心な京都米・京野菜・生乳などの生産振興を始め、持続可能な農業の実践に向けて京野菜の世界ブランド化への取り組みをリードした。また常務理事として、府内JAの酪農事業をJA京都に集約し、JA京都酪農センターを中心とするきめ細かい指導体制を構築し、事業の効率化を進めた。
さらには従来の正組合員と准組合員の区分を撤廃し、「組合員」に統一する定款変更を全国で初めて実施。地域全体で農業振興に取り組む体制づくりにも尽力した。
また、JAグループ京都の(株)京都協同管理の社長として、京都産の黒毛和牛「京の肉」を始めとした安全・安心でおいしい和牛肉を提供するとともに、農業支援外国人受け入れ事業では、府で第1号となる特定機関の認可を受け、農業経営者の労働力確保を支援している。
※高田氏の高の字は正式には異体字です
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