JAの活動:第42回農協人文化賞
【第42回農協人文化賞】営農事業部門 みのり農協組合長 神澤友重氏 創造的自己改革貫く2022年2月9日
兵庫・みのり農業協同組合代表理事組合長 神澤友重氏
私は、1970(昭和45)年に当時の別所農業協同組合に入組し、金融課に配属されたのが農協人としての第一歩でした。
高度成長によりJAの全ての事業も急速に伸張し、現在の経営基盤の基礎がつくられた時代であったと思い起こしています。
その後は第1次・2次のオイルショックやバブルの崩壊などを経験しましたが、JAの事業は順調に業績を積み重ねてきました。
一方で、合併助成法が制定され、農協合併が促進される中で、平成2(1990)年11月に2農協の合併により三木市南農協が誕生しました。
さらに、平成12(2000)年4月には4農協による2度目の合併を経験し、現在のみのり農協が発足しました。
みのり農協は、最大の特産作物として、酒造好適米の最高峰と言われる山田錦が古くから栽培され、品質、生産量共に全国一を誇っています。
山田錦は昭和11(1936)年に兵庫県の奨励品種として誕生以来、生産者と兵庫の「灘五郷」の蔵元による村米制度が今日まで引き継がれ、全国の酒造家から日本一の酒米と高い評価を受けています。
酒造好適米の特徴をすべて兼ね備えた山田錦は、心白が大きく雑味の元となるタンパク質やビタミン、脂質の含有量が少なく、吸水性にも優れ、酒米の王様と言われる所以であります。
半面、栽培管理は山田錦の品質特性や酒造適性の向上を踏まえた高度な栽培技術が求められますが、近年は気象変動の影響を受け、管理の見極めが大変難しくなっており、営農指導担当者は、移植適期、元肥・追肥・穂肥の施用量、適切な薬剤投与さらに水管理から刈り取り適期に至るまで適切な指導のスキルアップに研鑽を重ねています。
加えて、千粒重、粒厚、心白発現率、胴割れ粒率、などの玄米品質調査や気象感応調査を充実させ、品質の向上と販売拡大に取り組んでいます。
私は、平成28(2016)年より代表理事組合長に就任し今日に至っています。
就任時は農協改革が急速に進み、平成28年4月には農協法が改正され、様々な農協改革案が示される中、みのり農協の「創造的自己改革実施計画」を策定して役職員の意識改革と自己改革スケジュールの実践に積極的に取り組みました。
この自己改革では、農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域の活性化の実現に向け、平成28年度より令和元(2019)年度までの4年間、県中央会、全農兵庫、県行政にも参画を呼び掛け、管内5会場において年に一度「農業者懇談会」を開催して、組合員の要望や意見集約を行い、事業に反映してまいりました。
具体的には、地域振興作物の生産拡大、営農指導の充実、後継者育成支援、農家支援事業などを提案し、各事業に取り組みました。
まず、後継者育成支援事業では、JAみのり青年部の活動支援を強化し、みのりJA女性会とイベントの合同開催、親子農業体験スクール、食育食農セミナー、新規就農支援など若年向けの事業に取り組みました。
また、農家支援事業としては特産作物の生産振興・生産拡大助成、タマネギ出荷奨励助成、レンタルハウス助成、集落営農組織や認定農業者を対象に集落営農等担い手助成、農業機械リース事業などを推し進め、組合員の農業支援に努めました。
さらに支店単位に『地区別ふれあい委員会』を設置し、准組合員の意思反映と事業利用の促進に尽力しました。
山田錦の振興
これらの自己改革の取り組みについては、平成30(2018)年9月に農水省の自己改革の取り組み状況の聞き取り調査先に選定され、農水省経営局協同組織課から経営・組織対策室長ほか2人と近畿農政局経営支援課また兵庫県農政環境部の関係者からみのり農協の自己改革の取り組み経過と進捗(しんちょく)状況についてヒアリングを受け、高い評価をいただきました。
令和2(2020)年に新型コロナウイルス感染症が発生し、経営環境が急激に変化する中で、収益力の向上を目指す事業モデルの転換や、経営基盤の強化が求められており、一昨年度より「みのり農協経営基盤強化対策会議」を立ち上げ、各部門ごとに収支改善プロジェクトを設置し、今後の収支シミュレーションと経営改善計画を策定してその実践に取り組んでいます。その一環としてコンサルティング会社の経営診断を参考に、隣接する支店店舗、また経年劣化が激しい共同乾燥施設の再編に取り組むことを決定しました。
就任以来私は自己改革と新型コロナに翻弄(ほんろう)されてきましたが、昨年5月には5年間の農協改革集中推進期間の期限を迎え、100年に1度と言われる大変革期を迎えた今、「固定観念にとらわれず自己改革には終わりはない」の信念を貫き、将来に備えた経営基盤の強化と確立を図るため、施設の再編をはじめとした収支改善計画を果断に進めます。
課題は山積していますが、みのり農協の経営理念である「地域・人・くらしの未来づくり(ゆたかなみのり)をめざします」の実現に向け、地域農業の発展と活性化、さらにJA経営の健全化とより強靭(きょうじん)で新たな組織基盤の構築をめざして尽力してまいります。
座右の銘
【略歴】
かんざわ・ともしげ 昭和26(1951)年12月生まれ。昭和45(70)年別所農協に入組、平成20(2008)年みのり農協総務部長、平成22(10)年常務理事就任、平成25(13)年代表理事専務就任、平成28(16)年代表理事組合長就任、現在に至る。令和3(21)年6月全農兵庫県本部運営委員会会長に就任。
【推薦の言葉】
農家所得向上に手腕
神澤氏は総務部長時代、既成概念にとらわれず、ムリ・ムダを徹底的に精査し、JAの経営健全化に大きく貢献した。また、専務や組合長として地区別農業懇談会や地区別ふれあい委員会を新設して、積極的に組合員や利用者の声を聞いた。それとともに全国に誇る「山田錦」や「黒田庄和牛」、「播州百日どり」と言った地域特産品の普及拡大と、タマネギ、ニンニク、金ゴマなどの振興作物の拡大に取り組み、JAの営農・経済改革を実践し、農家の所得向上に貢献した。
平成30年には、長年の課題であった複線型人事制度・CDP(キャリアデベロップメントプログラム)制度を導入。多様化する職員の働き方への対応と計画的な人材育成を進めている。マネジメント能力と併せ、決断力・実行力に優れ、いかなるときでも沈着冷静に判断し、職員はもとより組合員の信頼が厚い。
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