JAの活動:JA全農創立50年特集 なくてはならない「JA全農」を目指して
女性職員たちが語る第一線で磨くキャリアと将来の夢(1)【JA全農創立50年】2022年3月25日
女性の活躍が欠かせない時代。第一線で働く女性職員にとって全農は働きやすい環境になっているのか。将来のリーダーとして期待される、職種や年代の異なる4人の女性職員に業務への思いや将来の目標、今後、全農に入ってくる女性職員へのメッセージなどを語ってもらった。
【出席者】
秋田県本部営農支援課 田村美樹さん
山梨県本部米穀畜産課 佐野めぐ美さん
長崎県本部野菜課 田向麻衣さん
本所畜産生産部海外事業課 矢野真紀さん
《司会》本所広報・調査部 広報企画課長 田代典久さん
田代 本日は将来のリーダーとしての活躍が期待される方に参加していただきました。とかく男社会と言われがちな農業界、その一員である全農グループですが、実は2022年度の実績を見ると、全国の総合職採用の半分は女性で、本所の総合職採用は女性の方が多いそうです。まずそれぞれのキャリアと今の仕事内容をお話しください。
田向 2005年に入会して米穀の販売部門に5年間、その後12年間は園芸の販売部門に在籍しています。主な業務は、青果物の販売業務で全国の市場へ日々の市況をみながら出荷を行ったり、県内のJAを回って出荷される青果物の品質や出荷状況の確認、生産指導などにあたっています。
佐野 2020年に入会し、米穀畜産課に所属し2年目になります。米穀畜産課では農産部門と畜産部門がありますが、私は水稲や麦、大豆、バレイショの種子をJAへ供給する仕事をメインに行う農産部門を担当しています。また、山梨県主要農作物生産改善協会という事務局も担当しておりまして、県内で生産している水稲と大豆種子の生産・振興にも携わっています。
秋田県本部営農支援課
田村美樹さん
田村 現在入会6年目で、4年目までは肥料農薬推進課で肥料の技術担当として新技術や土作り肥料の普及拡大に向けた試験などを担当しました。5年目からは営農支援課で、生産者の手取り最大化に向けた支援や営農管理システムの普及推進、スマート農業の実証などに取り組んでいます。
矢野 2009年に入会して最初の4年間、福岡畜産生産事業所で勤務した後、本所で飼料原料をオーストラリアや米国などから輸入・販売する業務を担当しました。育休を経て現在は海外事業課で、米国の全農グレインなど海外に拠点を置くグループ会社の経営管理業務を担当し、4月以降はシンガポールの全農インターナショナルアジアに出向します。
農業界、JAグループに感じる課題は
田代 仕事を通じて感じる農業界、JAグループの課題について、生産者や取引先から伺うことなども含めて自由に話していただけますか。
山梨県本部米穀畜産課
佐野めぐ美さん
佐野 農業がしやすい環境でなければいけないと思っています。今、新型コロナウイルス感染症の影響で米価が下がっており、生産者の収入は減っているのに資材は高騰し、ますます農業がしにくい環境になっていると思います。この解決のために何をしなければいけないのか答えはまだ見つかっていませんが、一人ひとりが自覚と責任を持ってどうしていけばよいかを考えることはすごく大切だと思っています。
田向 長く園芸の販売部門にいますが、一番思うのは売る側と買う側のギャップですね。作る方や流通業界は男性が多い中で、買うのはほとんど女性です。これまでは、一方通行の販売だったと感じます。ただ、ここ数年、方向転換ができていると思うのは、例えばミニトマトやミニアスパラ等の品種や規格のバリエーションが増えたり、総菜や冷凍向けの野菜の生産・販売が増えたりしていること。お弁当や料理に使いやすいものが少なかったが、需要に供給がマッチしてきたと感じています。今後は私たち作る側・売る側も、買う側の目線で商品を提案できれば消費も活発になり、生産者も作ってみようと思えるのではないかと思います。
矢野 人口減少が一番大きな課題で、農業界への影響が大きいと感じています。日本は飼料原料の約8割を輸入に頼る中で、全農は米国等にグループ会社を設立し、安定確保体制は整っていますが、拠点を持たない産地から輸入する場合は、日本とは桁違いの穀物を輸入する中国や今後更なる人口増加が見込まれる東南アジア等に買い負けることのないよう確保する必要があります。需要が減少する中でも、日本の畜産生産者のために飼料原料を安定的かつ競争力ある価格で確保することが私たちの使命と考えています。
田村 秋田県は人口減少率が全国最大で、日々感じているのは高齢化や就農人口の減少、労働力不足です。今、基盤整備事業が活発に進められていますが、新しく農業法人を立ち上げたり、地域の担い手に面積が集約されたりして一つの経営体が管理する面積が急激に拡大していることが一つの課題と感じています。
20年後の世の中と価値観
田代 次に20年後はどんな世の中になっていと予想されるか、お伺いします。20年後は皆さんがちょうどリーダーになっている時代ですね。併せて20年後も仕事をするうえで大切にしたい価値観についてもお話しいただけますか。
長崎県本部野菜課
田向麻衣さん
田向 スターウォーズやドラえもんの世界ですね。小学校のときにスターウォーズを観て本当にびっくりしました。非接触のパネルやホログラム(立体画像)など、こんなことが実現できるわけがないと思っていたのが今は実現している。想像の世界を、世の中みんなで実現してきた結果だと思います。ですから、これからは若い世代が想像力を働かせて新しい未来を切り開かなければいけない。デジタル技術や機械なども積極的に活用して、今まで想像すらできなかったものを形にしていきたいと最近すごく感じています。
田村 秋田県においては担い手、法人等の大規模経営体が増加し、経営面積が現在数10haくらいなのが20年後は数100haとかいった規模まで拡大することが予測されます。そうなると私たちが実証を進めているICTを活用したスマート農業技術の普及が今よりも拡大し、新しい技術の開発もより進むと感じています。JAグループは生産者のためにある組織なので、これから20年、仕事をする上でも生産者の目線に立ち、生産者の要望やニーズに沿った提案ができるように事業を展開していきたいと考えています。
矢野 いろんな視点がありますが、やはり人口減少の影響が大きいと考えます。働き手も減って一部はAIなどがカバーすると思いますが、今以上に共働き世帯が増えて、男女関係なく働きやすい社会の仕組み作りが求められると思います。また消費者の行動も変化すると考えます。SDGsが声高に言われる中で、この商品は環境に配慮したものかなど、売り場に並ぶまでのプロセスを重視する消費者も増え、まさにマーケットインの考えが必須になってくると感じます。また大切にしたい価値観については、全農の職員として20年30年先も継続して利益を生み出し、日本の農業、生産者に還元できるのか、それを一番に考える必要があると思っています。
佐野 今よりも機械が発達した世の中になっていると思います。今、自動運転の車を目にする機会も多いですし、至るところで機械化が進み、ロボットを町中で見ることになるのかなと思います。少子高齢化や農業離れも進んでいるので、いずれはロボットが野菜を作ったり、収穫したりという世の中を想像しています。大事にしたい価値観としては、どんな世の中になっていても農家さんの役に立てる仕事をしたいと考えています。
全農を進路先に選んだ動機は
田代 今の話を少し膨らませて、それぞれ全農に入った動機を伺いたいのですが、なぜ全農に入られたのですか。
佐野 元々学生のときから農家さんになりたくて、北海道の大学に通っていたことから、北海道の農家さんのもとでアルバイトをする機会が何度かありました。一つ一つの畑が本当に広く、農業の大変さを知ったことから、苦労をして作られた生産物をもっと広めたいと思うようになりましたね。実際に自分が農家さんになるよりも農家さんを支える側に立ちたいと思い、全農であれば幅広い業務を通して農家さんの役に立てると考えました。
矢野 私は大阪の生まれで、実家が兼業農家で農業が身近にありました。やはり日本国民の食生活、日本の経済を支えるために、農業は今後も重要ですし、人口減少、就農者減少で苦しい状況にありますが、危機をチャンスに変えられるエネルギーを持っている産業とも思います。微力かもしれませんが、その一員として日本の農業を支えたいと考えました。
田村 私はシンプルですが、祖父が稲作農家をやっていまして、祖父の役に立つ情報を提供して力になりたいと思ったのが一番の理由です。大学のときも、土壌肥料関係の研究室に所属して勉強しました。
田向 私は就職氷河期と呼ばれた世代で、厳しい社会状況の中で絶対につぶれない会社に入りたいと思っていました。潰れない会社・無くならない仕事を考えたとき、"食"が頭の中に浮かびました。生きていくうえで衣食住は大事ですが、一番大事なのは食べることですよね。食に興味を持ち、大学では農作物物流、トレーサビリティーなどを勉強し、そこから全農に興味を持ちました。人間が生きて社会が成り立っていく上で、不可欠な食。その、生きる根幹の部分を私も担っていきたいと思いました。
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