JAの活動:沖縄復帰50年~JAおきなわが目指すもの~
激動の時代を戦い抜いた反骨精神 過去から未来へ JAおきなわが目指すもの・普天間理事長(2)【沖縄復帰50年】2022年5月17日
本土復帰による新たな時代と県単一JAの発足
1972年5月15日に沖縄の日本本土への復帰が実現した。その過程を簡単に振り返ると、1962年3月、ケネディ大統領は「琉球は日本の一部」と明言し、「沖縄新政策」を発表した。65年8月には、戦後初めて現役首相として沖縄を訪問した佐藤首相が、「沖縄の祖国復帰が実現しない限り、我が国にとって戦後は終わっていない」と演説し、67年11月の日米首脳会談において、両3年以内に返還の時期について決定することが合意され、沖縄返還は現実のものとして具体的に動き出すことになる。69年11月、日米首脳会談において沖縄の日本復帰が1972年5月とすることが正式に決まり、71年6月、日米間で「沖縄返還協定」が締結された。1972年5月15日に沖縄の日本本土への復帰が実現した。
その過程を簡単に振り返ると、1962年3月、ケネディ大統領は「琉球は日本の一部」と明言し、「沖縄新政策」を発表した。65年8月には、戦後初めて現役首相として沖縄を訪問した佐藤首相が、「沖縄の祖国復帰が実現しない限り、我が国にとって戦後は終わっていない」と演説し、67年11月の日米首脳会談において、両3年以内に返還の時期について決定することが合意され、沖縄返還は現実のものとして具体的に動き出すことになる。69年11月、日米首脳会談において沖縄の日本復帰が1972年5月とすることが正式に決まり、71年6月、日米間で「沖縄返還協定」が締結された。
JA組織においても本土復帰を前に本土との一体化が図られることになる。71年8月22日、これまでの協同組合法から新たに本土の農協法に準じて農業協同組合法が制定され、これにより各単協、連合会は本土並みに組織整備されることになった。さっそく23日には従来の琉球農連から改組した沖縄県経済連が発足、11月1日には信農連、信漁連が設立され、16日には農林漁業中央金庫が発展的解消を行い、信農連・信漁連に事業が承継された。なお中央会についてはそれより5年前の66年9月に発足しており、共済連については復帰直後の72年6月に設立されている。
本土復帰後の沖縄農業は、特に沖縄本島において社会インフラの整備が急速に進展したことから農地の転用、宅地化が進み、基幹作物であるさとうきびの生産が激減していった。このため本島の製糖工場は復帰直後の5工場から合併・統合を繰り返して、現在では1工場に集約されている。農業産出額は復帰翌年の73年が451億円だったのに対し75年には648億円、80年には936億円、85年には1,160億円と急増していくが、これは復帰に伴う物価の上昇によるところが大きく、その後はほぼ900億円台で推移している。ただし、品目別構成をみると、73年は基幹作物であるさとうきびが全体の30.6%だったのに対し2019年は15.6%に減少している。伸びた品目としては肉用牛が73年の5.8%から2019年に24.5%と本県農業の柱に成長しており、花卉も1.1%から9.5%に増加するなど構造変化も起きている。本土復帰に伴って畜産や園芸品目で本土市場への出荷が急速に伸びていった様子がうかがえる。
こうした中にあって本土復帰後、本県の農協組織はどのように対応してきたのか。社会情勢としては、県が観光立県を目指して社会インフラの整備を進めるなか民間企業でもホテルなどの宿泊施設の建設、ゴルフ場などのレジャー施設の開発などが進み、結果として後のバブルの発生につながっていく。一方、金融情勢は世界的な金利自由化の進展に伴い、1980年ごろから譲渡性貯金(NCD)や自由金利型定期貯金(MMC)、市場金利連動型大口定期貯金などの自由金利商品が次々と登場し、調達コストの上昇からJAでは資金運用力の強化が喫緊の課題とされ、不動産開発業者などへの融資が拡大し、バブル経済に巻き込まれていく。やがてバブル崩壊とともにこれらの多くが不良債権化し、最終的には2002年4月、全国支援を受けながら県下27JAが合併して県単一JA(JAおきなわ)発足へと時代は流れていく。本土復帰から30年後のことである。
合併当初は信用事業再構築計画のもと経営改善に注力してきた。特に自己資本比率が6.21%とJAバンクが示す健全性の目安である8%を下回っていたことから、JAバンクから融資規制が課され、組合員から多くの不満が寄せられていたこともあり、まずは自己資本比率を早期に8%に引き上げることが急務の課題であった。そのため、役職員増資をはじめ自己資本に組み入れられる後配出資や劣後ローンなどを取り入れて2年後には8%をクリアした。同時に経営健全化に向けては店舗統廃合や要員削減を実施したが、これについても組合員や職員から不満が続出し、理解を得るのに非常に苦労した。
当初の5年間が経過すると経営もかなり安定してきて、これまでの「縮小均衡」から今後は事業拡大に転じていくとの意思を込めて、新たな中期計画ではサブタイトルを「テイクオフ・プラン」とした。未来に向けての「離陸」である。その典型がファーマーズマーケット。合併初年度の糸満ファーマーズを皮切りに毎年のように各地に建設して、今や11店舗で70億円を超えるほどの事業規模に成長している。
また、生活事業にも力を入れ、燃料関係では給油所事業であるJA-SSを子会社化し、ガスとともに事業量も年々拡大しており、全国的にも高い評価を受けている。介護事業も北部、中部、南部に新たに介護施設を展開し、葬祭事業も中部と南部、宮古でセレモニーホールを建設した。農業面だけでなく生活事業も整備することで組合員の生産活動から暮らしまですべてを応援する体制がこの20年でほぼ出来上がりつつある。
根本から協同組合を見つめ直そう
県単一JAのメリットは、「必要なもの(ヒト・モノ・カネ)を、必要なだけ(量)、必要な場所に(地域)」投資できるという点にあり、合併前は地域における単協の経営体力に応じた投資しかできなかったが、県単一JAになったことで県下すべての地域、組合員に対して公平な投資ができるようになった。特に沖縄県では多くの離島を抱えており、JAおきなわではこうした離島に対してもライフラインとして支店や施設を展開しており、地域の住民生活や農業生産を支えてきた。ところが近年、そうした地域では都市部への人の移動が激しく、現在の厳しい経営環境ではこうした支店の維持が難しくなってきている。加えてJAでは金融店舗の他にも製糖工場や家畜市場、生活店舗や給油所の運営も行っており、離島にとってJAはなくてはならない存在となっているが、こうした離島における施設の健全運営を行っていくうえでは、国や県、市町村の協力がどうしても必要になってくる。
国も国家安全保障の観点から、沖縄県における広大な海域に点在する多数の離島が担う重要な役割について改めて認識するとともに、経済発展の観点からは、沖縄県がアジアとの地理的近接性や豊かな海洋環境等の優位性を有し、これらが我が国全体の発展を牽引し得る極めて大きな可能性を秘めているとすれば、離島農業振興法などの法整備や離島に対する予算措置にもっと前向きに取り組むことになるだろう。
また近年、さとうきびやパインアップルなどの制度品目も様々な課題が生じており、制度が十分機能していない実態が浮き彫りになっている。さとうきびは分蜜糖(白糖原料)と含蜜糖(黒糖)に区分され、含蜜糖は主に小さい離島で栽培されている。そこではJAや企業が運営する製糖工場に対して国が経営支援する制度があるが、増産が続くと黒糖の在庫が増えて製糖工場の経営が厳しくなるという問題が生じている。パインにしても輸入自由化(1990年)への対応として関税割当制度(TQ制度)が導入されたが、実際には加工用パインは1989年の30,700tから自由化後の90年には25,000tに減少し、2003年に初めて5,000tを切るとその後は3,000t、2,000tと減少し、昨年は1,700tまで落ち込んでいる。
復帰後に制定された様々な制度が今や制度疲労を起こしており、本土復帰50年を契機に今後、こうした制度の総点検と実態に合わせた新たな制度の創設が急ぎ必要である。
独立国から中国との主従関係、その後の日本の支配、戦後の米国支配、さらに日本への復帰と時代に翻弄され続けた沖縄。それでも必死に文化や歴史を重んじながら独自の道を探り続けた沖縄。そして本土復帰50年を迎えた今、今後の沖縄はどこに進んでいくのか。さらに県単一JA発足から20年を迎えたJAおきなわの今後の姿は。未来のことは誰にもわからないが、大きな節目を迎えている今こそ、協同組合や農協の機能、役割とその存在意義について根本的に見直す契機にしたい。
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