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JAの活動:築こう人に優しい協同社会

確かな産地維持に先人の意志 JAみっかび 井口義朗組合長に聞く(2)【築こう人に優しい協同社会】2022年6月15日

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世界一の規模を誇るのミカン選果場世界一の規模を誇るのミカン選果場

三つの心構えに添い

――ミカン経営にはどのような問題がありますか。また、どのような地域農業のビジョンを描いていますか。

これまでのJAの産地づくりは大規模経営も小規模経営も一緒にした護送船団方式でしたが、これからは、大・中・小規模で3区分して指導していこうと考えています。これは差別ではなく、経営パターンごとにカテゴリー化することです。

国は農業の企業化、法人化をいうが、ミカンは、栽培の最終段階である摘果、収穫が手作業になり、規模拡大は難しい品目です。理想の産地づくりは、中間層の生産者をいかにしてもうけ、長く経営を続けてもらうようにするかです。中間層がもうかると、その上の層はもっともうかり、それ以下の人は自然に卒農していくことになります。

来年度昨年度から約80億円かけた、ミカン選果場が本格稼働しました。日量500tを処理できる世界最大級の選果場です。これによって、もう少しミカンが増やせるのではとの思いが組合員から伝わっています。もうひと踏ん張り頑張ってもらえると期待しています。

JAみっかびのミカン販売は95%が市場出荷です。時代の変化に合わせ、直販率を増やす方針ですが、基本べースは市場です。農家数の減少を規模拡大で補うことも考えられますが、少数の大規模農家で産地を維持していくことは柑橘では大変難しいと思います。従って産地を維持するためには、もっとも数の多い中間層のミカン農家をどうするかがポイントです。

ミカンは販売量の3%、5%を1万円で売ってもだめです。4割が100円アップすると全体の販売高が大きくなります。10ha以上の大規模経営を1人や2人増やしても産地は持続できません。それが三ヶ日のミカンです。千疋屋さんで扱ってもらえるような超ブランドは目指せませんが、三ヶ日のミカンは万人に広く食してもらえるよう努力していきます。

私は、ミカン農家は"自由人"だと考えています。ほかの作物のように絶対に今日これをしなければという作業も少なく、誰からも指示されず、時間は自由に使えます。昭和53(1978)年頃、キロ40円の安値のときもあったが、今は200~250円で安定しています。必要とする収入を決めると、必要な面積が割り出せるのがミカン経営の特徴です。

農協の事業分量は、平均経済活動量と組合員数、それに利用率の積で決まります。これから人口が減ると経営は厳しくなります。それを防ぐには、パレートの法則(物事の結果のうち8割は、2割の要素によってもたらされるという法則)にある2割の中核となる組合員を、いかに3、4割まで拡大するかが重要です。それには時間がかかります。組合員に寄り添い、信頼される職員をいかに育てるか、つまり人材の育成がポイントです。

JAでは「あいさつ」、「きれい」、「雰囲気」の三つの心構えを大切にしています。あいさつは当然ながら、笑顔で接する職員間、明るい職場のもと、組合員の財産であるJAの施設をきれい大切にすることです。よい会社や企業にはこの三つがあります。

新情報システム構築

――JA自己改革では「地域になくてはならないJA」をめざしていますが。

JAみっかびは、ずっとそれをめざしてきました。これからも続けていきます。ネットの世界は怖い。以前は組合員に情報がなく、職員が出向いて伝えていました。しかし、いまは家に入れてもらえないこともあります。

そこでいま、スマホによる情報システムを構築中で、来年3月の稼動をめざし、作業を進めているところです。家族も参加でき、パレートの法則の「2」を増やす基礎になります。

営農指導や事業分量による還元を含めると、品物が高い安いの問題ではないはず。JAの役割に自信を持ち、「三つの心構え」を大事にして自信もち、時間をかけて若い人を説得していくことが大事だと思います。

JAと両輪で産地維持

<清水一則 三ヶ日町柑橘出荷組合組合長の話>

清水一則・三ヶ日柑橘出荷組合組合長清水一則・三ヶ日柑橘出荷組合組合長

5.5haでミカンを栽培しています。ミカン農家として3代目です。ハウスミカンやキウイフルーツを栽培したこともあるが、コストに見合う価格が確保できないことなどから、今はミカンに絞っています。10a3tの収量で、キロ単価250円が目標。この数年、比較的天候にも恵まれて、安定した価格で販売しています。

出荷組合では、三ヶ日のミカン産業をどうやって維持するかということが話題になるが、経営上、いま一番の問題は労働力の確保です。特に摘果と収穫作業の労力確保が難しく、経営上のネックになっています。それと肥料、農薬などの生産資材の高騰を心配しています。

出荷組合のメンバーは現在750人、かつて1000人以上いたが、生産者の高齢化が進むなかで、産地の将来を考えると、新規就農者の確保が重要になると思います。今年、町外から2人が就農を希望してきました。出荷組合としても、さまざまな面で就農支援していく方針です。出荷組合には青年部(40歳以下)の部員が29人以上います。市場キャンペーンやせり人との情報交換、勉強会など活発に活動しており、これからも産地を引っぱって行く戦力として期待しています。

組合員の将来をシュミレーションすると、500人が3ha以上の経営を維持できそうです。新しくできた選果場も本格稼働しました。出荷組合と農協は日本一のミカン産地をけん引する車の両輪として、力を合わせて産地を盛り上げていきたい。

〈JAの概要〉
静岡県浜松市三ヶ日町をエリアとするJA。1961(昭和36)年、東浜名農協と合併して現在に至る。
▽組合員数=2665人(うち正組合員1582人)
▽貯金残高=679億171万円
▽長期共済保有契約高=2216億円
▽購買品取扱高=32億8070万円
▽販売取扱高= 97億5833万円
▽職員数=147人
(令和2年度末)

確かな産地維持に先人の意志 JAみっかび 井口義明組合長に聞く(1)

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