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JAの活動:農業復興元年

【農業復興元年】農の多様な役割を広く発信 消費者と課題共有を 協同組合の真価発揮へ JAトップ座談会(2)2023年1月5日

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(出席者)
JA秋田しんせい代表理事組合長 小松忠彦氏
JA茨城県中央会代表理事会長 八木岡努氏
JA福岡市代表理事組合長 鬼木晴人氏
(司会)文芸アナリスト 大金義昭氏

【農業復興元年】農の多様な役割を広く発信 消費者と課題共有を 協同組合の真価発揮へ JAトップ座談会(1)より続く

情報共有で担い手育成 DXも積極的に

八木岡 情報発信はスタジオ「クオリテLab(クオリテラボ)」を開設し、JAグループ茨城の公式ユーチューブチャンネルも開設しました。登録者は最近1200人を超えました。フェイスブックなども使い、たとえば午前中に組合長会議があれば、その概要を発信して組合員と話題を共有できるようにしています。こうしたツールを活用し、あらかじめ情報を共有しておけば訪問時には、こちらから説明するのではなく、訪ねた相手の意見を聞く時間がしっかり持てるということが分かりました。そこが大事だなと思っています。

鬼木 生産者のDXも進めたいですね。たとえば防除履歴は生産者がスマホから届けを出します。今までは紙ベースでしたから、何日分かをまとめて提出し、それを職員がノートなどに転記して生産者に戻すことをしていました。確かにそれで対話の機会が増えるという面がありますが、対応が遅くなる。適正でない農薬の使い方をしていたことが分かっても、すでに出荷していたということにもなりかねません。そうならないように、一日ごとにスマホで送信してもらいます。直売所も自分の出荷した農産物がどれだけ売れているかをスマホで分かるシステムを導入しています。

小松 私たちもユーチューブで「農業チャレンジセミナー」などの動画を配信しています。たとえば、これまで管内では果樹栽培があまり盛んではなかったので、シャインマスカットの栽培講習会などを配信しています。そうした発信で、後継者がいないリンゴ農家に「地域おこし協力隊」として他の地域からやって来たカップルが3年後にはそのリンゴ農家を継ぐといった動きも出てきました。

デジタル化ということでいえば、肥料の注文もウェブでできるようにしています。実は資材店舗は月に1回、棚卸で休まなければいけないのが現状です。これを変える一環として、商系の資材店舗との相互連携も進めています。それらの店にはJAの農産物販売コーナーも設けてもらっています。何事も自分たちで自己完結しようと考えず、地域の農家にサービスを提供できる最良の環境や条件を大胆に整えていく考えが基本にあっていいのではないかと思っています。

大金 購買店舗での商系との連携は、JA水戸が先進的ですね。

八木岡 「しんしん」という地域の販売店と、お互いに「ウィン・ウィン」になればということからJAの資材店舗で提携しています。これによって2000点だった取扱商品数が2万点になりました。営業時間も長く、休日も年5日となっています。

JAに「多様なつながり」と「今までを変える」役割

大金 お話を聞いていて、JAには地域のなかでの多様な「つながり」を広く太くしていく役割があるのだなとつくづく思いました。

小松 「つながる」というのが2023年のいちばんのキーワードではないかと思いますね。

大金 それは何より「多様性」を大事にするということでもありますよね。

小松 私は同時に「今までを変える」とも唱えています。

大金 「チェンジ」ですか。米国ではオバマさんが「イエス・ウィ・キャン」という合言葉を拡げました。

八木岡 農業生産では「作り方を変える」ということだと思いますよね。「みどりの食料システム戦略」では有機面積の割合を25%に引き上げようと提示していますが、それには価値観や考え方を大幅に転換していかなければなりません。

これを「大変だ」という意識で取り組むのではなく、たとえば緑肥はイコール、レンゲソウなどの景観作物でもあるわけですから、地域の人々にも喜んでもらえるはずです。有機農畜産物を増やせば学校給食に供給していこうということにもなり、消費者にも農畜産物の価値を改めて考えてもらい、意識を変えてもらうことにもなります。

作る側の努力も必要ですが、それが楽しみに変わるような作り方に変えていくと、食べる人や使ってくれる人の意識も間違いなく変わって喜んで買ってもらえると思うのです。

「食と農」の課題 幅広く共有を

大金 消費者と「食と農」の課題を共有することが、大きなテーマですね。

八木岡 経済のグローバル化や「格差の拡大」などもあり、これまで食べ物は安ければいいという人びとがどうしても多かったと思うのですが、これからはどのようにして作った農畜産物なのか、プロセスが大事になると思います。そしてそれを食べて育った子どもたちが大人になったときに、食べ物に対する価値観や選び方が自分のなかで変わっていくと思うのです。地場の農畜産物を学校に供給すれば、それが教材にもなるということですね。

鬼木 「作り方を変える」という点で、私たちの生産部会では県版GAPに挑み、これまでに五つの品目で取得しています。農家の5割以上がGAPを取得してほしいと私は考えています。取得者が増えないと価格にも反映されないからです。

消費者にもGAPという制度があるということを広く知ってもらい、「買うならこちらを買おう」という意識に変わってもらうように発信していきたいと考えています。

ともあれ、将来は日本に食料が入ってこなくなることもあるのだということを念頭に置く必要がありますね。穀物はすでに「戦略物資」になっています。野菜も価格低迷で韓国からの輸入が少なくなりました。韓国の国内価格のほうが高いから、輸出する意味がない。中国からの輸入も将来はどうなるか。「食料争奪戦」の様相が濃くなっていることを広く国民のみなさんにも認識してもらいたいと思います。

八木岡 穀物や野菜の輸入に関しては、「種」の問題もあります。種子まで加えれば自給率は8%です。私はJAグループとして種の開発やジーンバンク(種の銀行)などを農研機構や大学などと連携し、種子の確保を図ることが農業団体としての「1丁目1番地」だと考えています。

鬼木 その通り、今のうちにやっておかなければなりません。

"共に歩む"旗幟鮮明に

八木岡 国内で種子の生産をもっと増やさなければいけませんし、在来種の保護も必要です。まずは「種」から始めよというのが、「農業復興元年」の最大の課題ではないでしょうか。

鬼木 種子の問題もTPP交渉からですよ。TPPを締結して、その後、国内の農業はどうなったのか。商工業の分野も含めてしっかり総括するべきです。昨今はナショナリズムが強まり、輸出をストップする国も出てきています。私はやはり、米は守っていかなければならない穀物だと考えています。

大金 農業を持続可能にしていくにはどうすればいいのか。これは私たちがこの国でどのように生きていくのかという問題でもありますね。

小松 私は昨年、「寄り添い、ともに考え、ともに行動し、ともに喜び合う」ということを強調してきました。SDGsのなかには「誰一人取り残さない」という言葉がありますが、そういった意識を農業関係者だけでなく、地域の多様な人びとと一緒になって考え、行動して喜びを分かち合うことができるように取り組むことを職員には強調してきました。それがJAに入ってよかったという職員の誇りにも「つながる」と思っています。

大金 「格差と分断」が深まるなかで、協同組合の旗幟(きし)を鮮明にする具体的な切り口をいくつかお聞かせいただきました。地域での「つながり」を求め、各地で「こども食堂」などの取り組みも広がっていますが、何よりJA同士の連携はもとより、協同組合間提携が強く求められているということですね。ありがとうございました。

【座談会を終えて】

文芸アナリスト 大金義昭氏文芸アナリスト
大金義昭氏

日本海や太平洋、玄界灘を望む地域で奮闘しておられる出席者のみなさん。日ごろの志を開陳して率直な語らいが、JAの「つながる」「変える」清新な底力を感じさせてくれた。「泣いても笑っても同じなら、笑えるように共に頑張ろうじゃないか」という心意気に触れることができた新春の出会いであった。(大金)

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