JAの活動:第43回農協人文化賞
【第43回農協人文化賞】一般文化部門 島根県農協出雲地区本部常務理事本部長 珍部誠氏 人脈と改革が我が人生2023年2月7日
島根県農協出雲地区本部常務理事本部長
珍部誠氏
私の農協人としての歩みは、平成元(1989)年に出雲市農業協同組合に入組したことから始まりました。全国的にもあまり例のないJAが運営するスーパー「ラピタ」の店舗リニューアルに伴い奔走した日々がよみがえります。販売促進担当として、「地域密着の店舗運営」を常に追求し、新鮮な地元食材の提供はもとより、新たな地域活性化策として土曜夜市や芸能人の招待などの斬新な企画に取り組みました。その後、スポーツクラブの立ち上げや屋上でのビアガーデンの開催など、老若男女が集い笑顔あふれる店舗作りに知恵を絞りました。
平成11(1999)年に、全中マスターコースに第1期生として派遣され、農協監査士資格の取得とビジネス経営について学ばせて頂きました。組合員の高齢化が進むJA界においては、現状では将来性が望めないと感じ「JAと若者の架け橋となれる事業はないか」日々頭を悩ませていました。講義でコンビニエンス事業経営が目に留まり、修了論文のテーマとして研究を進め、先進事例先を訪問し、取り組みに魅了されたことを思い出します。
平成12(2000)年、マスターコースから帰任すると企画管理課係長として様々な業務改革を行いました。毎年、事業や経営状況を説明する「組合員大会」では、簡潔で分かりやすいDVD動画を作成し、組合員にとって参画しやすい環境づくりに取り組みました。
また、職員の役割や評価基準を明確化した「役割人事考課制度」の導入や職員が新規事業等を提案する「職員提案制度」の導入に取り組みました。目まぐるしく変化する社会情勢の中、時代の潮流に乗る戦略を立てるため、経営体質の改善や新たな試みにチャレンジしました。
平成16(2004)年、以前より役員に進言していた「コンビニエンス事業」について、私の熱意が勝り、ついに役員からの承認を頂き、総合企画室次長となり準備を始めました。当時はJAとコンビニ企業との連携事例があまりなく、交渉は困難を極めましたが、粘り強く何度もアプローチを重ねることで、契約締結にこぎつけました。
平成17(05)年に関連会社を設立し、統括本部本部長に就任、満を持して同年6月に第1号店をオープンさせ、その後わずか1年4カ月で10店舗を出店しましたので、度肝を抜かれた方もいらっしゃったと思います。
コンビニエンス事業の1号点オープン
この取り組みは、若者や地域住民がもつJAのイメージを大きく変え、疎遠だった若者の認知度も上がり、当初の目的であった次世代層とJAの絆作りにも寄与できたと感じます。その後、出雲の成功事例をもとに全国的な展開へ発展し、後のJAグループとファミリーマートとの資本提携、国産農産物の販売強化へもつながったと思います。
平成18(06)年には、萬代宣雄組合長(当時)とともに「新世紀JA研究会」の立ち上げに携わりました。全国の組合長との意見交換や交流を主目的とし、JAにおける課題解決に向け、熱い議論を交わせる機会の創出に尽力しました。
地域においては、「JA」と「行政」「商工会」との定期的な交流会を開催し、地域の発展・活性化に向けた意見交換など、全国でも珍しい地域連携の輪を構築しました。こういった貴重な機会を通じて、協同組合の特質である良好な人間関係を構築し、その人脈が農協人としての礎となっています。
平成22(2010)年からは、島根県JAグループ統合研究会へ出向となり、平成27(15)年3月のJAしまね誕生まで、経済・生活グループの次長として数々の課題に向き合ってきました。島根県は東西に230km、隠岐の島も含めると県内に11のJAがあり、組合員の生活に直結する経済・生活部門をまとめ上げることは想像を絶する業務でした。
平成27(2015)年の統合後は、改革推進部長として機構改革、業務改革に着手しました。事務集約化のため共済事務センターを新設、テレビ会議システム導入による事務効率化や費用圧縮など統合メリット創出に取り組みました。
その他、好奇心旺盛な性格からあらゆる部分を詮索し、電力会社統一による経費削減、太陽光発電設置による収益化、電子決済システム導入、ペーパーレス化など、経営基盤の強化にも取り組みました。
令和元(2019)年に出雲地区本部常務理事副本部長に就任し、令和4(22)年に常務理事本部長を拝命いたしました。
近年では、働き方改革として、店舗職員や非正規職員の人事制度を見直し、職員のモチベーションアップや処遇改善など、職場環境を整え事業生産性向上に努めました。また、コロナ禍における新たな生活様式に向けて、非対面ツールとして事業アプリの導入やライン会員の獲得など、新たなサービスに取り組んでいます。
以上のように、我が農協人生においては、「人脈」と「改革心」が頼みの綱であったと感じます。人と人とのつながりにより大きく成長させて頂き、先見性をもって迅速に対応した行動と強い意志に結果も踊らされてついてきたのではと感じます。
これからも名誉ある農協人文化賞の受賞を励みに、これまで多くの皆様に支えて頂いた事に感謝し、少しでも恩返しができるよう更なる飛躍を目指して日々精進して参ります。
JAを取り巻く環境はますます厳しくなりますが、組合員・地域の皆様との対話を大切にしながら、農業振興・地域活性化を柱とした「JA自己改革」を実践し、地域になくてはならないJAを目指して取り組んで参ります。今後とも、より一層のご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げ、受賞のごあいさつとさせて頂きます。
【略歴】
ちんべ・まこと 昭和40(1965)年10月生まれ。平成元(89)年出雲市農業協同組合入組。平成11(99)年全国農業協同組合中央会(JA経営マスターコース)出向。平成16(2004)年いずも農業協同組合総合企画室次長(コンビニエンスストア準備室長)。平成17(05)年(有)JAいずもアグリマート出向(統括本部本部長)。平成19(07)年いずも農業協同組合生活部次長。平成22(10)年島根県JAグループ統合研究会事務局出向。平成27(15)年島根県農業協同組合改革推進部部長。令和元(19)年同出雲地区本部常務理事副本部長。令和4(22)年同常務理事本部長、現在に至る。
【推薦の言葉】
旺盛な好奇心で改革
珍部氏は、平成元年入組してすぐにJAの大型総合スーパー「ラピタ」への建て替えに携わる。氏の豊かな発想力で、土曜夜市の開催、芸能人やスポーツ選手の招待、スポーツクラブの結成などで集客を増やした。
また総合企画室次長としてコンビニエンスストアとの連携に関わり、2年間で10店舗出店。JAに対する若者や地域住民のイメージを大きく変えた。その後、コンビニとの連携は全国展開となり、JAグループとファミリーマートとの資本提携、そして国産農産物の販売強化へつながる。また、平成18年には萬代宜雄組合長のもと、全国の常勤役員の相互研鑽と情報交流の場である「新世紀JA研究会」の立ち上げを裏方として支えた。
平成22年からは、島根県JAグループ統合研究会事務局へ出向となり、平成27年の島根県農協の誕生まで、経済・生活グループの次長として、現在の統合JAの基礎づくりに尽力した。
【谷口信和選考委員長の講評】
珍部氏氏は農協入組後の最初の仕事でJAの大型総合スーパーの店舗立替を担当したことを出発点として、若者などの集客力を高めるための多様な企画に取り組んだり、コンビニ・ファミリーマートを2年間で10店舗出店させたほか、JAしまね誕生を準備するとともに、統合後の改革推進部長として事務集約化・テレビ会議導入などの機構・業務改革を実施して、次々と農協に新しい風を吹き込み継続的な改革を支えています。新農協人の誕生といえるでしょう。
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