JAの活動:第43回農協人文化賞
【第43回農協人文化賞】経済事業部門 鹿児島県経済連経営管理委員会会長 柚木弘文氏 協同組合の使命根底に2023年2月8日
鹿児島県経済連経営管理委員会会長 柚木弘文氏
「地域協同活動の充実により地域にある資産(人・もの・金・知恵)をJAに結集し、その果実を地域に再分配することこそ、協同組合の使命である」
JA南さつまの組合長時代、幾度となく組合員・農協職員に発信していました。この言葉は私の農協運動の根底にあるものです。
私の農協運動は、昭和56(1981)年4月に旧知覧町農協(現JA南さつま)へ入組したことから始まりました。知覧町には、本県ブランド品目の「知覧茶」があります。当時は県茶市場が開設されて約10年、荒茶の取扱量も右肩上がりの時代。茶業課に配属された私は、夜遅くまでお茶のブレンド作業などに取り組んでいました。家に帰り風呂に入れば、浴槽が茶色になるくらい汚れながら頑張った当時を、お茶の繁忙期の春先になると今でも思い出します。
企画部門を担当する頃、高齢化に伴う医療費の財政問題を背景に介護保険法が制定されました。周りを見渡すと意外と元気な高齢者が、少量ですが様々な野菜などを多く精力的に作られていました。そこで「介護に頼らない老後生活」をテーマに産直部会「百笑クラブ」を設立しました。市場ではロット販売が主体のなか、地産地消や高齢者にできる生きがいを感じる農業など様々なニーズが結びつき、現在も継続している取り組みです。
農協職員として様々な業務を経験してきましたが、変わらず続いている私の日課は、組合員とのコミュニケーションです。参事の頃は、130ほどの部会の座談会などに毎日のように顔を出していました。
組合員が何を思い、何を望み、現場では何が起きているのか。営農指導員自ら課題を見つけ、実証し、組合員へフィードバックし生産性の向上を図る取り組みや、県内JAの先駆けとなった移動購買車の導入による買い物弱者対策、「TEAMみなみ姫」の結成による女性目線での商品開発や、農畜産物の販売促進によるPR活動の強化、そして「JA津軽みらい」「JAあわじ島」との交流協定による農畜産物の相互販売や情報交換、災害時支援などの連携による地域農業の活性化、無料職業紹介所の開設による組合員の農繁期の労働力不足解消、JA―SSへのLINE会員制導入によるリアルタイムな情報提供など、様々なことに取り組みました。それは現場に耳を傾け、声を聴き、課題に向き合うという繰り返しを積み重ねた結果にほかなりません。
「地域協同活動の充実により地域にある資産(人・もの・金・知恵)をJAに結集し、その果実を地域に再分配することこそ、協同組合の使命である」
冒頭で述べたように、組合長時代、この言葉を幾度となく組合員・農協職員に発信していました。その思いは少なからず伝わり、労働生産性の向上や自己資本の増強、自己改革の実践を通じてJAの経営健全化、そして信頼される強固なJA経営基盤づくりに地域一体となって取り組めたと自負しております。
平成29(2017)年6月からJA鹿児島県信連の経営管理委員会会長、令和2(2020)年6月からは、JA鹿児島県経済連の経営管理委員会会長に就任し、現在に至ります。
本会直売所「おいどん市場与次郎館」の売り場面積を約2倍へ拡充し、令和4年度、取扱高11億5000万円を掲げ、現在約2500人が出荷者に登録されていますが、生産者と消費者の思いをつなぐ場として、さらに協同の輪を広げていきます。
農作業の省力化や労働力不足軽減対策として、ドローンによる受託防除事業を令和3(21)年度には450haまで拡大しました。令和4(22)年度、散布作業用ドローン11機、センシング用3機、合計14機を導入、オペレーター19人、整備士5人の運用体制で、受託防除面積700haを目標に掲げています。
令和4年7月 耕畜連携による堆肥入り低コスト肥料発表会
また、令和4(22)年7月には肥料価格の高騰に対し、畜産県鹿児島の地域資源である堆肥をペレット化し化学肥料と配合した品目や、堆肥を化学肥料と混合し粒状にした品目を新開発し、低コスト肥料の供給ができました。10月末現在、茶用2品目・園芸用2品目・果樹用2品目を開発し、1400tを超える供給を行っており、さらなる作物別肥料や汎用性の高い新肥料を開発していきます。
さらに、令和4(22)年10月に本県で開かれた第12回全国和牛能力共進会では、9部門中6部門で首席獲得に加え、種牛の部で最高賞となる内閣総理大臣賞を受賞しました。この素晴らしい結果は、農家一人ひとりの努力の歴史であると共に、関係機関含め鹿児島県ワンチームとして取り組んだ成果であり、鹿児島黒牛のPR、販売促進につなげていきます。
◇
農協運動に生きて40年が過ぎました。今の私の使命は、国際化の進展に伴う農政課題に現場の声を反映させ、組合員の経済的地位の向上をすすめ、地域のよりどころとしての協同組合でありつづけるため、何をするかです。そのためには、常に現場目線での「変革」と、農協組織の明るく、働きがいがあり、コンプライアンス意識の高い職場づくりによる「秩序」、そして農協職員による「実践」が必要不可欠です。これからも日々、「変革」「秩序」「実践」を通じて、農協運動に尽力してまいります。
【略歴】
ゆのき・ひろふみ 昭和30(1955)年9月生まれ。昭和54(1979)年鹿児島経済大学経済学部経営学科卒。昭和56(81)年知覧町農業協同組合入組、平成26(2014)年南さつま農業協同組合代表理事組合長、平成29(17)年鹿児島県信用農業協同組合連合会経営管理委員会会長、令和2(20)年鹿児島県経済農業協同組合連合会経営管理委員会会長
【推薦の言葉】
新事業で地域活性化
平成26 年にJA南さつま組合長に就任して組織・財務・事業基盤の強化に向けた部門採算性の確立、労働生産性の向上や内部留保、増資運動等による自己資本の増強に努めた。またJAグループ鹿児島と一体となった自己改革を着実に進め、経営の健全化に実績をあげた。
農業振興では、農業者の所得拡大、地域の活性化を目的に、JA南さつまが目指す姿として「食と農を基軸として地域に根差した協同組合」を掲げ、さまざま施策を講じてきた。
特に地域まるごと売り込み隊「TEAMみなみ姫」による農畜産物の販売促進・PR活動、さらには移動購買車の導入による買い物弱者の支援など、常に地域に根差した事業に挑戦している。
また、鹿児島県信連会長、同経済連会長として、農政課題に現場の声を反映させて農家・組合員の経済的地位を向上させるとともに、地域の拠り所としてのJAをめざし、各事業の強化に取り組んでいる。
【谷口信和選考委員長の講評】
柚木氏は自らの信条「地域協同活動の充実により地域にある資産(人・もの・金・知恵)をJAに結集し、その果実を地域に再分配することこそ、協同組合の使命である」に基づいて常に組合員との対話を重視して活動してきました。単協時代には産直部会「百笑クラブ」設立、「TEAMみなみ姫」による商品開発、経済連では11.5億円をめざす「おいどん市場与次郎館」、ペレット化堆肥の開発、2022年和牛全共での活躍などにその成果が現れています。
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