JAの活動:第43回農協人文化賞
【第43回農協人文化賞】信用事業部門 佐賀・唐津農協組合長 堤武彦氏 「地域とともに」心掛け2023年2月10日
佐賀・唐津農協代表理事組合長 堤武彦氏
唐津農協は、佐賀県北西部に位置し、玄界灘に面し東松浦半島と糸島半島に挟まれた唐津湾に注ぐ松浦川の河口一帯を市域とし、日本三大松原の一つ「虹の松原」や「唐津くんち」などで知られる唐津市と、玄海町の1市1町で構成されており、平成18(2006)年に隣接する4JAによる合併農協であります。
令和4(2022)年3月末の正組合員数5122人、准組合員数1万3301人の都市部と農村部の調和のとれた地域に存在しています。合併後、販売品取扱高333億円をめざして、畜産(127億円、佐賀牛等)をはじめハウスミカン等(59億円)の販売高は全国に誇れる生産農協と自負しております。
私は、昭和45(1970)年に高校を卒業後、稼業の農業(水稲1ha・葉タバコ1ha・乳牛10頭)複合農業に就農し、その後、酪農経営を選択拡大し搾乳牛50頭規模まで拡大致しました。JAには平成7(1995)年5月唐津市農業協同組合監事に就任、平成10(98)年5月からは同組合の非常勤理事として平成18(2006)年3月まで組合運営に参加いたしました。
また、平成15(03)年より唐津市議会議員として4期在任させていただき、違う立ち位置で地域と地域農業の発展に取り組みました。平成22(10)年6月からは唐津農業協同組合(平成18=06=年4月4JA合併)の理事に就任し、平成28(16)年6月から代表理事組合長に就任しています。
信用事業においては、日銀のマイナス金利政策の長期化により、資金利鞘は年々目減りし、収益悪化が予想されています。そこで、相談機能充実と出向く体制の強化を図り、組合員・利用者のニーズにあった商品(貯金・ローン・投資信託等)の提供に努め、地域との「つながり」を意識した金融機関としての役割を担っております。
また、組合員・利用者の利便性確保のため、移動金融店舗車の営業と年金宅配サービスを行っています。なお、年金口座獲得はJA貯金獲得の大きな要であることから、令和3(2021)年5月に年金相続相談センターをオープンし、専門家(司法書士・税理士・社会保険労務士)による相談会を定期的に開催するなど、多様化する相談に応じることで信頼を獲得し、年金口座獲得と相続相談による顧客の囲い込みに努めております。
貸出金は、農業者の経営支援・地域農業振興を積極的に行うため、農業制度資金をはじめJA独自の無担保・無保証の「農業サポート資金」や、行政からの利子補給、保証料助成がある「玄海1.2.3資金」等の資金手当てを行っています。また、農業融資担当者が農業法人へ積極的な訪問活動を行い、運転資金の呼び戻しにつなげることができ、その結果、貸出金全体に占める農業向け融資シェア率は5年連続で30%以上を維持しています。
また、農外事業資金にも力を入れ、併せて住宅ローンをメインとした提案活動により、貸出金残高は456億円、うち住宅ローン残高259億円の実績となり、貸出金残高維持を支える要因の一つとなりました。組合員のニーズも多様化しており、地域密着を図っていくなかで専門性の高い知識や密度の濃い訪問活動が職員に求められるため、金融事業に携わる職員へFP資格取得を推奨し、資格手当を支給しています。
また、ローンセンター在籍の職員が中心となって、日曜ローン相談会を行っています。JAの信用事業・共済事業の連携強化と利用者拡大のため、令和3(2021)年度より窓口担当者を総務金融渉外係、金融専任渉外とLAを廃止し、支所の金融貸付担当者・窓口渉外係・金融共済複合渉外係と連携を取り合いながら推進活動を行うことができるようになりました。
あぐり親子スクール開校式(芋苗植え) (2022 年6 月)
経営基盤強化においては、総合農協として存続することを多くの組合員が強く希望されていることと、各地区・地域の意見が組合運営に反映(組合員のよりどころとして相談員が常駐する支所プラザの設置)されるよう考慮しつつ、効率化をすすめることを丁寧に説明したことで令和元(2019)年に17支所から10支所・7支所プラザへ支所統合を行い、持続可能な経営態勢の確立を図ったところです。
また、支所の再編に伴い、理事定数25人から20人に見直しも行いました。なお、経済情勢や地域環境の変化に対応した業務活動を適切に行い、総合事業の強みを生かしつつ、将来にわたり安定的な事業利益の確保と自己資本の充実にも取り組むこととしています。
一方早期警戒制度を見据えた経営の在り方を模索し、他のJAに先駆けて電子申請決済、web会議、ITを駆使した業務のデジタル化を取り入れ、事務の効率化を一層早く進めていく事でガバナンス強化に努めます。
特に重要となるリスク管理体制を充実させ、総合的なリスクマネジメント経営を念頭に信用共済事業依存経営からの脱却を図ります。営農経済部門の成長・経営効率化(DX改革)進めることで、将来の収益性・健全性を確保し、地域農業の発展と組合員の農業所得向上を図り、豊かでくらしやすい地域社会の実現に貢献し、組合員・地域利用者から信頼・信用されるJAからつを目指しています。
【略歴】
つつみ・たけひこ 昭和27(1952)年1 月生まれ。昭和45(70)年3 月佐賀県立唐津農業高等学校卒業。昭和45(70)年4 月農業に従事(水稲1ha・葉タバコ1ha・乳牛10 頭)、昭和45 年~ 62(87)年JA 青年部活動、平成5(93)年4 月酪農部部会長就任、平成6(94)年4 月生産組合湊地区代表、平成(7 95)年5月唐津市農業協同組合監事、平成10( 98)年5 月同理事、平成15(2003)年5 月唐津市議会議員として4 期在任(平成28 年3 月まで)、平成22(10)年6 月唐津農業協同組合理事、平成28(16)年6 月代表理事組合長、現在に至る。
【推薦の言葉】
金融で地域とつながり
堤氏は昭和45年に就農し、唐津市農協監事に就任後、理事を経て平成28年から代表理事組合長を務めている。JAの金融事業には社会的責任や公共的使命がある。農業・JAを取り巻く環境が厳しくなるなかで、同氏は常識に捕らわれず、マンネリ化を避け、常に新しいことへの挑戦を提唱してきた。
また協同組合の基本理念を大事にしながら、高生産、高収益、高信頼、高満足、高奉仕による、期待と信頼のJAづくりに邁進している。特に信用事業では相談機能の充実と出向く体制を強化し、組合員・利用者のニーズにあった商品を提供するなど、地域とのつながりを意識した金融機関としての役割を発揮した。
さらに組合員・利用者の利便性確保のため、移動金融店舗車の運行と年金宅配サービスを実施。さらに年金相続相談センターを設け、専門家による相談会を定期的に開催するなど、多様化する相談に応じることで信頼を得ている。
【谷口信和選考委員長の講評】
堤氏は農業者と市議会議員の立場から組合長になった後でも常識にとらわれずに常に新しいことに挑戦することを農協の運営でも強調してきました。このため、信用事業では相談機能の充実と出向く体制の強化を通じて組合員ニーズにあった商品の提供に努め、組合員・利用者の利便性向上のために移動金融店舗車の営業と年金宅配サービスを実施しているほか、年金相続相談センターを設置して専門家による相談会を開催しています。
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