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JAの活動:第69回JA全国青年大会

【青年座談会】「自他共楽」の思い壁なし 災害支援で感じた盟友の力 夢は東京で農業五輪(1)2023年3月3日

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JA全国青年大会に合わせて「明日を信じ夢に挑む〜農業・地域・JAに寄せる思い」と題して座談会を企画した。出席者は次世代農業をけん引するJA東京青壮年組織協議会顧問の須藤金一さん(45・東京都三鷹市)とJA栃木青年部連盟監査委員で第3代「農Tuber」の八木澤康之さん(41・栃木県塩谷町)、愛知県西尾市で「愛楽農園はいぼーなす」を経営しJA西三河露地野菜部会長も務めた三上佳之さん(40)の3人。司会は文芸アナリストの大金義昭氏で三者三様の思いを引き出してもらった。

三上佳之さん、須藤金一さん、八木澤康之さん(左から)三上佳之さん、須藤金一さん、八木澤康之さん

【出席者】
JA東京青壮年組織協議会顧問 須藤 金一さん(45)
JA栃木青年部連盟監査委員 八木澤 康之さん(41)
JA西三河露地野菜部会元部会長 三上 佳之さん(40)
司会・文芸アナリスト 大金 義昭氏

生きる根本の食の尊さ実感

大金 若い農業者は今や「絶滅危惧種」と言っていいくらい希少価値が高い。その分、皆さんには限りない可能性があり、お三方はその中心を担っている世代です。そんな皆さんに今日は忌憚(きたん)のない話をうかがいたいと思います。三上さんはどんな経緯で就農したんですか。

三上 佳之さん三上 佳之さん

みかみ・よしゆき 1982年生まれ。愛知県西尾市で「愛楽農園はいぼーなす」を経営、 主要作物はキャベツ(3.5ha)、タマネギ(2.5ha)、イチジク(20a)、ミニトマト(10a)。専従者(妻)1人、正社員1人、パート4人。

三上 「愛楽農園はいぼーなす」を屋号に経営しています。結婚して、愛知県西尾市にある妻の実家に移り住んで18年になります。義父は水稲農家をしており、私はホテルマンなど会社員だったのですが、ある日義父から「一緒に農業やらんか」と言われ、自分が手伝うことで義父が楽になればと就農しました。最初は一緒にやっていたのですが、その後独立しました。タマネギを作っていた(西尾市)吉良町の仲間が「うちの畑でやってみんか」と言ってくれ、新しいチャンスをいただいた。露地でキャベツ、タマネギ、イチジク、ハウスでミニトマトを栽培しています。イチジクでジャムとドライフルーツ、野菜ピクルスも販売しています。

大金 連作障害を回避する仕組みを提案して土地を借りて......。

三上 今はやっていないのですが、「大豆→麦→大豆→麦」と作っていくと畑が痩せてしまいます。キャベツやタマネギを1回挟むことで、次に大豆を作ったときに調子がいい。そこで、麦なり大豆なりを作った後で土地を借り、キャベツなりタマネギなりを1年作った後にお返しする。そういう連携をさせていただいた時もあります。ただ1年きりなので「畑の癖」が分からない。口合わせで借りているものですから、補助金を受けようとしても行政から相手にしてもらえない。

今は、別の人から土地を借りています。収量も良く、行政にも胸を張れるようになりました。土地柄、畑に水をやる畑灌施設がない。できる作物は? と考えた時、キャベツとタマネギ。夏場の収入がないのでイチジクを始めました。

大金 農業が好きなんですね。

三上 はい! これまでいろんな仕事をしてきましたが、農業はやりがいがあり、生きるのに欠かせない食に最初に携わる、誇り高い仕事です。

大金 少林寺拳法も得意だとか?

三上 4段です。少林寺拳法には「自他共楽」の考えが根本にあります。まず自己確立を目指し、自身が幸せになって、もう半分は他人の幸せを願う。そうすればいい「世の中」をつくっていけると。

作物は愛情に応えてくれる

大金 八木澤さんは?

八木澤 康之さん八木澤 康之さん

やぎさわ・やすゆき 1981年生まれ。栃木県塩谷町で義父母、妻とニラ(30a)、水稲(8ha)を生産する。

八木澤 第3代「農Tuber」八木澤康之です! 私ももともとサラリーマンでした。前職の会社を辞めた時、イチゴ農家をしていた同級生から声をかけられ、「赤いルビー」と呼ばれるおいしいイチゴ作りに携わり感動しました。「農業するんだったら農協青年部に入れよ」と言われて入り、子どもたちと田植えや稲刈り、餅つき、食育活動を経験しながら、県農青協の役員になりました。

大金 単位組織の役員を経ずに!?

八木澤 「やりたい!」と言えばできちゃうんです。

須藤 そういうところ多いですね、今は。

八木澤 品目も経営形態も考え方も違う人が集まり、一つのことをする力がすごい。「農Tuber」というJA全青協の企画に応募したら、三井透君(長野県中野市、リンゴ農家)に負けてしまったので、もう一度チャレンジし、「第3代」になれました。

大金 「ニラ愛」を貫いているとか。

八木澤 「奥さん」並みに愛しています(笑)。その頃、毎日違う女の子とお酒を飲んでたのですが、青年部の単組役員から「いい加減に結婚したら」と紹介された人に一目ぼれし、「交際ゼロ日」で結婚を申し込んだのが3年前です。

「実家は」と聞くと「ニラ農家なんだ。ニラってね、刈っても刈っても生えてくる。次に生えるニラはやせ細ってるけど、愛情をもって育てればまた伸びるんだよ」。義父母に教わりながら「奥さん」と1年間やってたら、面白いようにニラって応えてくれる。刈れば水滴が滴り落ちる。ああ、地面から栄養もらってるんだ。愛情をもって育てれば葉幅も広がる。3月が種まきで1年間、何度も刈れます。

大金 スポーツは何かしてた?

八木澤 柔道と剣道を。礼に始まり礼に終わる。いつも「感謝」の気持ちです。

300年続く植木の継承から多様な挑戦へ

大金 動画を見ても、楽しい中に礼節や品格が感じられる! 須藤さんの場合は?

須藤 金一さん須藤 金一さん

すどう・きんいち 1978年生まれ。東京都三鷹市で父、母、妻と植木(2.7ha)、オリーブ(20a) 、かんきつ(10a)を生産。

須藤 「米国かぶれ」で、スポーツはアメフトです(笑)。私は300年、東京・三鷹で江戸時代から続く農家の長男です。父から「せっかくだから外を見てこい」と言われたので、大学を卒業すると銀行に入りました。法人営業の仕事で、木材卸の「跡継ぎ息子」として頑張る社長たちと出会いました。父がJAの常勤になるのを機に26歳で就農しました。

うちはもともと野菜農家でしたが、高度成長で建設が盛んになると、祖父が「これからは植木の需要が増える」と聞いてきたようで、1960年くらいに植木に切り替えました。バブル期には植木が飛ぶように売れ、子どもながらに「植木ってもうかるんだな」と思っていました。ところがバブルが弾け、父の頃は3000万円だった植木の売り上げも1000万円に。「東京五輪」が来るぞとなって回復してきたのですが、コロナで建設現場も止まってさらに落ちました。

上の息子が高校生、次男が中学生、下の娘が小学生です。将来継いでもらいたいのですが、今の子に「継げよ」というと嫌になるかもしれない。手っ取り早いのは背中を見せること。そこで、オリーブを植木として20年ほど生産してきたんですが、東京初のオリーブオイルを作ろうと3年前から取り組んでいます。日本オリーブオイルソムリエ協会の講座を受講してオリーブオイルソムリエの資格を取り、神奈川県でオリーブオイルを作っている人とつながった。欲しい品種は、愛知の生産者をインスタで見つけ、買いに行き、機械もイタリアから輸入しました。去年は収量が足りずにうまく搾れなかったけれど、今年秋にはうまくいけば「東京産のオリーブオイル」が誕生します。イタリアンのシェフからも「ぜひ、譲ってくれ」と言われました。SDGsも絡んで、都内の飲食店のシェフたちも「地産地消」を意識し、謳いたいようです。

農業の包容力伝える大切さ

大金 「農があって良かったと言われる関係づくりを!」と須藤さんは唱えていますが、「農の応援団づくり」ですよね。

須藤 それには都市農業の歴史が関わっています。1970年代は「東京に農業はいらない。人口が増えるんだから農地を宅地に」という政策でした。「世論を変えないと国は変わらない。農業があって良かったと言ってもらえることをしなければ」と先輩に教えられました。

今日持ってきたのは、三鷹の青壮年部で取り組んでいる「食育カレンダー」です。市内の小学生から「農のある風景画」を募集しています。子どもたちに畑を見てもらいたいと始めたのが15年ほど前。応募作品を市内の図工の先生を呼んで審査してもらいます。載せる作品を13枚選び、入賞作品は表紙などにして三鷹農業祭で盛大に表彰式を行います。カレンダーは毎日見るじゃないですか。毎日、農に触れてもらえる。10年前、この取り組みを中心としたJA青年組織活動実績発表大会で全国最優秀賞を取りました。

八木澤 俺、「関東ブロック」止まりでした。(笑)

須藤 他県の仲間にも都市農業は誤解されている部分があったので、「同じお天道さんの下で働いてるんだ」と知ってもらいたいと積極的に交流してきました。東日本大震災が起きて「都市農地の多面的な機能」が見直され、都市農業を振興する法律ができました。

「自他共楽」の思い壁なし 災害支援で感じた盟友の力 夢は東京で農業五輪(2)に続く

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