JAの活動:JA全農の若い力
【JA全農の若い力】生産者の収益増に貢献も 課題解決できる獣医師に 飼料畜産中央研究所(1)宮川将司さん2023年8月29日
飼料高騰や農家の高齢化などで畜産経営は厳しさを増している。こうしたなか、JA全農の飼料畜産中央研究所(茨城県つくば市)では、畜産農家の経営や系統飼料畜産事業を支えるため、日々革新的な飼料開発や生産性向上技術の開発などに取り組んでいる。今回は鶏や牛の飼料や飼養管理の研究開発に取り組む若い獣医師と研究者を紹介する。
養鶏研究室 宮川将司さん(2018年入会)
食の安全に関わる幅広い業務を
宮川さんは元々動物好きで、獣医師免許を持てば動物に携わる仕事に就けるとの思いから大学の獣医学部に進んだという。関心の幅が広く、獣医師免許を取得後、就職活動では食の安全に関わる仕事をしたいとの思いも強まり、家畜の衛生から育種、飼料と幅広い業務を有する全農を志した。
大学で牛の血液病の解析などを研究した宮川さんが最初に配属されたのは千葉県佐倉市にある家畜衛生研究所だった。牛の下痢症や鶏の呼吸器病などを扱う研究室に所属し、感染した家畜から採取した病原体を使って感染防御に役立てる様々な試験や家畜疾病の検査の研究などに明け暮れた。「衛生の基礎的な部分を学ぶインプットの期間でした」と宮川さんは振り返る。
養鶏研究室で餌の最適化などに取り組む
入会4年目の2021年に現在の研究所の養鶏研究室に移った。同研究室を志望した理由について、「牛や豚に比べて個体より鶏舎全体など『群』でシステマチックに最適な治療や与える飼料について考えられる点に関心を持ちました」と語る。
研究活動の様子
現在、取り組んでいる研究の一つが、採卵鶏と肉用鶏に与える餌の最適化だ。たくさん卵を生み、産肉性を高めるためにどんな栄養を与えたらいいか。採卵鶏ならひなの段階から卵を順調に産み続けるようになるまで成長に応じた最適な飼料を追求する。例えばたんぱく質を構成するアミノ酸の種類や必要量などをコンピューターで計算して全農系の飼料メーカーなどに情報提供する。ただし、飼料原料が高騰するなか、コスト面もにらみながら配合することも必要だ。「現場の配合飼料の内容と乖離した餌では意味がないので、コスト感も意識しながら現場で使える餌づくりに努めています」。少なくとも3年以上に及ぶ地道な研究の末、農家が使う配合飼料が最適なものに改良される。
環境負荷低減に卵の破損回避も
また、SDGsが叫ばれる昨今、養鶏業が環境に与える負荷を低減する技術開発にも取り組んでいる。鶏ふんの処理は養鶏経営にとって慢性的な課題でもあり、鶏ふん処理に悩む生産者に向けて、同研究所は全農系飼料メーカーとともに鶏ふんの量を20~30%減らす飼料を開発し、特許を取得している。この研究を受け継ぎ、より高い低減効果を目指して改良に向けた研究を重ねている。また、鶏ふんを堆肥化する際の温室効果ガスの排出も環境面の課題とされており、今後の研究テーマの一つだ。
さらに農場から卵を出荷する際に割れてしまう卵を減らす対策にも取り組んでいる。一般に農場から卵が出荷される際に10%程度の卵がヒビや汚れ等により規格外品となってしまうといわれる。そこで衝撃センサーのついた卵型のIoT機器を使って産み落とされた卵が集荷されるまでの経路において、どこで衝撃を受けてヒビが発生するのか、データを見える化し、生産性の改善に役立てている。「10%の破卵率を1%でも減らすことができれば生産性の改善につながるとともに、生産者の利益にもつながります」と研究の意義を語る。
鳥インフル流行で冬は気が抜けない日々
こうした研究を重ねる傍ら、農場を管理する獣医師である宮川さんは、農場の鶏の健康管理にも気遣わなければならない。昨年冬から今年にかけては全国的に鳥インフルエンザが猛威をふるい、気の抜けない日々を過ごした。茨城県内でも発生が相次ぎ、同研究所でも鶏舎に入る前の消毒槽でウイルスを死滅させる薬剤のpHを上げるなど最大級の警戒をしたという。「消石灰をまく頻度をあげたり鶏舎を毎日消毒したりと手作業でさまざまな対策を取りました。元気のない鶏がいると聞くと見に行って鳥インフルエンザでないとわかるとホッとしたり。特に冬は気が抜けません」と話す。
問題解決できるパートナーに
資材高騰などで畜産農家が厳しい経営に直面するなか、宮川さんは生産現場で家畜の病気を治すことはもちろん、農家の収益を上げることのできる獣医師を目指している。「病気を治すことはある意味マイナスをゼロに戻すことですが、飼料や鶏舎環境の改善は際限なくプラスになります。研究所から出たあとは農場で生産者の方と接する機会が増えると思います。さまざまな研究を通じて幅広い知識を身につけ、現場に出たら生産者の方々の収益も上げられる、問題解決のできるパートナーになりたいと考えています」と将来への抱負を語った。
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【JA全農の若い力】初乳研究から省力化まで 生産者に頼られる存在に 飼料畜産中央研究所(2)藤條亮宏さんに続く
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