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JAの活動:JA全農の若い力

【JA全農の若い力】初乳研究から省力化まで 生産者に頼られる存在に 飼料畜産中央研究所(2)藤條亮宏さん2023年8月29日

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笠間乳肉牛研究室 藤條亮宏さん(2019年入会)笠間乳肉牛研究室 藤條亮宏さん(2019年入会)

最も生産者との懸け橋になれる組織

幼少期に父の仕事の関係で米国の牧場近くで過ごし、自然と牛や馬に興味を抱いたと話す。「父も牛の飼料関係の仕事をしていて、よく動物園などに連れていってもらいました」。畜産系の大学に進み、研究室では生まれたばかりの免疫を持たない子牛に効率的に免疫抗体を移す研究に取り組んだ。その傍ら農場で搾乳や給餌のアルバイトに打ち込み、動物や生産者と触れあう時間を重ねた。

こうした経験から食の根幹を担う生産者を支える仕事に従事したいとの思いが強まった。全農を志した理由は「最も生産者との懸け橋となる現場で取り組めるのが全農でした」と振り返る。牛に携わる部門への配属を希望し、茨城県笠間市にある笠間乳肉牛研究室に着任して5年目を迎える。

研究活動の様子研究活動の様子

牛のお産のたびに初乳集め製剤改良に

現在取り組んでいるメーンの研究の1つが、大学でも取り組んだ子牛の免疫に関わるテーマだ。分娩後初めて搾った初乳に含まれる免疫成分などを調べる試験を繰り返す。免疫成分の低い初乳は品質が悪いとされ、生産現場では初乳製剤を混ぜて子牛に与えたりするが、物性や成分が変わるため、どの位の量まで与えても大丈夫なのか、試験を繰り返す。

笠間の農場には乳牛と肉牛合わせて約600頭が飼養されており、試験の一環として牛のお産があるたびに初乳を集めに出向く。「お産を何回も経験した牛の方が免疫成分が多くて品質がいい。そうしたデータをもとに初乳製剤の改良などに活かせればと思っています」と話す。

最近新たな研究テーマに加わったのは、代用乳の研究。最近海外で乳牛の栄養飼養標準(家畜の成長過程などに応じた適正な栄養要求量)が約20年ぶりに改定された。代用乳中のミネラルの要求量などが変わったといい、新たな基準でつくった代用乳で牛の発育に問題がないかどうかを検証し、飼料をつくる研究所にフィードバックする。

生産現場の省力化の研究にも意欲

研究範囲は肉牛の肉質分析にも及んでいる。現在、取り組んでいるのが全農独自で育てる黒毛和種種雄牛の評価の実証試験。系統種雄牛の発育性や枝肉の評価を行っている。

資材高騰や乳価低迷などで畜産・酪農の生産者が厳しい経営に直面する中、今後は特に生産現場の省力化に役立つ研究に取り組みたいと意欲を示す。「ウクライナ情勢などで飼料や畜産資材の価格が高騰しているのに加えて就業人口が減って現場では省力化が求められています。生産性向上やICT技術などを活用して省力化やコスト削減につながる飼料や飼養管理の開発に努めることが重要だと考えています」と強調する。

独自の研究成果を学会で発表へ

実は最近、省力化につながる1つの研究成果を生み出した。生まれたばかりの子牛に免疫力をつけるために与える初乳製剤は生後すぐに2袋、6時間後をめどに2袋の計4袋を与えることが推奨されているが、深夜の分娩の場合、6時間後の作業は生産者に大きな負担となる。そこで藤條さんが分娩直後に1度に4袋を与えて血液や体重などのデータを分析したところ、2回に分けて与える場合と遜色のない結果が得られたという。この成果を今年9月の日本畜産学会で発表する予定だ。

すぐに役立つ研究も 頼られる存在目指す

「当研究所は先進的かつ基礎的な研究も行っていますが、私個人の思いとしては、すぐに生産者が現場で扱えるような研究も重ねていきたいと考えています」と藤條さんは話す。そのためにも日々の牛の細かい観察は欠かせず、毎朝、始業時間前には農場に足を運ぶ。同研究所は飼養頭数の多さに加え、哺育から育成まですべてのステージで試験をできるやりがいのある職場だと話す。

「将来は生産現場に近い場所で仕事をしたいと考えています。まだ微力ですが、力をつけて少しでも生産者に頼られる存在になれることをめざします」と将来への決意を語った。

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