JAの活動:【農業協同組合研究会】どうなる どうする基本法改正
【農業協同組合研究会 報告②】「食と農でつながる地域づくり」で農業を守る JAぎふ・岩佐組合長2023年9月5日
農業協同組合研究会は9月2日、東京都内で「どうなる どうする基本法改正-『食料・農業農村政策の新たな展開方向』をめぐって」をテーマに2023年度第1回の研究会を開いた。農水省の杉中淳総括審議官、JAぎふの岩佐哲司組合長、日本生協連の二村睦子常務、研究会会長の谷口信和東大名誉教授が報告を行った。研究会の司会はJAおきなわ中央会・普天間朝重会長が務めた。
岩佐組合長は、農業は「国民の全員が毎日関与する産業。だから産業政策としてだけはなく、地域政策としても位置づけ、地域住民の理解を得て農業を守っていくことが大事だ」として同JAの実践を報告した。
JAぎふ・岩佐組合長
食料安保は国民全体の課題
今回の基本法見直しに向けたJAグループの提案には「平時を含む食料安全保障の強化」が謳われているが、率直に言って食料安全保障の強化は農業者側だけの問題ではなく、われわれが積極的に発信する必要があるにしても、これは国民全員の問題ではないかと思った。
「再生産に配慮した適正な価格形成の実現と国民理解の醸成・行動変容」も提案されているが、現場では適正な価格形成がいちばん悩ましい問題でコストに見合う価格形成ができていない。多様な経営体の位置づけ・役割も求めているが、これが本当に基本法見直しのなかに入るのか。入れば今までの政策の方向も変わっていかざるを得ない。そこまで踏み込むことができるのか注目したい。
都市住民の農業に対する理解の醸成は極めて重要だ。JAぎふの管内は廃村になった山間地域から、名古屋市まで在来線で20分の地域までを含んでおり、エリア全体の人口は80万人に達しているし、名古屋市は200万人だから相当な規模の市場がある。都市住民の理解醸成はわれわれのJAでも重要テーマとしている。
一方で今の農政には農業を産業にしなければならないという考え方が底流にはあると思う。たしかに、農業は産業ではあるが、国民全員が必ず毎日関与する産業であり、それは本当に産業とだけ捉えていいのかと思う。そう考えると産業政策に力点を置き過ぎているのが今の農政の問題点であり、それに則って事業を運営している農協の問題があるのではないか。大規模化して効率的な経営をめざしても自給率は上がっていない。何かが食い違っているのであり、何が足らないかといえば地域政策であり、このギャップを埋めるのが地元のJAの役割だと考えている。
私の住む地域は岐阜市内で児童数600人ほどの小学校があるが、水路の溝さらいに集まるのは10人ぐらい。農業者が少なくなるなか、地域の住民に理解を広げて一緒にやっていくしかない。JAに何ができるかと問われるが、地域の人と一緒に考える地域にしないと農業は守っていけないと思う。
活力ある農業と豊かな地域社会づくり
われわれは10年後の活力ある農業と豊かな地域社会の実現をテーマに活動している。活力ある農業とは、家族農業の継続をめざし、地域の食を支えているという誇りと安定した所得の確保により、後継者や新たな農業者が参入したいと思うような魅力的で持続可能な農業の実現である。
具体的には部会を中心とした大量生産型市場出荷は引き続き行い、産業として生き残るが、他方で多様な農業者による「地消地産」を実現したい。地産地消は農業者目線であり、作った農産物を消費者が食べるということになるが、われわれは地元の消費者が望んでいるものをわれわれが作るという思い、「なりわい」の地消地産ということでないと消費者と一緒に活動できないと思う。
そのために多様な担い手を発掘していく。一つは大規模化しコスト低減を図る農業であり、もう一つは「地消地産」の農業であり、これは生業というイメージが強い。したがって、安定した所得を確保できる若手農業者のほか、定年帰農者など中高年層の発掘が重要だ。中高年層に農業をやらないかと持ちかけると、最初は断るが、農協が農地や技術、直売所などの販売先で支援すると言うと皆、やってみようかな、となる。つまり、農業をやりたいと思っていても農協が手を差し延べていないということだ。
一方、消費者側には農業を理解してもらい、岐阜の農業の「守り手」の一員となってもらうため、話し合いが必要で「食と農の連携フォーラム」を開いている。食と農の祭典をさまざまな団体と協賛し、食農勉強会も開いている。みそ教室、有機ほ場見学会、有機農法と慣行農業勉強会などを行っている。
また、定年後の働き方や居場所づくりとして農業を始める人をJAが支援するという取り組みを地元企業に働きかけたいと考えている。
有機農業は消費者のニーズに応えるためであり、持続可能な農業の実現のための取り組みである。JAでは3haのほ場を確保して有機栽培の研究と生産者の育成を行っている。有機の里での有機資材については豚糞、牛糞からたい肥を作りペレット化してJAが散布することを予定している。現在は試作品づくりの段階だ。
有機農法への理解を広げるため部会への説明や新規生産者の育成、栽培暦の作成なども行っている。
われわれがめざす豊かな地域とは、農業者と消費者が食と農を基軸としてお互いが尊重し合える地域であり、組合員や地域住民が協同活動への参画のもと、豊かで幸せな生活を送ることができる地域社会の実現である。キーワードは「対話」の強化だ。今、力を入れているのは役員同士の対話の強化と職員同士の対話の強化、さらに職員と組合員、組合員と組合員の対話の強化が重要だと考えている。
組合員どうしの対話とは単に支店に集まってJAから説明を聞くだけではなく、雑談も含めていかに組合員同士が意見交換するか。組合員みんながこんなことをしてはどうかという意見を出して議論していくことをめざしている。
そのほか市町や他の協同組合とのネットワークの連携強化にも取り組み、とくに農業への理解を広げ食と農でつながる地域にするには地元の生協との連携が重要だと考えている。つなぐのは協同組合の仕事だと考えている。
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