JAの活動:第9回JA営農・経済フォーラム
【第9回JA営農・経済フォーラム JAの実践報告①】事業間連携を進め農家の所得増大に挑む JA秋田しんせい 佐藤茂良代表理事組合長2023年9月28日
事業間連携による総合事業力の発揮と担い手支援の強化JA全中
今回のフォーラムでは3JAの実践が報告された。JA秋田しんせいの佐藤茂良組合長は同JAの「農業経営支援室」の担い手支援の取り組みを報告した。
JA秋田しんせい 佐藤茂良代表理事組合長
当JAは、総合事業力をフルに発揮して地域農業の成長に挑むという成長戦略を掲げ、農業者の所得向上とJA販売高の確保をめざしてきた。そのなかで既存概念にとらわれない部門横断型の部署が必要ではないかと考え、専務直轄の「農業経営支援室」を設置した。
背景には、担い手の大規模化が進み、抱える課題が高度化・多角化しているなかで、JAは営農・共済・信用など部門間での業務の専門化が進んでおり、担い手にとって有益なトータルアドバイザーになっていなかったことが挙げられる。それまで出向く活動は営農経済中心の活動に留まっており、課題を聞き出しても現業部署の担当者に投げっぱなしのことも多く、部門間連携の旗振り役にはなれていなかった。
「農業経営支援室」の設置にあたり、当部署は「JAの本気度を示す司令塔だ」と役職員に伝え、その重要性を訴えてきた。担い手の悩みに対して的確なソリューションを提案するには、各部門が密に連携しJAの強みである総合事業力を発揮する必要があるため「ワンストップ・ソリューション」をスローガンとした。
農業経営支援室の業務は、▽訪問活動、▽デジタル化、▽経営コンサルを3本柱としている。訪問活動では、新規就農者、集落営農法人、一定以上の販売額の担い手経営体を重点訪問先として設定し、担い手の課題を吸い上げている。また、法人等のモデル経営体との座談会を開催し、経営分析に基づく提案を行っている。なお、訪問活動では「単なる御用聞きにはならない。物売りはしない」ことを方針に掲げている。
デジタル化は、重点訪問先の担い手の協力を得ながらZ-GISやザルビオ、サグリ、グロースアイ等の各種農業クラウドを導入し、農家所得の増大や農業の効率化を追及している。
経営コンサルでは、担い手が認識している課題だけでなく、認識していない課題を第3者目線で洗い出すことが重要だと考えている。課題提起の際は、担い手が理解しやすいよう「数字を見せる」ことを意識し、新たな品目導入などにつなげている。経営コンサルはJA以外の金融機関等でも実践できるが、営農指導を交えて総合的にサポートできるのはJAならではの強みであり、この優位性を最大限に生かしていきたいと考える。
部門間での情報連携については、出向く担当者が収集してきた課題を全役職員が常時閲覧できるようにするとともに、各部署と連携するための「キャッチボールシート」を作成し、対応が必要な課題を共有している。投げっぱなしにしない方針を徹底するため、各部署からの回答を農業経営支援室が取りまとめ、担い手へのソリューションの提示は欠かさない。また、情報連携の会議体を全部門の担当者レベル(部課長含む)で週1回、農業経営支援室と担当役員のミーティングを月1回開催している。
農業経営支援室の成果としては、的確な経営シミュレーションを提示したうえで主力品目である米からミニトマト等の園芸品目への作付転換の実現や、新規就農者の確保・定着のため就農までの流れや関連制度を説明するセミナーの開催、YouTubeによる動画配信、労働力不足の解決に資するアプリの導入やJA職員の副業解禁(農業限定)などがある。
技術や資金、労働力など、担い手が農業経営で必要としているものをJAが支援することで、JAと組合員の信頼関係が構築でき、農家所得の向上、地域経済の発展、JAの総合事業の継続につながると考える。
【第9回JA営農・経済フォーラム JAの実践報告②】農家所得向上へ出向く活動強化 JAいがふるさと 加藤裕司常務
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