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JAの活動:消滅の危機!持続可能な農業・農村の実現と農業協同組合

【組合長座談会・農業協同組合がめざすもの】担い手育成に総合力を生かそう(2)2023年10月25日

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農業・農村の展望をどう開くか。今号の座談会は水田農業地帯、都市的地域、そして中山間地域と地域条件の異なるJAトップに話し合ってもらった。それぞれの地域特性を生かした事業・活動が紹介されたが、共通するのは「農外」や「他団体」との連携だった。各地の農協運動の一助となることを願う。

【組合長座談会・農業協同組合がめざすもの】担い手育成に総合力を生かそう(1)から続く

耕畜連携で脱炭素化に

海野 畜産は飼料など生産資材価格の高騰により本当に大変ですが、なくなったら、稲を牛の飼料にして食べたふんを田んぼに戻す「耕畜連携」のサイクルが壊れてしまう。これを何とか守ろうとしています。また、これまでは人手がないなかで化学肥料や農薬を使い、効率を求めて農家所得の確保に努めてきました。ただし、今後は、有機や環境にやさしい取り組みなどJAの社会的な存在意義を高めるためにも、行政とタッグを組み、学校給食に使ってもらうなど「安全・安心なものが食べられる環境の良い地域なら、移住してもいいじゃないか」と若者がさらに増える可能性も期待しています。

JA秋田中央会会長 小松忠彦氏JA秋田中央会会長 小松忠彦氏

小松 羽後高校という県立高校に、町が金を出して弁当を出す給食の無償化が注目されています。JA秋田しんせいは合併して26年、当初から土づくりに注力してきました。米の高温障害による品質低下がクローズアップされていますが、管内は1等米の比率が高い。土づくりの成果ですね。
最近、『土を育てる』という本を読みました。カバークロップ(被覆作物)で土をしっかり作り、不耕起栽培する。化学肥料も農薬も使わないとなると、JAの経済事業に響きますが(笑)、地球温暖化に立ち向かうには耕種方法の見直しにもチャレンジしていく必要があるんじゃないかと思いました。

宮永 確かに、新しい価値観が社会に広がっている以上、JAもこれにどう対応していくか。地域ぐるみのカーボンニュートラル対策が課題ですね。

海野 新規就農者には完全有機の人もいます。50アール借りてやっていますが、所得は100万円もいかない。生業としてやっていくためには、どう消費者にその価値を伝え理解してもらうかが課題です。でも、その需要は広がっていくと考えています。

JAはだの(神奈川)組合長 宮永均氏JAはだの(神奈川)組合長 宮永均氏

宮永 JAが地域のコミュニティーを支えている。JAはだのではLAが農家組合や生産組合の事務局を務めています。生産組合などの活性化に視察研修会を開催したり、健康教室を実施したり、そういう企画提案をLAが担っています。そこで出されるさまざまな声に、JAが親身になって応えていくことが基本だと常々思っています。

大金 皆さん、直接支払い(所得補償)についてはいかがですか?

海野 時間のかかる課題です。私たちはコープ愛知と交流があって、農業の立場は良く理解してくれるのですが、価格については「高くなると買えなくなる」と反応が厳しい。そこで、中山間地域ならではの価値を「見える化」できないかと日々悩んでいます。欧州では、標高などによって「山地ラベル」を認定しているとも聞きますから、そんな付加価値の「見える化」ができないかと考えています。

中山間地域は直接支払いの支えがないと、平地に比べて条件不利で成り立ちません。組合員は農林業を兼ねて奥三河のきれいな水と緑を守っています。「多面的機能」は大きな役割ですから、その点を理解していただくことも私たちの使命であると考えています。

宮永 日本には「始める手当て」は結構ある。新規就農者支援の交付金のように、ですね。欧米では、できあがった果実に「オン」してくれる。その方向に早く大転換してほしい。

また、ファーマーズマーケットは委託販売で、売れたらお金になるけれど、売れ残ると困る、ということで安さの競争になる。それは嫌だと、若手は自分で販路を探したり、JAから離れたりする。販路を開拓し、買い取りも含め、JAも努力しなければなりません。

条件を整え所得補償も

JA愛知東組合長 海野文貴氏JA愛知東組合長 海野文貴氏

小松 適正価格や所得補償にしても、食べてもらう人たちの理解が得られるような取り組みを農業者やJAがしていかなければいけない。たとえば、所得補償の条件付けとして、次の世代がしっかりと農地を守っていけるような仕組みを持っている生産者だとか、継続性が担保されている姿を見てもらい、初めて「所得補償いいですよ!」というお互いの理解が生まれてくるのではないか。

大金 生産者やJAも変わらなければならないと?

宮永 単位JAには、正直に言って「国消国産」があまり響きません。運動の基本はやはり「地消地産」ではないか。

小松 その通りですけれど、「国消国産」を掲げた背景には、海外から安定して食料が入ってこなくなるという危機感がありますよね。あるテレビ番組で「10年後の食卓」が放映され、「朝食は焼き芋2個とパン1切れ、昼食は焼き芋2個、夕食にやっと茶わん1杯のご飯」という予測にびっくりしました。JAも腹を据えて取り組まなきゃ、それこそ「飢餓」を招来しかねません。

大金 そのためにどんな新しい行動や運動をJAはしていくべきですか。

海野 JAそれぞれに異なると思いますが、高齢化が進むとマーケットが縮小します。胃袋も小さくなる。JA管内では高齢化率が40%で、30年後の日本の姿とも言われます。
私たちの若い頃は、何でも地元商店で買い物をして、賑わっていました。今の若者はネットや地域外の大型ショッピングモールでの買い物です。こうなると、お金は大都市や海外に流失し、地元で回るお金がありません。地元商店やJA店舗の運営は厳しくなり、人びとの生活に必要なインフラの維持も難しくなります。そこで、地場産業である農業を通じて、流失したお金を地域内に戻して外貨を稼ぐ。もし、地域にその店が必要なら、意識的に利用し、地元経済を回す仕組みが必要となります。
私たちのJAには「地元農家応援の店」というJAの認定制度があります。地元商店や旅館業の方に産直を通じて、優先的に地元産和牛「鳳来牛」などの農畜産物を利用していただく。JAでは広報誌でお店をPRし、組合員は協力店を優先的に利用し、お金を落としていただく。こうした活動を商工会と共に行っています。だから、地域のためにも農家はもうけ、外貨を稼いでいただかなくてはなりません。中山間地域の人々は祭りなど、多少なりとも皆つながり、支えあう営みがあり、人口減少の中で地域内での「一円融合」が大切だと思うのです。言わば「エシカル(倫理的)消費」を協同の力で広めていくことが、持続可能な地域への活路であり、JAの役割であると考えています。

宮永 私たちも農商工連携協議会を持っています。商工会議所とJA、市役所からも事務局に入ってもらっています。たとえば秦野で取れた小麦を市内のレストランやパン屋さんで使ってもらっています。学校給食はもちろん、市内循環を進めています。
生活協同組合パルシステム神奈川との地域振興包括連携協定も2019年に交わしました。生協となぜ組んだのかというと、JAの生活購買事業が赤字でした。パル生協は個配もしてくれるので、系統組織に仁義を切って協定を締結しました。また、農業振興も農産物販売も子育て世代の人たちとの関連が多いので、「ままメートクラブ」を立ち上げ、活発に活動しています。

小松 秋田県では時折クマが出没します。山から街に降りてくる。農業を守ることが山や海を守ることになるという思いを、クマの被害などからも強く感じています。組合長になった時、「ピンチをチャンスに変えていくには連携だ」と、時間をかけて商工会との関係を築きました。「競争」じゃなく「共創」の時代で、競い合いは終わった。お互いが連携し、JAが率先して新しい時代を切り開いていくべきです。

宮永 ある大学の先生の話では、農業系学部の受験倍率が1・2~2倍とここ数年変わっていない。学生は様々なサークル活動で農家を訪ねたり、地域に出かけたりして盛り上がっていると。そういう状況なのに、学生からJAの話題がまったく出てこない。JAに入組して働こうというところにつながらないと。JAの理念なり思想なりをしっかり伝える行動が必要じゃないかと思いますね。

司会・文芸アナリスト 大金義昭氏司会・文芸アナリスト 大金義昭氏

大金 リップサービスでなく、JAは素晴らしい取り組みをたくさんしていますけれど。

宮永 それを伝え、つないでいきませんとね。新規就農者は有能な人が多く、経営も立派です。

海野 若い人たちをどう呼び込むか。それには内橋克人さんが言われたように、FEC自給圏(Foods食料、Energyエネルギー、Care医療・介護・福祉)の三つにしっかり取り組めば人が集まってくるという話があり、私たちの地域はそういう方向をめざしていきたい。「F」はJAで、「E」は地域に太陽や水がたっぷりある。「C」はJAの得意にするところです。この三つで中山間地域の持続可能性を確立していくことがJAの使命です。

【座談会を終えて】

JAの魅力を象徴する「ソフトパワー」を身にまとったお三方。日本海や鳥海山を望む米の主産地として「土づくり」の歴史や伝統を誇るJA。首都圏で「食と農を基軸に多様な人たちが関わる地域づくり」を代々にわたり先駆的に展開してきたJA。「奥三河の水と緑と食を生かして守る」誇りを抱き、「みずから集まって強くなる」実践を積み重ねてきたJA。秋田・神奈川・愛知と県境を越えて顔を合わせた座談会は、端(はな)から佳境に入った。地域特性の垣根を払うその個性的で自由闊達な交流や交歓こそ、農業「消滅の危機」を突破する協同組合の底力ではないかと気づかされた。

(大金)

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