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JAの活動:第44回農協人文化賞

【第44回農協人文化賞】仲間と共に栄える農協であれ 経済事業部門 岩手県・JA全農いわて前会長 小野寺敬作氏2023年12月20日

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多年にわたり献身的に農協運動の発展などに寄与した功績者を表彰する第44回農協人文化賞の表彰式が11月30日に開かれました。
JAcomでは、各受賞者の体験やこれまでの活動への思い、そして今後の抱負について、推薦者の言葉とともに順次、掲載します。

JA全農いわて前会長 小野寺敬作氏JA全農いわて前会長
小野寺敬作氏

農協人文化賞・経済事業部門受賞の報を受けて驚いております。農協運動に精通した方が受賞する賞と思っておりましたので大変光栄です。今後の活動の糧とさせていただきたく、推薦してくれた仲間、選考委員会の皆さまに改めて感謝申し上げます。

私は岩手県北部沿岸にある野田村(旧JAいわてくじ管内)の出身です。実家は農家をしておりましたが、私は学校を卒業後に農業とは異業種の企業に31年勤務しておりました。退職後に入組した農協は当然ながら会社勤めとは環境が全く異なり「異業種からの転身でわかりますか?」と言葉をかけられることもありましたので、勉強をさせていただきました。当時管内には5600人ほどの正組合員がおり、職員は約200人。私は職員一人あたりが28農家程度を担当する「マイ農家」という取り組みを掲げ、農家さんを訪ねて事業理解を広げるよう推進いたしました。

平成20(2008)年には岩手県内18市町村を管内とする全国有数の大型農協である新生・JA新いわてがスタートいたしました。営農経済がしっかりした農協を目指すことで生きがいと士気を高めたいと考え、地域農業振興計画を策定しました。農業者の所得拡大と管内の農業生産の拡大をはかる「日本一の産地チャレンジ運動」というものです。具体的には当時の販売高423億円を500億円まで引き上げる目標を掲げました。

管内の販売高の割合は畜産と酪農が約6割を占め、キャベツやレタスなどの野菜、リンドウなどの花き特産品がそれに続きます。それぞれの販売高を伸ばすよう目標額を設定し、品目ごとに説明会を開いて生産者の皆さんに増産をお願いしました。ただ増産をお願いするだけでなく、畜産・酪農では増頭した農家、園芸・花きでは生産拡大した農家にそれぞれ奨励措置を実施しました。そうして皆の努力が実を結び、平成28(2016)年度には全国有数の販売高となる477億円まで伸ばすことができました。

管内には「もんずらすかしぇーるず」(方言で「まるごと知ってもらう」の意)という園芸農家の女性グループがありまして、彼女たちのPR活動も非常に効果的だと感じております。彼女たちは市場やスーパーで野菜を売るだけではなく、産地のことを知ってもらって農業の苦労や楽しさを伝えておりました。JA新いわて20周年の平成29(2017)年には純情産地いわて宣伝本部長ののんさんとトークイベントに出演など、あらゆる場面でPRに活躍してもらっています。

JA新いわて20周年イベントにて(タレント「のんさん」と「もんずらすかしぇーるず」との写真)平成29〈2017〉年撮影JA新いわて20周年イベントにて
(タレント「のんさん」と「もんずらすかしぇーるず」との写真)2017年撮影

平成23(2011)年には東日本大震災を経験しました。JA新いわてが沿岸から内陸市町村までを管内とする大きな農協であることが幸いし、米農家からはお米が、花農家からはお花が被災地に届けられ、一丸となって助けていただきました。葬祭事業では野田村で合同慰霊祭を行いましたが、組合員の方から「こういう機会を設けてもらってありがとう」とお声がけをいただきました。落ち着いたという表現にはまだまだ遠い日々でしたが、一つの区切りをお手伝いできたのではないかという思いです。

営農経済事業の成長・効率化プログラムの取り組みについては、JA新いわてが合併から10年余りが経過し、営農・経済も見通しが手つかずであったことから、平成31(2019)年4月から、農林中金・全農・中央会のご協力のもとに、成長戦略(4項目)や生産資材の配送の効率化・出向く体制の強化など効率化戦略(8項目)に取り組んだ結果、3カ年で目標3・3億円に対して2・3億円の実績でありました。

オリンピックの東京開催を商機と見据え、世界市場を意識した取り組みやセールスも行いました。奥中山地域のレタス、宮古地域のブロッコリーのGLOBALG・A・P団体認証取得がその一つです。安全安心を優先する取引先に響き、一定のネームバリューを高めることができたものと思っております。

JA岩手県五連会長就任中の2年間はコロナ禍の真っ只中でした。副会長と相談し「この期間、私たちは時間をもらったんだ」と発想を転換。県内各地の生産者を訪問し意見交換をしました。沿岸・大船渡市のイチゴ農家は、イチゴを通年生産できるよう品種や栽培について研究されていてとても刺激を受けました。また、県南・奥州市の米農家は、岩手の風土に根付いた農業を生業としてしっかり守っていただいていることに感動しました。それぞれの農業の現場に改めて感銘を受けた機会となりました。

かつて会社の上司に「小野寺くんは、家で農業やってるんだったらITを活用してリモートで管理できるようにして、都会の人を巻き込めば良いじゃない」と夢語りされたことを思い出します。ITやAIを活用した農業で労力削減や遠方からでもスムーズな管理ができればと、いままさに思います。タイアップの実現などJAに期待される役割は大きいはずです。また農業は若い方の承継が少ないのが課題ですが、農業をしてみたいという若者はまだまだいるはずです。

JAグループとして例えば離農施設を借り受けて新規就農者に仲介するなど、初期投資が抑えられる就農支援策なども考えられます。岩手の農業の現場や実状を広く発信し、JAグループの事業理解を浸透させ、若い方々には農業という産業を継続する力になってほしいと考えます。今後の農協の取り組みと農業の発展に期待しています。

経済事業部門 岩手県・JA全農いわて前会長 小野寺敬作氏【略歴】
おのでら・けいさく
1950年12月生まれ。2000年5月いわてくじ農業協同組合非常勤理事就任。02年9月いわてくじ農業協同組合代表理事専務。06年5月代表理事組合長。08年5月新岩手農業協同組合常務理事。17年6月代表理事組合長。20年6月新岩手農業協同組合会長理事。同年6月〜23年6月JA岩手県五連会長など歴任。

【推薦の言葉】
新たな付加価値の創出
小野寺氏は、2000年に旧いわてくじ農業協同組合の非常勤理事に就任し、02年に代表理事専務、04年には代表理事組合長に就任し、畜産酪農事業では地域ブランド牛の生産拡大や生乳の販路拡大、園芸特産事業では管内の主力品目であるホウレンソウ・シイタケ等の生産拡大対策に取り組み、農家組合員の育成や農家経営の安定などに向け管内の農業振興を牽引した。
2008年5月の広域合併の際には、農家組合員の所得向上に資するJAの健全な経営基盤を早急に確立するために合併事務の円滑な推進に尽力し、四国4県に匹敵する岩手県の面積のほぼ半分に相当する、県内18市町村を管内とする全国有数の大型JAである新岩手農業協同組合(JA新いわて)が誕生し、小野寺氏は常務理事に就任した。13年に代表理事専務、17年に代表理事組合長に就任し、広大なJA新いわての各エリア特性を伸ばすことで、中長期的視点に立った持続可能な農業経営方式の確立と実需者への有利販売につながる新たな付加価値の創出に積極的に取り組んだ。

(画像)
JA新いわて20周年イベントにて(タレント「のんさん」と「もんずらすか
しぇーるず」との写真)(平成29〈2017〉年撮影

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