JAの活動:第44回農協人文化賞
【第44回農協人文化賞】地域農業を守る運動強化 経済事業部門 滋賀県・JAレーク伊吹会長 中尾一則氏2023年12月21日
多年にわたり献身的に農協運動の発展などに寄与した功績者を表彰する第44回農協人文化賞の表彰式が11月30日に開かれました。
JAcomでは、各受賞者の体験やこれまでの活動への思い、そして今後の抱負について、推薦者の言葉とともに順次、掲載します。
JAレーク伊吹会長
中尾一則氏
私は、昭和55(1980)年4月にJA合併前のJA長浜市に入組し、信用共済外務員を担当したのが農協人としての第一歩でした。その後、JA合併後、営農経済部門での勤務を経て、平成29(2017)年4月に代表理事専務、令和元(19)年6月に代表理事理事長、4(22)年6月に経営管理委員会会長に就任しJAの経営に携わらせていただいております。
現在、JAの第8次中期経営計画に基づき、「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」を基本方針に、「食と農を基軸とした地域に根差した協同組合」として、農家組合員、地域から信頼される協同組合を目指して、JAの経営管理に努めております。
私は日頃から農家組合員の生産意欲、生産基盤が損なわれることがないように地域農業を守る事業・運動を継続・強化していかなければならないと考えております。
JAでは平成6(1994)年から農地保有合理化事業・農地集積円滑化事業に取り組み、農地集積による農業経営の効率化を目的に、担い手農地のエリア制を実施するとともに、借入農地の交換分合を積極的に進め、担い手への農地集積を図ってきました。今では関係機関と一体となった「人・農地プラン」の作成支援などにより管内農地の80%が担い手に集積され、効率的な農業経営に大きな貢献を果たすことができたと考えております。
また、平成7(1995)年には当時の農地保有合理化事業の受け皿として有限会社グリーンパワー長浜を設立しました。この法人は、JA出資型法人の中でも全国で最も早い段階に設立した法人で、地域の担い手農家とともに引き受け手のない農地をエリア別に引き受けるなど、地域農業の担い手の皆さんと協力し地域農業を担っています。
グリーンパワー長浜での中尾会長
平成21(2009)年当時、経済事業改革が全国の合併JAの課題となる中で、JAにおいても支店や施設の統廃合にともなう農家組合員とJAとの接点強化をどう図るかがテーマになっていました。
特に地域農業の担い手育成と支援がJAに求められており、「出向く活動」により「身近なJA」として信頼回復を図ることが不可欠であり、担い手との接点活動の強化こそがJAの事業量の拡大につながると判断し、県内JAに先駆けて専任のTACを設置したほか、担い手とのコミュニケーション強化を図るため、共済・金融のLA員をTACに抜擢しました。
「TACには数値目標は設定しない。徹底的に担い手農家の意見や要望を聞く。TACは農家とのお茶飲みが仕事だ」とTACの機能を明確にしました。
TACが出向く対象は、3㌶以上の大規模農家および集落営農組織、プラス各支店からの推薦を踏まえた約180経営体としました。この経営体は正組合員のわずか3%にすぎませんでしたが、生産資材供給高の45%、米の集荷数量の50%を占めていました。
TACの事業提案の中には担い手の作業省力化につながる玄米フレコン出荷の提案、さらには、マーケットインに基づいた米の新規提案、肥料農薬の提案等、様々な提案を行い、担い手から多大な評価を得ました。結果、低利用・未利用であった担い手がJAを利用するようになるなど新たな事業展開を生み出しました。また、JAの主要農作物である米の農家組合員の所得向上とJA集荷数量を確保するため、滋賀県内JAに先駆けて平成29(17)年産米から全銘柄全量買い取り販売に取り組みました。
令和4(22)年産米の事前契約率は96%まで確保し、集荷実績は、前年対比103・8%になりました。
さらに、JA管内の主産である米・麦・大豆に加え水田フル活用の一環として、平成30(18)年から農家組合員の所得の向上を目的に加工業務用タマネギの生産拡大に取り組みました。農家組合員の作業負担を軽減し、生産拡大を進めていくため、①JA独自の栽培技術の提示②根切り機による地上部の乾燥の促進③ディガーによるタマネギの掘り起こし④ハーベスターによる収穫(根切り、葉切り機能の付いた収穫機)⑤カントリーエレベーターにタッピングセレクターを設置し、タマネギの選別を徹底する──といった機械化一貫体系を確立しました。農家組合員への充実したサポート体制の確立により、加工業務用タマネギの作付けは令和5(23)年度、23㌶、1000㌧の生産量となり、近畿でも有数の県内最大産地に育成できました。
また、平成28(16)年度より、施設専門技術職員による独自の共同利用施設プラントメンテナンスに取り組み、平成30(18)年度は施設専門技術職員の人件費を含めて、従来のメンテナンス費用の大幅な削減を実践しました。また、令和2(20)年度から新たに若手職員を1人雇用し、施設修繕能力に余力が生まれたことから、JAグループ滋賀役職員集会決議にある「エリアを超えたJA間連携」の一環として、近隣JAの共同利用施設稼働期緊急対応や定期点検も含めたプラントメンテナンスに着手しました(特殊作業はメーカーへ依頼)。
また、作付面積27㌶で県内最大産地であるブロッコリーなどの生産拡大に取り組み、地域ブランドを確立していくため、近隣JAと連携して「北近江野菜」ブランドの商標登録を行い、生産振興と産地PRを行って販売促進に取り組んでいます。最後に農業、JAを取り巻く環境は厳しい状況が続くと思われますが、JAとして、農家組合員と地域の期待に応えなくてはならない存在であり続けるよう不断の自己改革に全職員と取り組んでいく所存であります。
【略歴】
なかお・かずのり
1957年7月生まれ。80年4月長浜市農業協同組合へ入組。98年4月JA合併でレーク伊吹農業協同組合誕生。2011年4月理事兼営農生活部長。13年4月理事兼経済部長。17年代表理事専務。19年代表理事理事長。22年6月経営管理委員会会長。
【推薦の言葉】
変革・改革への先進性
中尾氏は、2017年にJAレーク伊吹代表理事専務、19年に代表理事理事長、22年に経営管理委員会会長に就任した。現在、JAの第8次中期経営計画を策定し、「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」を基本方針に、「食と農を基軸とした地域に根差した協同組合」として、組合員、地域から信頼される協同組合を目指し、JAの経営管理に尽力している。
農地の団地化・集団化を推進し、農業経営に貢献するため、1995年に当時の農地保有合理化事業の受け皿、(有)グリーンパワー長浜を設立。その後も農地集積円滑化事業に取り組み、担い手の効率的な農業経営に貢献した。担い手との接点活動の強化こそがJAの事業量の拡大につながると判断し、2009年度に専任のTACを設置した。また、17年産米から全銘柄全量買い取り販売に取り組むとともに、加工業務用タマネギの県内最大産地へ育成したほか、JA間連携による経済事業の維持拡大、近隣JAと連携したブロッコリーなどの生産拡大と「北近江野菜」ブランドの商標登録を行った。
重要な記事
最新の記事
-
新春特別講演会 伊那食品工業最高顧問 塚越寛氏 社員の幸せを追求する「年輪経営」2025年2月5日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】通商政策を武器化したトランプ大統領2025年2月5日
-
「2024年の農林水産物・食品の輸出実績」輸出額は初めて1.5兆円を超え 農水省2025年2月5日
-
農林中金が短期プライムレートを引き上げ2025年2月5日
-
トラクターデモにエールを送る【小松泰信・地方の眼力】2025年2月5日
-
時短・節約、家計にやさしい「栃木の無洗米」料理教室開催 JA全農とちぎ2025年2月5日
-
サプライチェーン構築で農畜水産物を高付加価値化「ukka」へ出資 アグリビジネス投資育成2025年2月5日
-
「Gomez IRサイトランキング2024」銀賞を受賞 日本化薬2025年2月5日
-
NISA対象「おおぶね」シリーズ 純資産総額が1000億円を突破 農林中金バリューインベストメンツ2025年2月5日
-
ベトナムにおけるアイガモロボ実証を加速へ JICA「中小企業・SDGsビジネス支援事業」に採択 NEWGREEN2025年2月5日
-
鳥インフル 米オハイオ州など5州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年2月5日
-
鳥インフル ベルギーからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年2月5日
-
JA全農と共同取組 群馬県産こんにゃく原料100%使用 2商品を発売 ファミリーマート2025年2月5日
-
「食べチョクいちごグランプリ2025」総合大賞はコードファーム175「ほしうらら」2025年2月5日
-
新潟アルビレックスBC ユニフォームスポンサーで契約更新 コメリ2025年2月5日
-
農業分野「ソーシャルファームセミナー&交流会」開催 東京都2025年2月5日
-
長野県産フルーツトマト「さやまる」販売開始 日本郵便2025年2月5日
-
佐賀「いちごさん」表参道カフェなどとコラボ「いちごさんどう2025 」開催中2025年2月5日
-
温暖化に負けない兵庫県新しいお米「コ・ノ・ホ・シ」2025年秋に誕生2025年2月5日
-
荻窪「欧風カレー&シチュー専門店トマト」監修「スパイス織りなすビーフカレー」新発売 ハウス食品2025年2月5日