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【農林中金100周年】奥和登理事長に聞く 「農を支える土台に」➀ 地域からの「いいね」追求2024年1月9日

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農林中央金庫が昨年12月に創立100年を迎えた。農村事情の変化とともに事業形態も変わりつつある。奥和登理事長に取り巻く情勢と課題など聞いた。聞き手はJA福島中央会最高顧問で前JA全中副会長の菅野孝志氏。

菅野 ロシアのウクライナ侵攻、最近の中東情勢、そのなかでの日本の国力の低下など、まずは現在の世界と日本の情勢についての認識からお聞かせください。

奥和登理事長農林中央金庫 奥和登理事長

 戦後約80年の秩序が世界的に壊れつつあると思います。米国とソビエトの関係が壊れ中国が台頭してきましたが、現在はグローバルサウスといわれる途上国だった国が力を持ち、それぞれが発言するようになっています。昔の秩序から新しい秩序に移り変わる時期という気がしています。

同時に、今までは経済成長一本やりでGDPが伸びればいいんだと考えてきたと思いますが、その結果として世界中にお金があふれ、反動として資源価格が上がるなど、いろいろな歪みが出ているのではないか。この先、人類は何の価値を求めて生きていくのかということも考えさせられる気がします。

昨年はしばしばコロナ、ウクライナ、インフレと三つのカタカナで情勢が語られましたが、人類がこれだけ自然を開拓していると、今まで人間に触れなかったウイルスがあちこちで出現することが想定されるため、今後は新型コロナと同等の感染症は起こりうるものものとして対応していく必要があるのではないかと思います。

それから、年々、気候変動も激しくなっています。人間社会が新しい秩序に移り変わろうとしているなか、人間と自然の関係も変わり、未知とのウイルスとの接触、さらに気候も変動していくという、非常に混沌とした世界が続くだろうと思っています。

そのなかで日本は今まで良質なものを作り、それを輸出することで収益を得てきましたが、、現在は、日本は投資したものから配当を得て収益を確保する格好に変遷しています。

ところが、その配当はなかなか日本に帰ってくることがなく、さらなる投資に向けられていくので、なかなかリターンが伴わない。リターンがあれば円が高くなっていくのですが、投資先でぐるぐる回っていくので、お金の流れとしてやはり構造的に円安になりやすいということだと思っています。

世の中が混沌としていくなかで日本は人口減少もあって国力が低下し、買いたいものを買いたい時に買える状況ではなくなるということですから、いかに自分を守るか、国としての自立を考えていくか、こういう時代のど真ん中にいるのだと思います。

菅野 そこにちょうど農林中金は創立100年を迎えたということになります。理事長としてどんな思いをお持ちですか。

 農林中金のスタートは1923年ですから、関東大震災の年です。もともとは10月に営業を開始する予定が大震災で12月20日になったということですから、スタート自体が難産の末だったと認識しています。

その後、皆さまに支えられ、この日を迎えているわけですが、時代の変化とともに農林中金の基本的な役割は変わってきたと思います。

設立当初はまさに農村にお金がない、営農資金がないということでしたから、そこにいかにお金を届けるかということが目的だったわけですが、その後、農村の経済状況も変わり、全体としてどちらかと言えばお金が余るようになった。農協も余裕資金の運用という時代になってきました。

「あぜ道からウォールストリートへ」という表現もありました。当初、農林中金はお金を融資するというあぜ道の方に向かっていたんですが、農村や農協の経済状況が豊かになって運用に力を注げということになっていった。その後、法律が変わり、会員の経営指導も役割になりました。

そして今は原点返りということかもしれませんが、食と農です。これを維持するためにも、やはり気候変動対応を含めたサステナビリティ(持続可能性)により力を入れていかなければいけません。ここにきてまたチャプター、章が変わってきているということだと思います。

振り返れば農業融資銀行から余裕金の運用銀行になり、その後会員の経営指導、食と農のサステナビリティといった形で、果たすべき機能や役割が積み重なってきているという印象です。

食料主権は国のかたち

前JA全中副会長 菅野孝志氏前JA全中副会長 菅野孝志氏

菅野 食と農という問題を考えますと、今年は食料・農業・農村基本法が改正されます。38%の自給率は先進諸国のなかで余りにも低い。一方で先ほど指摘された日本の国力という点では、これは国力のベースを成すことではないか。どんな改正を期待しますか。

 国は食料安全保障について、国内農業の供給力、備蓄、そして海外との通商という3本柱をしっかりと立てていくとしていますが、まさにそのとおりだと思っています。

そういうなかで今のご指摘を考えると、世の中が非常に混乱するなかで自立、自存を考えるというとき、それは何に依って立っているのかが問われることになりますが、まさに自分たちは食と農という土台の上にきちんと立っているのかということだと思います。

食料政策、それから防衛政策といった枠組みは非常に大切ですから、食料安全保障を含めた国のかたちを成すものとしてしっかり議論していかなければいけないことだと思います。

そのなかで自給力を維持するためには、やはり農業者の所得がなければなりません。農業者の所得は価格の問題に直結するわけですが、一つのものをいくらで売って、相手はいくらで買うのかというとき、結局、その物の価値をどう考えるかということになると思います。

【農林中金100周年】奥和登理事長に聞く 「農を支える土台に」② 農の「見える化」重要 へ続く

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