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【対談】二つの戦争に米国一強の驕り 元外務省欧亜局長・東郷和彦氏×東大名誉教授・谷口信和氏④"戦略的互恵"長期的に2024年1月11日

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2023年は温暖化と密接に関係のある異常気象に悩まされ、環境破壊の最たる戦争が再び勃発した。ウクライナに続き中東・パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとイスラエル軍との戦闘だ。グローバル化した中で日本も対岸の火事ではいられない。この状況をどう見るか元外務省欧亜局長の東郷和彦氏と東京大学名誉教授の谷口信和氏が対談した。(対談は2023年12月14日に実施)

東郷 私の祖父(東郷茂徳・元外務大臣)はA級戦犯で、靖国神社に合祀されています。死んでいった兵士が思ったのは首相ではなく天皇陛下ですから、A級戦犯を分祀して、天皇陛下が訪問できるような環境を作ることが私たちの責任じゃないか。靖国神社には教義があって、一度祀ったら分祀は理論的に不可能だとされていますが、何か知恵が出るはずだと思います。中国と意思疎通を図り、習近平国家主席にぜひ来てもらいたい。

谷口 難しいでしょうね。

東郷 固定観念では難しそうですが、大部分の兵士の気持ちに合うことだし、私にも発言権があります。その話をしたら、中国人は真剣に聞いていました。

谷口 私の父は庶民で戦争にはいきましたが、戦争は好きではなかったです。しかし、戦後の高度成長期に菊花会の会長になってからはかなりの期間、靖国神社に菊の花を奉納していました。こうしたアンビバレントな庶民の気持ちからしても、合祀問題が解決すると風向きが変わるかなあと期待するのですが。

東郷 私もそう思うんですね。⑤処理水の問題もありますが、尖閣と靖国に比べれば簡単に思えます。

⑥日中関係の基本理念の問題があります。1972年は日中国交回復の年でキーワードは「平和共存」、72年体制ともいわれます。今は2008年体制というもので、キーワードは08年共同声明に明記された「戦略的互恵」です。習近平と岸田文雄総理がサンフランシスコで話した時、習近平の方から戦略的互恵と言い出した。古い革袋に新しい酒を入れるように、お互いの共通の方向性を大切にしたい。この6点を挙げて議論しました。

日中両国は今目先のことばかり考えますが、長期の見通しを持たなければ。

谷口 当面の対策ばかり考えないで、長期の展望をちゃんと持たないといけない。農業政策にも通じますね。今日はありがとうございました。

東大名誉教授 谷口信和氏東大名誉教授 谷口信和氏

【対談を終えて】
日本では二つの戦争を権威主義的体制(テロ組織)VS自由民主主義体制の戦いと位置づける米国の見方が支配的だ▼しかし、停戦を求める国連総会の場での日本の対応はウクライナ戦争では米国に同調し、ガザ・イスラエル戦争では米国から離反した▼二つの戦争とも今起きていることを見るだけでは不十分で、冷戦体制の崩壊と米国一強体制の成立・驕(おご)りという観点から見直すべきだとの東郷氏の指摘は極めて説得力がある▼米中の対立が日本を戦争に巻き込む危険性があるなかで、靖国神社におけるA級戦犯の分祀提案については、元外交官としての矜持と深い人間性に感動を覚えた。

(谷口信和)

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