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【対談】二つの戦争に米国一強の驕り 元外務省欧亜局長・東郷和彦氏×東大名誉教授・谷口信和氏②米英の正義"和平遠く2024年1月11日

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2023年は温暖化と密接に関係のある異常気象に悩まされ、環境破壊の最たる戦争が再び勃発した。ウクライナに続き中東・パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとイスラエル軍との戦闘だ。グローバル化した中で日本も対岸の火事ではいられない。この状況をどう見るか元外務省欧亜局長の東郷和彦氏と東京大学名誉教授の谷口信和氏が対談した。(対談は2023年12月14日に実施)

東大名誉教授・谷口信和氏東大名誉教授 谷口信和氏

谷口 言葉を変えさせようとしたでしょう。ロシア語をウクライナ語に。あれが大きかったんじゃないでしょうか。

東郷 言葉は大きいです。ゼレンスキーは「クリミアを取り戻す」と言い、東部におけるロシア系住民の保護もやめた。プーチンからすると「戦争に追い込まれた」のです。

その時にバイデンが言い出し、多くの米国人にすんなり受け入れられたのが、「プーチンはアンプロボークト ウォー、挑発されていないのに戦争を起こした。だから悪い」というものです。しかし、プーチンからみると、プロボーク(挑発)され続けて堪忍袋の緒が切れたというのが実感なんです。

だから「たしかにピストルを撃ったのはプーチンだ。それには責任がある。けれども弾を込めたピストルを渡したのは米国だ。そこにも一定の責任はあるのでは」という考え方が、米国でも少しずつ増えています。

2022年2月24日に戦争が始まった。プーチンはちょっと攻めればウクライナはすぐ落ちるかと思ったら、そうじゃなかった。誤算でした。

両国とも戦争の長期化は避けたい。3月29日にイスタンブールで和平会議が行われます。ウクライナはドイツのシュレーダー元首相とイスラエルのナフタリ・ベネット元首相を仲介者に立て、合意が成立しかけます。その時、英国からボリス・ジョンソン首相(当時)が飛んできて合意を止めた。背景はバイデンでしょう。その直前にブチャ(2022年3月、ロシア軍が民間人を殺害したとされる事件)の虐殺が報ぜられます。

谷口 あれほどひどい虐殺があって......。

東郷 3月29日合意提案では、クリミアについては「15年話し合う」という案だったのですが、4月6日のウクライナ強硬提案では、それが抜けた。ロシアは「ふざけるな」ですよ。ウクライナは「米国と英国に言われて正義のために戦うのだから、そのための力を無尽蔵に与えろ」と大きな援助を求めるようになりました。

谷口 価値観の戦争になったということですか。

東郷 何と表現するかは考えていかないといけないのですが、繰り返し申し上げているように、世界の圧倒的一強になった米国が「米国の価値」を世界に広める。それを邪魔するプーチンをつぶせ、という考えが背景にあったのは否定できないと思います。

和平をつぶした理由とされた「ブチャ」とは何だったか。詳しく調べた米国人のゴードン・ハーンは「アゾフ連隊の自作自演」の面を指摘し、ロシアも真相調査を国連に求めています。今同様な証言が多数でています。

それから一年戦況はウクライナ・米英に有利に展開しますが、2023年の半ばから戦況が膠着するなか、様々な要因が重なり、ウクライナでは、ゼレンスキーとザルジニー司令官の意見が割れ、米誌「タイム」は「ロシア軍の全領域からの排除に固執するゼレンスキーは裸の王様になった」と報じています。1年後に迫った米大統領選挙がどうなるかで戦争にも影響が出るでしょう。バイデンが残れば戦争が続く。日本外交にガッツがあれば「戦争はやめましょう」と、まずは米国に言うべきです。

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