JAの活動:特集
【提言2024】改めて問う持続可能 京都大学人文科学研究所准教授 藤原辰史氏2024年1月26日
2023年、世界は地球沸騰化の時代に突入、地上ではロシアのウクライナ侵攻が続き、さらに中東情勢も深刻化、混迷と対立が深まるなかで2024年を迎える。本紙新年号は「踏み出せ! 持続可能な社会へ」をテーマに、世界情勢と日本の未来を見越して、農政をはじめとした政治、政策、そして農業協同組合への提言を幅広く識者に発信してもらう。
藤原辰史氏
履き違えていませんか。「持続可能」の意味を。なぜ、世界中の使い手たちは本来の意味を理解しないまま使うのでしょうか。納得できません。
「持続可能」という言葉の主語は、経済ではありません。工業でも農業でもない。厳密にいえば、人類でさえありません。答えは、地球です。水面上昇、森林火災、土壌・水質・大気汚染によって、地球の循環の営みが危機に瀕しています。
ですから、極論をいえば、人類が存在しない方が地球の持続にとって都合がよいのであれば、人類絶滅が地球の「持続可能」への最大の貢献です。しかしながら、あなたはよくても、若い世代は地球破壊から逃げきれない。どうしますか、というのが、いま私たちに突きつけられている問題の実状なのです。
農業も同様です。地球を汚染し土壌を荒廃させる農業であれば、やらないほうが「持続可能」にふさわしい。化学肥料など化石燃料に依存した農業も同様。もちろん、変化できないことを農家の環境意識の低さのせいだけにしてはいけません。逆風のなか農家は生きるのに必死なんです。だから、政治と制度、そして農業の自然破壊を止める絶好の位置にいるJAが、根幹から変わらなくてはなりません。
しかし、現在の国際政治の主流は、中国も含めて資本主義の運動を支持するものです。資本主義という車はブレーキもハンドルを持っていません。たとえ、人間や地球を破壊することがわかってもひき逃げしかしてこなかった。さて、どうしますか。
国家の借金は増えるばかりなのに防衛費は来年度6兆8000億円に膨れ上がります。たとえば、そんな政治の傾向をまずは選挙で止め、代わりに高校まで有機食材の完全給食を導入するのはどうでしょう。耕作放棄地も用いて食材を定期的に提供する若手農家を募集し、次世代の農業を育てる。これくらいの大胆な総合的施策が求められているはずです。いずれにしても、時間はほとんど残されていません。
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