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JAの活動:食料・農業・農村 どうするのか? この国のかたち

【現地レポート・茨城農業に迫る】「協同の理念」は共通  いばらきコープ【食料・農業・農村/どうするのか? この国のかたち】2024年8月7日

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温和な気候と広大で平たんな大地。豊かな自然に恵まれた茨城県。農業は地域の基幹産業として重要な位置を占めている。2021年の農業産出額は4260億円で全国第3位。内訳は園芸が51%、畜産が31%、米が14%。東京中央卸売市場における県産品の青果物取扱高は2004年から20年連続第1位であり、東京などの首都圏の台所を支えている。メロン、栗、レンコン、鶏卵、ピーマン、干し芋、小松菜、ミズナ、チンゲンサイ、セリ、ネギなどは全国1位で、カンショ、梨、レタス、ハクサイなどの生産量も多い。多種多様な品目が多いことが特徴だ。農産物直売所や農産加工、観光農業などの農業生産関連事業も盛んだ。
しかし、同県でも人口減少と高齢化が進み、農業生産基盤が弱体化し、生産資材価格の高騰が追い打ちをかけており、全国共通の課題、問題と同一だ。
こうした農業情勢を踏まえ、県では昨年5月に30年後を見据えたグランドデザイン「茨城農業の将来ビジョン」を策定し、「もうかる農業」の実現や「有機農業といえば茨城」というポジションの確立、輸出を意識した産地の育成などの新機軸を打ち出している。
農協は今後の地域農業をどうしようとしているのか。生協は農産物の流通にどう対応し、農業、農政の動きをどう考えているのか。いばらきコープの木村千秋理事長に聞いた。
(本紙客員編集委員 先﨑千尋)

農協と強固な関係を

料理講習会など食育に関する企画が活発に行われている料理講習会など食育に関する企画が活発に行われている

いばらきコープは茨城県全域がエリア。組合員が40万人を超え、同県の世帯の約33%に相当する。事業は、メインの宅配事業(農水畜産物、食品全般、家庭用品など)のほか、水戸、土浦など県下に店舗を五つ持ち、保障(共済)、サービス(住宅、葬祭など)、福祉事業(デイサービス、訪問介護、高齢者向け住宅など)と広範囲。電気小売事業や移動店舗もある。

関東信越の1都7県に広がっているコープデリグループの一員で、理念・ビジョンは共通。今年の総代会で「ビジョン2035」が決議された。メインのメッセージは「食べるしあわせ、自分らしいくらし。『ともに』の力で、笑顔の明日を」。

産地見学や交流会、料理講習会や食育活動、川、森、湖、海をテーマにした「がっこう」では、親子で環境保全、持続可能なくらしを学んでもらう企画などが活発に行われている。総事業高は445億円(うち宅配は360億円)。職員数1391人(正規538、定時853人)。6月に理事長に就任した木村千秋氏に話を聞いた。

自給率向上が願い

――野菜果実、米、畜産物などの取扱品目の特徴は。

いばらきコープ 木村千秋理事長いばらきコープ 木村千秋理事長

木村 県内産を基本とし、そこで賄えないものは、コープデリグループエリア内、全国規模での産地リレーでの調達としています。いばらきコープでの宅配では、野菜のおよそ半分は茨城県産です。冷凍野菜や総菜、ミールキットなどの原料に産直産地の商品を活用することにも取り組んでいます。

――産地との交渉はどこが担当しているんですか。

木村 コープデリ連合会に委託しています。地元の農産品は茨城から出向した職員も担当しています。

――茨城県には東海第二原発があり、日本原電は再稼働に向けて準備を進めていますが、それに対してはどう考えていますか。

木村 2013年の総代会で「東海第二原発の再稼働に反対する特別決議」を行い、21年3月の水戸地裁判決を支持し、安全を守れない再稼働には反対しています。現在、30km圏内の14市町村が広域避難計画の策定を進めていますが、策定されたのは7市町村にとどまっており、防潮堤の基礎部分に工事の不備が見つかった問題で、原子力規制庁は一部を建て直すことを含めて検討するよう原電に求めました。

東京電力福島第一発電所の事故によって今なお故郷に戻れない方が大勢いらっしゃる状況にあり、再稼働を容認できるものではありません。組合員そして消費者・住民の皆さん一人ひとりが知り、考え、話し合い、自らの意思で行動できるような場・機会を今後も提供していきます。

――改正食料・農業・農村基本法について、日本生活協同組合連合会(日生協)は昨年、農水大臣あてに意見書を出していますが、現場ではどう受け止めていますか。

木村 消費者としては、生産者と一緒に持続可能な食料政策をどう作り上げていくのかが一番の肝。前回はあった自給率の目標を外した。円安や物価高騰で食料安保自体が揺るがされている中で、食料を安定的に利用できるような持続可能な農業を国の政策の中で担保してもらいたい。自給率を上げることが我々の揺るがない願いです。市場原理で動いている価格政策で何かをやろうとするのには限界があります。

――農水省の「みどりの食料システム戦略」をどう考え、対応してますか。

木村 現時点ではコープデリグループの対応方針は決めていませんが、これまで進めてきた①産直商品を中心にしながら、生産者・消費者ともに国内自給を高めていく②環境保全型農法及び有機農産物の取り扱いを拡大していく③アニマルウェルフェアの考えに基づく畜産業を推進していく――などに取り組んでいきます。

――農協陣営への期待をお聞かせください。

木村 生産者団体、産直産地のつき合い方と農協はちょっと違う。生協、農協は同じ協同組合。「協同組合はよりよい世界を築く」。

持続可能な食をどうやって作り続けていくのか、自然をどうやって守っていくのか、地球を守っていくのかは同じ願いなので、同じ方向を目指しています。安心な食べ物が確実に得られるためには農協を外しては考えられない。強固な関係をつくっていきたい。

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