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JAの活動:第45回農協人文化賞

【第45回農協人文化賞】「小さな協同」の実践を目指して 一般文化部門 長野・JA松本ハイランド組合長 田中均氏2024年8月9日

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多年にわたり献身的に農協運動の発展などに寄与した功績者を表彰する第45回農協人文化賞の表彰式が8月6日に開かれた。
JAcomでは、各受賞者の体験やこれまでの活動への思い、そして今後の抱負について、推薦者の言葉とともに順次、掲載する。

長野・松本ハイランド農業協同組合代表理事組合長 田中均氏長野・松本ハイランド農業協同組合代表理事組合長 田中均氏

私の農協人生は、1977年中央協同組合学園を卒業し長野県農協中央会に入会して始まった。3年間支所営農農政係として勤務したが、行政に頼らざるを得ない農政活動が性に合わず、志願して監査士を取得し経営監査係として支所勤務を経て教育部、組織経営部に通算20年勤務した。入会当時から漠然と「20年たったら退職して自分の道を探したい」と思っていたところ、たまたま労務指導担当のとき社会保険労務士を取得していたので、20年の区切りで退職して開業することを思い立ち、我がままをお許しいただいた。

しかし、いざ開業するといっても地盤を引き継いだわけではないので、すぐクライアントが見つかるわけではない。そこで営業活動の傍らスイカ栽培を始めたところ、そちらの方が主業となり、気がつけばいつの間にか専業農家になっていた。

すると、すいか部会役員・信用専門委員・農家組合長・総代会長とJA役が次々回ってきて、とうとう2011年支所担当理事に選出された。そして、非常勤理事を1期経験後、営農経済担当常務3期を経て、2021年に代表理事組合長に選任された。

長野・松本ハイランド農業協同組合代表理事組合長 田中均氏私が常務になった2014年、規制改革会議によって「農協改革」が盛んに叫ばれ、翌年の全国大会で「創造的自己改革」が決議された。当時は常務になったばかりで、この「改革」論議に加わるというより、ついていくのがやっとだったような気がする。そんな私でも常勤として業務を遂行しながら、常に頭の中で「本来の自己改革とは何をすることなのだろうか」と自問自答を繰り返しているうちに、あるきっかけでやるべきことが見えてきた。

そのきっかけとは、2014年から始まった協同活動みらい塾(組合員大学)の初代塾長であった松岡公明さんの「大きな協同と小さな協同」である。残念ながら松岡さんは6期(現在10期)の途中まで塾長を務められ、不慮の事故でお亡くなりになってしまった。当時、松岡さんは農林年金理事長だったので報酬は辞退されたが、必ず2カ月に一度の塾の後開くお酒の入った「反省会」に参加いただき、毎回私がもっぱらその「受講生」として昼間より長い「講義」を聴く役回りを受け持った。

その「講義」を自分なりにそしゃくしてみた。「大きな協同」とは経済合理性の追求であり、例えば連合会事業・合併・支所統廃合・事業連携などだが、これだけでは「みこし」を担がない「ぶら下がり」が生じる。「当事者意識」を持たない「ぶら下がり」の組合員が増えれば、事業基盤・経営基盤が弱体化する。したがって、「当事者意識」を醸成する必要があり、そのためには顔の見える「地域での協同活動」、即ち「小さな協同」の取り組みが必要なのである。つまり、「自己改革」とは、何か新しいことをすることではなく、協同組合として本来の機能を発揮すること、つまり組合員自らが協同活動をすることに他ならないのではないかということである。

そこで、松岡さんの遺志を引き継ぎ「協同活動みらい塾」を継続するとともに、協同活動を実践するステージとして、新たに「支所協同活動運営委員会」を創設(2021年)した。これは、支所担当理事が中心となり組合員自身が参加・参画して、地域の組合員の悩み・願いを解決することを主目的とした委員会である。JAとして予算措置を講じ、キックオフ大会も開催した。最初は「何をやったらいいかわからない」と言った理事もいたが、全支所(22)で取り組み始めている。次の一手は、その取り組みを強化するために「協同活動みらい塾」の卒塾生組織をつくること。さらに、支所の面的基盤組織である農家組合の活性化に取り組み、2025年度から新たな農家組合としてリスタートする予定だ。

この度、農協人文化賞の受賞に当たって、いままでの取り組みを振り返ってみると、「協同活動みらい塾」を始めた高山拓郎元専務や初代塾長の松岡公明さん、そして長らく事務局を務め、この3月病気で亡くなった臼井真知子女史のやり残したことを引き継いだだけのような気がする。

今のJAは「大きな協同」に偏りすぎて、「小さな協同」の実践による「組合員の主体的な参加・参画」の取り組みが弱い。組織・事業・経営の3本柱というが、組織基盤は柱ではなく土台である。土台の弱いところに事業と経営の柱を立てても、いずれ家は傾いてしまう。

受賞を機に、自戒の念を込めながら、これからも先達の教えを守り発展させる覚悟と確信をもつことができました。ありがとうございました。

【略歴】
たなか・ひとし
1956年生まれ。77年中央協同組合学園卒業。同年4月長野県農協中央会入会。97年退職、就農(スイカ、白ネギ)。2011年松本ハイランド農協理事、14年常務理事就任。21年組合長就任、現在に至る。

【推薦の言葉】実践する組合員組織に

田中均氏は組合長になって組合員組織の見直しを行った。JAへの意思反映の場であった組合員会議、支所運営懇談会、支所総代会を「支所協同活動運営委員会」に改め、組合員同士の地域活動の場として位置付けた。これらの会議はJAへの要望が中心であり、組合員自らの主体的な活動につながらないとの反省があった。

JAは経営効率化のため、合併大型化してきているが、このことが組合員のJA離れにもつながっている。組合員のJA運営・地域協同活動への主体的な参加・参画を進める施策として評価される。

また営農経済担当常務の時から取り組んでいるスイカ選果場のDX化を進め、この4月から光センサーを使った新選果システムをスタートさせた。生産・出荷・選別の労働力不足で減産が懸念される状態を解消した。このほか10年にわたり、組合員の学びの場であり、多くの人材を生み出した「協同活動みらい塾」がコロナ禍で厳しい状況から、同氏の強い意思で立ち直らさせた。

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