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JAの活動:第45回農協人文化賞

【米国大統領選の行方と日本の課題】 国際ジャーナリスト 堤未果氏 第45回農協人文化賞特別講演2024年8月9日

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第45回農協人文化賞の表彰式では特別記念講演に国際ジャーナリストの堤未果氏を招いた。堤氏は米国の大統領選の最近の動向などから、日本として取り組むべき課題と農協への期待を語った。概要をまとめた。(文責編集部)

堤未果氏

「自立できる国へ 農協の力が必要」

今日はリクエストを頂きました、今秋の米国大統領選に関連するお話を致します。

7月13日、アメリカのトランプ氏の暗殺未遂事件が起きました。この事件に多くの違和感を感じた人は少なくありません。元大統領が演説する集会場で、どこからでも狙えるオープンな場所で、危険なスポットにシークレットサービスが誰も配置されていなかった、普通はありえません。地元警察は完全に蚊帳の外に置かれ、シークレットサービスとのコミュニケーションも断たれ、トランプ氏から130メートルの距離の建物群は、どれも監視されていなかったのです。通常は時間がかかるDNA鑑定で犯人がすぐに特定されたことにも違和感がありましたね。

時間が経つにつれ、違和感を裏付ける事実が続々と出てきていますが、主要マスコミはもうこの事件を報道しないので、もう日本でも話題から消えてしまいました。

私の元いた業界の話をすると、トランプ氏の暗殺未遂の直前、トランプさんの会社やトランプ支持者が見るメディアの株の巨額の空売りがあり、大きな話題になりました。もし暗殺が成功しトランプ氏が亡くなっていたらすごく儲かった誰かがいた。結局暗殺は失敗し、投資会社は桁を間違えていた、などと謎の釈明とともに数字を訂正しましたが、実に違和感を感じる動きでした。この空売りへの追及は、別な大きなニュースが起きて吹っ飛んでしまいました。皆さんも驚きましたよね、そうです、あの世界規模のシステム障害です。

ここで空売りのことをもっと深掘りしたい?ええ、それについてはさらなる事実が出てきましたが、それより今日はここでもっと大事なことに注目しましょう。

実は、あのシステム障害事件、あれは日本に対するアラームでもあったのです。

世界的なシステム障害が起きた時、影響を受けなかった国がありました。ロシアと中国です。なぜならこの2つの国は、自前のセキュリティーシステムを持っているからです。全部米国のシステムに頼っていたら社会が機能停止してしまう。そうです、これも薬や食料と同じで、我が国にとって安全保障の大事な一部なのです。

今回の大統領選挙はデジタル技術の進化に伴い、かつてないほどの認知戦が繰り広げられるでしょう。もちろん主要マスコミは言わずもがな、これは日米共に選挙の時は似たようなものですが。例えば最近ロイター通信は、ハリスさんの支持率が44%でトランプ氏の支持率が42%という数字を出して、ハリスさんの人気の方が高いという世論調査の結果を報道しましたね。でも蓋を開けてみると、そもそも調査したサンプル数の段階で民主党支持者の方を多く入れることで、数字を水増ししていたことがすぐにバレました。

私が皆さんの前でトランプ氏当選を予測した、2016年の選挙を覚えていますか?あの時と全く同じパターンです。あの時も日米のマスコミはヒラリーさん優勢でした。どのみち日米共に、世論調査は結果の数値だけ鵜呑みにしてはダメなんです。サンプル数や、質問の仕方、どこの層に聞いたのか?調査を実施した企業がどちらの党を支援しているかなど、構成要素の方を見て下さい。そして主要マスコミ以上に重要なのは、年々捏造がひどくなるデジタル空間の方です。前回も前々回も、ビッグテックの選挙介入が米国議会で問題になりました。メタ社(旧フェイスブック)は早速、暗殺未遂事件の際にAP通信の記者が撮影した、片腕を振り上げるトランプ氏と星条旗の写真が検索に反映されないように操作して炎上しています。

2019年12月、安倍晋三総理とトランプ大統領(当時)が結んだ「日米デジタル貿易協定」を覚えていますか?前にもお話しましたが、ビッグテックにばかり有利な不平等協定です。あれは今後、じわじわとボディブローのように日本に打撃を与えてくるでしょう。これはトランプさんとハリスさん、どちらになっても、バックにいる企業側が必ずデジタルを通して日本の資産sを狙ってきます。私たちはここに注意を向け、まずはデジタル安全保障の方を早急に何とかしなければなりません。

大統領選挙報道は、大統領候補の人となりに集中していますが、米国の政治を動かしているのは閣僚です。企業の人が、「回転ドア」をくぐって政府に入って法律を作り、できたらドアから外に出て企業に戻って、出世の階段を登る。ブラックロック社やレイセオン社、メタ社やファイザー社等、巨大な多国籍企業のトップの来日予定を、注意してよく見ていて下さい。米国大統領選挙の年は特に、不本意であろうとも運命共同体である日米政府の動きが重要です。裏金だけでなく、そのまた裏で進む政府のこうした動きに、私たちは目を光らせていなければなりません。

今のままだとトランプさんになる可能性が非常に高い。ただし選挙ができなくなるような大きな事件、たとえばシステム障害や金融危機、戦争や大規模災害、パンデミックなどが起きたら話は別ですから、こちらを警戒しておくべきでしょう。どちらが大統領になっても、選挙が終わればすぐに「巨大なビジネスの草刈り場」として日本に手が伸びてきます。フードテックにmRNAワクチン、NTTにデジタル通貨・・・中でも特に「食と農の自治」は、絶対です。「地方自治法改正」に「農業有事法」など、私たちの手足を地方から縛る法改正が今国会で続々と成立してしまいました。とりわけこの状況で、「緊急事態条項」など、絶対に通してはいけません。

その一方で「朗報」もお伝えしましょう。日本の在来種を公共資産として守る法案が、4年がかりでこの通常国会に提出されました。川田龍平参議院議員を筆頭に、印鑰智哉さんや鈴木先生、私も参加して毎週会議を開き、中身を練り上げ、勉強会を重ね、ここにいらっしゃる多くの農業関係の方々にも力を貸して頂きながら作成したものです。4年かかってようやく超党派で提出されたこの法案の名は「ローカルフード法(通称)」。地域のタネから作る循環型食システムです。この法律ができれば、あとは都道府県でローカルフード条例を作り、地方自治で食と農のシステムを作り、国内外の有事に強い「食と農の基盤」を国産で作ることを目指してゆく。今回は時間切れになりましたが次の臨時国会で再度提出されるので、是非これを成立させ、食と農から日本の主権を取り戻してゆきましょう。引き続き、皆さんの力をお貸し下さい。

かつて「農協組合員1000万人が動けば日本は救える」と言った方がいらっしゃいました。そんなわけないだろうとせせら笑う声が聞こえます。でも本当にそうでしょうか?今から3ヶ月、日米マスコミは大統領選を競馬レースのように報道し、仮想空間では認知戦合戦になるでしょう。そしてこんな時だからこそ、土に触れ、風を感じ、地に足をつけ、自分の頭で考えながら、食と農と協同組合という、絶対に奪われてはならないものを死守してゆくことが、自立できる国につながる力になるのです。

日本の食と農のために、引き続き頑張りましょう。

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