JAの活動:第45回農協人文化賞
【第45回農協人文化賞】農協と歴史と伝統磨く 特別賞 茨城・鯉淵学園農業栄養専門学校学園長 長谷川量平氏2024年8月19日
多年にわたり献身的に農協運動の発展などに寄与した功績者を表彰する第45回農協人文化賞の表彰式が8月6日に開かれた。JAcomでは、各受賞者の体験やこれまでの活動への思い、そして今後の抱負について、推薦者の言葉とともに順次、掲載する。
茨城・鯉淵学園農業栄養専門学校学園長 長谷川量平氏
2016年 タイ王国タマサート大学より栄誉賞を受賞
私は、1970年静岡県静岡市生まれで、大学で、農産物の流通と安全性などを学びました。大学院修了後、食品会社に勤務し、生産管理業務、コンビニのチキン総菜の輸入業務などを行っていました。日々日本の皆さんにおいしくて安全な食べ物を安定的に供給することを考え、今ではブラックといわれるほどの勤務時間を過ごしていました。入社1年が過ぎたとき、心身ともに丈夫であるという理由からタイへの出向を命じられ、食鳥処理場と加工場を併設した日本では考えられない規模の巨大な工場で、約1500人のタイの方々の中で唯一の日本人としての勤務を経験しました。当時の経験は、現在においても貴重な糧となっております。
タイでの駐在勤務中に、現在の勤務先である鯉淵学園にポストがあるのでどうかとの誘いを受けました。未だ勉強が足りないなと自覚していた私は、「勉強ができる環境である」との言葉をうけて、小躍りする気持ちで、鯉淵学園へ行くことを決めました。鯉淵学園は戦前、満蒙開拓義勇軍幹部訓練所として開校し、終戦直後、農協の前身の一つである全国農業会により敷地、公社などの財産を引き継がれ、現在の鯉淵学園となりました。
1970年まで農業協同組合科があり、協同組合教育を展開していました。1969年に全国農業協同組合中央会に中央組合学園が設立されたことに伴い、農業協同組合科の職員、学生とともに移管しましたが、鯉淵学園での協同組合教育は継続しており、JAグループには1500人の鯉淵卒業生が活躍しています。
現在は、農業者、JA職員を養成する、アグリビジネス科と、「農村生活改善事業」を起源として、栄養士養成を行う食品栄養科の2学科で、修業年数は2年です。私は、1996年より、鯉淵学園で、社会科学系科目(農業経済、フードシステム)や情報処理科目を担当しました。鯉淵学園では、大学の紀要にあたる「鯉淵学園教育研究報告」や、学会で、食品会社での経験を生かした、食肉流通研究や、外国人労働者研究を投稿・発表するなどしています。2006年には、系統の生乳流通・牛乳生産におけるHACCP(危害要因分析・重要管理点)導入をテーマに、目標としていた学位(博士(農学))を多くの方々の協力のもと取得しております。
長野県伊那市主催の「農業の魅力発見セミナー」での講演
上述のように、鯉淵学園は、JAグループとは非常に近しい歴史をもつ学校ですので、日常的な教育においてもご協力いただいています。「農協派遣実習」として、多くの学生を各農協に派遣するなどして、学生への農業協同組合活動の理解を深めさせていただいており、お世話になった農協様には本紙面をお借りして、お礼申し上げるとともに、ご迷惑をおかけしていることをお詫び申し上げます。こうした日常的なご協力が多くの卒業生をJAグループに就職させる要因となっていると思います。
また、1998年より、茨城県農業協同組合中央会の「営農指導員研修」、「中核職員研修」にて、農業情報、フードシステム、食育、食品の安全などの科目および認証試験の担当をさせていただき、講義を通じて、各JAの実態などを講師である私が反対に勉強させていただく機会となりました。
また、会社員時代にタイに駐在した経験、および鯉淵学園でのタイとの国際交流の経験を生かし、茨城県の技能実習生事業にも協力し、茨城県内のJAおよび、JA関連の監理団体にタイとのつながりを作るきっかけを作らせていただきました。
2023年10月からは、新世紀JA研究会の常任幹事となり、会員のJAのみならず、全国のJAに対して、課題別セミナーや全国セミナーの運営や情報発信に努めています。今後、今まで16年間の研究会の歴史を踏まえつつ、新たな新世紀JA研究会の運営をすべく日々奮闘していこうと思います。
以上のような活動を行っておるものでありますが、今回の受賞は、まだまだ研鑽(けんさん)が足りない長谷川個人の受賞というよりも、鯉淵学園のJAグループに対する貢献を評価されたものと思っております。また、鯉淵学園 学園長の受賞は、1979年の第2回一般文化部門において、農協論、農協経営論の大家である、鞍田純先生以来の受賞であります。1991年の第13回においては同じく一般文化部門において、鯉淵学園から農協組合学園に移られた宮島三男先生が受賞されております。
両先生ともに、私からしたら雲の上の存在でありますので、今回の受賞を改めて大変恐縮するとともに、今後も鯉淵学園を2025年で80周年を迎える歴史と伝統を胸に、発展させていくことを両先生方をはじめ、JAグループで働く多くの同窓生に誓い、私の抱負といたします。
【略歴】
はせがわ・りょうへい
1970年10月10日生まれ。東京農工大学連合農学研究科農林経済・経済学修了博士(農学)。1995年修士課程修了後、食品会社に入社。1997年より鯉淵学園農業栄養専門学校へ奉職。情報処理、フードシステム、畜産物流通、情報経済などの科目を担当<役職委員など>
1998年より JA茨城営農指導認証審査、中核職員研修講師
2005年 タイ王国農業協同省開発普及局 顧問
2006年4月より タイ王国タマサート大学東アジア研究所客員研究員
2007年10月より 筑波大学バイオシステム研究科非常勤講師
2011年10月より 青山学院大学地球共生学部非常勤講師
【推薦の言葉】JAへ人材送り込む
長谷川量平氏は鯉淵学園農業栄養専門学校で1996年から社会科学系科目(農業経済、フードシステム)や情報処理科目を担当。同学園は学外実習でJAグループへ「農協派遣実習」として、多くの学生を派遣するなど、学生への農業協同組合への理解を深め、多くの卒業生をJAグループへ送り出している。
鯉淵学園は戦前、満蒙開拓義勇軍幹部訓練所だったが、戦後、農協の前身の一つである全国農業会に引き継がれ現在の姿になった。これまでJAグループで活躍している卒業生は約1500人に達し、有力な人材供給源になっている。
同氏は、茨城県農協中央会が実施している営農指導員研修、中核職員研修で、農業情報、フードシステム、食育、食品の安全などの科目を担当。会社員だったころのタイ駐在や学園におけるタイとの国際交流の経験を生かし、茨城県の技能実習生事業にも協力し、県内のJA関連団体等とタイとのつなぎ役を果たしている。
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日