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JAの活動:第30回JA全国大会 持続可能な社会をめざして

農協が直面する四つの課題―地域・組合員の視点欠かせず 横浜国大名誉教授・田代洋一氏【第30回JA全国大会特集】2024年9月13日

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第1回の農協全国大会は1951年。誕生間もない総合農協の経営危機の時だった。時々の危機に立ち向かうのが全国大会の使命である。そして今まさに、地球環境危機、農協経営危機の時である。そこで第30回大会は「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力」をメインテーマにし、本紙特集「協同組合が地球を救う」は、「地域」を「地球」に広げた。そのような第30回大会への四つの期待を述べる。

横浜国立大学名誉教授・田代洋一氏.jpg横浜国立大学名誉教授・田代洋一氏

国消国産・地産地消の旗を高く(第一の期待)

今夏、スーパーの店頭からコメが消えた。政府は「新米が出るから大丈夫」とかわしたが、コメは主食であり、それが端境期に消えたのは由々しき事態である。今年は年初から消費者米価は上昇傾向にあり、明らかに政府の需給見通し、適正在庫政策の誤りである。

その背景にはコメ減らし、田んぼ減らしに邁進し、食料自給率向上をないがしろにする農政がある。改正基本法も食料安全保障を基本理念に据えたが、食料自給率には触れず、基本計画で取り上げるにとどめた。それに対してJAは「国消国産」の旗をもっと高く掲げるべきだ。なぜなら「国消国産」は政府の意味での「食料自給率」より優れた概念だからである。

食料自給率=<国内生産/国内消費>だが、国消国産=<国内消費仕向け生産/国内消費>である。違いは、前者の分子には輸出も入るが、後者の分子には輸出は入らない点だ。改正基本法は「海外への輸出を図ること」を強調し、輸出で自給率を高める姿勢だ。それでは誰のための自給率か、問われる。それに対して国消国産は、国内に住む人々への供給確保を主眼とする。改正基本法は「国民一人一人の食料安全保障」を基本理念とするが、その趣旨にも、輸出込みの食料自給率よりも国消国産の方が即している。

国消国産は地産地消とペアである。毎年の「骨太方針」は財務省の要求が露骨で嫌だが、今年のそれにはオヤッと思わせる注がついている。すなわち、一人一人の食料安全保障のための「食品アクセスの改善にも貢献する都市農業を振興する」。これすなわち「地産地消」に他ならない。さらに直売所で売れ残った新鮮な野菜等はフードバンクや子ども食堂にも使え、その面からも「一人一人」を支える。

国消国産や地産地消は、かさばる穀物等の輸送距離を短くすることで地球温暖化ガスの排出削減にも貢献する。

環境負荷低減的なかたちで国消国産・地産地消を追求するJAの姿をもっと前に出そう。

経常利益低下に歯止めをかける(第二の期待)

全国JAの経常利益のシミュレーション結果では、平成期に実績2500億円台だったのが、2022年度には2000億円程度、成行きに任せていたら2026年度には500億円に減る。

なぜかくも経常利益が減るのか。この間、JAは必死に「農業所得の増大」に取り組んできた。減少の主因はマイナス・低金利政策と農林中金の奨励金金利の引き下げにある。

このように主因がJA外にある時、JAは何をすべきか。先のシミュレーションによれば、平成期の2500億円まで戻すことではなく、成行きでは500億円まで下がるところを1500億円台にとどめる覚悟である。つまり各JAともギリギリどの水準で踏ん張るのかが勝負どころになっている。

経常利益を取り戻すのに手取り早いのは事業管理費を削減することだ。しかし地域密着業態であるJAにとっては、支店や集出荷施設等の統廃合等は、長い目でみて事業縮小につながりかねない。

その点に関してあるJA経営陣のお話を伺ったところ、組合員への還元水準をできる限り守ること、施設更新等に備え一定の内部留保を確保すること、なるべく施設統廃合ではなく機能統合等にとどめつつ、農業関連・生活関連の赤字を減らすことだった。課題はそのように立てられるべきと思う。

しかし既に事業利益が赤字のJAも発生している。そこでは、地域からJAを無くさないためには、「協同」のエリアを広げる必要も出てこよう。合併が上位平準化を狙う限り、「上位」農協にとってのメリットは小さい。「組合員のため」を思えば、上位農協が躊躇するのは当然である。しかしそこには協同の環(エリア)をどう広げるかという課題もある。

1県1JAが西日本のみならず産地県や東日本にも広がる気配がある。その背景にはJAグループの組織事業の三段階制が重荷になっている面もあるのではないか。実際の1県1JA化は、全てを県一本化するのではなく、合併前農協を地区本部として残し、とくに営農経済面での地域性に配慮している。本稿は1県1JA化を勧めるものではないが、全JAグループ的な問題として議論する必要があるのではないか。

支店拠点主義にたちもどる(第三の期待)

農協全国大会の一つのピークは2012年の第26回だった。東日本大震災、原発事故を受けて、「人件費を主体にしたコスト削減は限界」として、事業伸長に向けて「支店拠点主義」を打ち出した。それは「食と農を基軸に地域に根差した協同組合」の原点でもある。今大会のメインテーマ「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力」は支店拠点主義を抜きには追求できない。

支店は、中学校区や昭和合併の市町といった歴史や地域に根付いた「共同体」エリアを踏まえている。そこは非常勤理事の選出基盤であり、支店運営委員会は正准組合員、非常勤理事、支店職員等がともに地域の営農・生活課題、農業まつり、地域イベント等に取り組む場であり、地域と農協をつなぐ場である。

支店は、かつては農業者が、そこに行くと仲間に会え、会えば世間話ができる場であった。コロナは人間にとって対面での世間話、無駄話がいかに大切かを思い知らせた。今日の支店は機能分化し、金融支店化したところも多いが、同時に組合員組織を担当しているところもある。地域のシンボル、寄り合い所としてのあり方を模索すべきである。

農協のさらなる土台には生産組合(農家組合、「支部」等の集落組織)がある。これは農協がどれだけ大きくなろうと変わらない土台だが、どうやら西日本から崩れてきている。組合長の成り手がいない、一度なったらやめられない、文書配布などがしんどい、できれば解散したい、といった状況である。

他方、生産組合に活動費を支給するなどテコ入れを図っている農協も少なからずある。支所長(職員)が分担して「集落を見守る」農協、支援担当者を置く農協もある。<生産組合支所(運営委員会)非常勤理事農協>を協同活動の生命線として、その双方向性の強化や目詰まり点検が欠かせない。

運動体としての農協を取り戻す(第四の課題)

農協とは、組織と経営、運動と事業の二面体だ。安倍官邸農政は、運動体として農協面を徹底的につぶし、経営・事業として農業所得の増大にまい進させようとした。加えてコロナは対面運動を困難にした。その困難の中で第29回大会(2021年)は「対話運動」を提起し、この3年間、常勤理事等を先頭に各JAとも対話運動に励んだ。コロナを跳ね返し組合員と農協の距離を縮める効果を上げたと言える。

対話運動は続けるとして、第30回大会はいかなる新たな運動スローガンを掲げるのか。経営スローガンとして「協同活動と総合事業の好循環」が掲げられてはいるが、運動体としてのスローガンがほしい。例えば、准組合員まで減りだしかねないなかで、組合員の拡大、仲間づくりなどは大きな課題と言えよう。大会を通じて、組合員、職員、理事等がともに取り組む3年間の運動スローガンを高く掲げてほしい。

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