JAの活動:第30回JA全国大会 持続可能な社会をめざして
組織協議"不消化"明らか "農協の原点"取り戻せ 全農協労連委員長 信川幸之助氏【第30回JA全国大会特集】2024年9月19日
10月18日に開かれる第30回JA全国大会を前に、全国の農協・農業関連団体に働く労働者に向けてメッセージを全農協労連中央執行委員長の信川幸之氏に寄稿してもらった。 ※全国の農協・農業関連団体に働く労働者・労働組合の立場で、全国農団労にも寄稿を検討頂いています
全農協労連 中央執行委員長 信川幸之助氏
はじめに
全国農業協同組合労働組合連合会(全農協労連)は、全国の農協、連合会、農業関連団体に働く労働者・労働組合でつくる連合体です。戦後の食料難や労働者の劣悪な環境をはじめさまざまな困難の壁が立ちふさがる中で、全国の仲間の団結と連帯によって、農業の発展と、民主的な農協と運営の確立、労働者と国民のくらしを守るたたかいに奮闘してきました。
また、他産業の労働者・消費者など、広範な方々と一緒に、国民的な課題としての食料・農業問題にも取り組んでいます。労働者、農民、消費者、医療関係団体で構成する、国民の食料・農業と健康と命を守る運動全国連絡会(全国食健連)にも加盟し取り組みを進めてきました。
農政や農協事業、運営の課題についても、研究者の先生方、農協経営者とともに「農業・農協問題研究所」を設立し、分析や研究を深めてきています。今年は3年に一度のJA農協全国大会の年にあたり、委託研究「組織協議案の分析」を農業・農協問題研究所お願いし、同研究所の9月研究例会で、研究内容の報告と討論を行いました。
全農協労連としては、7月に開催した第126回定期大会で、特別決議『第30回JA全国大会にあたり「農協自己改革」を総括し農政の抜本的転換と農協の本来的役割発揮に向けた討議を求める決議』を採択いたしました。
決議では、農協系統の方針を決定するにあたって、最も重要なことは、農家組合員や職員と広く話し合い、これまで行ってきた合理化と職員負担転嫁型の「農協自己改革」を批判的に総括して、協同組合らしい農協運営を取り戻し構造改革型の農業・農協政策を転換していく運動を打ち出すことを求めています。
しかし、肝心の組織協議案は、ほとんどの農協で一部担当役職員での共有にとどまり、農家組合員を巻き込んだ組織協議案の議論が出来ていません。また、組織協議案は協同組合を担う「人づくり」にも言及していますが、いま各地で中途退職者が相次ぎ農協・連合会の日常機能が成り立たないほど人員が不足している状況が生まれており、労働強化をともなう人材育成や、研修、農業実習、副業解禁などの意識改革で打開できるかどうかは甚だ疑問です。この点では、もっと農協大会に対して労働者・労働組合からリアルな意見を伝える事が欠かせません。
改定「食料・農業・農村基本法」と第30回JA全国大会
これまでの合併や統廃合のもとで、現場は「限界を超えた」悪循環に陥っています、農家組合員の農協離れだけでなく、職員の中途退職に歯止めが止まらない事態となっています。今回の組織協議案でも「合理化による収支改善の限界」は認めつつ、営農関連施設を含む拠点の集約化や、手数料水準の見直しなどさらなる「合理化」を描いています。
また、改定農基法に対しては、これまで農協系統は「JAグループの要請内容がおおむね反映された」としており、組織協議案でも、農業関連団体が「農業・農村振興に重要な役割を果たしていることが明記された」と自画自賛しました。しかし、農政の本質を見ればさらなる縮小的再編を余儀なくされるのが現実であり、こうした情勢認識は前回の第29回大会より後退していると思います。
農林水産省は、農業従事者が120万人を割り込み、日本の人口の1%と割り込んでいるなか、30年後には今の4分の1 の30万人になると公表しています。今でさえ将来が見通せなくなっている中で、「食料・農業・農村基本法」の改定への消費者の関心と不安に対して、しっかり農協の基本姿勢を打ち出さなければ、地域住民の信頼を得られなくなるのではないかと懸念しています。
今後の取り組みに向けて
全農協労連は、この秋の運動の取り組みとして、「食料・農業・地域を守る」実践と「家族農業を中心として農政の転換」を求める運動を提起しています。
「JA全国大会組織協議案」と、全農協労連の特別決議、そして農業・農協問題研究所への委託研究結果である「農協自己改革下における新たな組織・事業再編の局面と課題」と「第30回JA全国大会組織協議案の分析」などを活用して、全農協労連傘下の組合員の総学習運動を各地域組織で行い、労組員の理解を深めていきたいと思います。
その際、地元の農協経営者や農家組合員と交流や意見交換をおこない、各農協の事業や各地域の問題点とあわせて組織協議案の協議を行っていくこと、また、各県農協中央会とも懇談を持ち意見交換を行っていくことを目指します。全農協労連の組織が無い職場や地域についても、全農協労連の地方本部などを含めて懇談を要請し、全国各地から意見を集約して、産別労働組合として全国連とも意見交換を行う行動を検討しています。また、全国食健連とも連携して、改定農基法について問題点を消費者に宣伝しつつ、国民全体の問題として議論できればと考えます。
新自由主義と協同組合運動
「今だけ、金だけ、自分だけ社会」と、「一人は万人のために万人は一人のために」
グテーレス国連事務総長は、昨年、地球は温暖化の時代から沸騰化の時代に入ったと述べて、世界各国に温暖化対策を進めるように述べています。世界でも日本でも温暖化が深刻になり、今年も昨年以上に35度を超える猛暑日が増え、台風の大型化、線状降水帯など局地的な豪雨、など自然災害が、農業にも大きな被害を与えています。
豪雨や土砂崩れ等、毎年のように被害を受け、離農、廃業により地域コミュニティーが崩壊している地域も見られます。また、自然災害の被害を受けないまでも、高温障害などの被害を受け、農作物の収量の低下や品質の低下なども起きており、これまで以上に対策が求められています。しかし、農家個々の努力だけではこの危機を乗り越えることはできません。
「労農同盟」という言葉があります。労働者は資本家に搾取され、農民は地主に搾取されており、同じ境遇の階級ということを示しています。新自由主義の社会では、一部の富裕層や大企業だけが潤う社会であり、労働者も農民も恩恵はありません。ましてや利潤を生まない協同組合であればなおさらです。
国連は、2019年から、飢餓や貧困を撲滅する施策として、「家族農業の10年」を提唱しています。家族農業の農家が主体となって運営されている日本の農協は特異な組織だと思います。利益、利潤を追求するのではなく、一人の小さな力が集まって助け合う、相互共助の協同組合運動がいまこそ必要です。農協は、「ひとりは万人のために、万人はひとりのために」協同組合運動の原点に立ち返ってこそ、農業の発展に寄与できるのではないでしょうか。
素晴らしい未来の農業のために、農家組合員、農協職員(労組員)、消費者の皆さんの一人ひとりの力で協同組合運動に発展させ、持続可能な社会を築き、地域を元気にできればと思います。
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