JAの活動:第30回JA全国大会 持続可能な社会をめざして
【JAトップ座談会】組合員の「ために」から「ともに」へ 「おらが農協」が活路開く(3)【第30回JA全国大会特集】2024年10月8日
JA全国大会のスローガンは「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力」。JA鳥取県中央会会長で家の光協会会長でもある栗原隆政氏、静岡県JAみっかび組合長の井口義朗氏、長野県JA松本ハイランド組合長の田中均氏を招き、大会に合わせた座談会を企画した。司会は文芸アナリストの大金義昭氏。
【JAトップ座談会】組合員の「ために」から「ともに」へ 「おらが農協」が活路開く(2)から続く
情報発信、対話さらに
大金 話が佳境に入ったところで(笑)、最後に「広報戦略」は?
栗原 「自己改革」の生命線は、「情報発信」や「対話」だと思いを定め、実行してきた。JAがいま何をしているのか、先ずは組合員にしっかり伝えることが大事ですね。
来年は2012年に次いで2回目の「国際協同組合年」です。格差と貧困が広がる社会の中で、協同組合に寄せられている期待は大きい。1回目の時は地域課題の解決や協同組合の役割と活動の認知度アップなどが主題でしたが、今回は「協同組合同士の連携」や世界で10億人が加入する「協同組合の良さ」などを内外に示す時です。
静岡県・JAみっかび組合長 井口義朗氏
井口 1951年にJAが貯払い停止になった当時、再建のために中央会から来てくれた人から「JAの情報は全部出さないかん!」と言われ、町内に有線を引いた経緯があります。以来、「*月*日、防除が始まりました」とかいった放送をずっと続けてきたのですが、この3月でやめた。やめたことへの反応はあまりなかったのですが、スマホに切り替えたら「情報が足りない」という声が聞かれた。
有線で流され必然的に耳に入る情報と、読みにいかないと見られない情報とでは違いがあり、フェイスブックでもインスタでも一番に来るようにしなけりゃいけない。たとえば「三ヶ日ミカン」と検索したらトップにくるような策をめぐらせています。
長野県・JA松本ハイランド組合長 田中均氏
田中 JAからの情報発信は、対内的にも対外的にも極めて重要です。さらに大事なのは、組合員の皆さん自身の情報をJAがどうつかまえるか。それにはやっぱり、組合員に活動に参加してもらうことが一番です。対内的にはJA事業を広報するというよりも、組合員の皆さんの情報を組合員の皆さんに知らしめる。互いの情報を双方向的に共有し合う仕組みがどうつくれるかですね。
栗原 鳥取でも、定例会見の際、生産組織の代表や農家、女性会、青年組織に来てもらって現場の話題を発信しています。また、家の光協会では体験動画ビデオを作って、全国12カ所で試験的に見てもらっていますが好評です。ビデオも使って、まずは本店、支店に足を運んでもらうことから、組合員、地域住民の皆さんとの接点を広げたいと思っています。
JA鳥取県中央会会長、(一社)家の光協会会長 栗原隆政氏
田中 組合員をいかに積極的に登場させるかですよね。
ピンチをチャンスに
大金 農畜産物や生産者は、対外的に言えば最も優れた「外交官」ですからね。
田中 井口さんも言われたように、ピンチをチャンスにしなくちゃいけない。正直いって、子どものころの私は農業が大嫌いで、絶対に後を継がないと思っていた(笑)。20年のサラリーマン生活をしてから、自分で実際に農業をしてみたら、こんなに面白い世界はない。この面白さをどう伝えるか、今もずっと考え続けています。
井口 小説家とか陶芸家とか、誰にも束縛されない人たちが一番幸せな自由人らしい。ミカン農家なんかは最たるものです。サラリーマンなら、どんなに二日酔いでも会社に行かなならん。(笑)
田中 「家」とつく職業は農家、芸術家、音楽家、作家とかみんな自由人なんです(笑)。サラリーマンには「家」がつかない。だから人に使われる。
栗原 農家にもむろん苦労はあります!(笑)
井口 法人化すると、自由人じゃなくなる。従業員に給料を払わないといけないしね。(笑)
田中 「家族農業」が一番いい!
大金 ちょうど時間になりました。(笑)
【座談会を終えて】
百戦錬磨の優れたJAトップの皆さんの自在な意見交換は、軽妙・洒脱で本質をズバリと突き抜く会話が明朗闊達だ。誰よりも危機意識を研ぎ澄ませ、最前線で奮闘する日々の実践に、確固たる信念や確信があるからだろう。困難な時代だからこそ、しなやかにかつ磊落に、組合員とともに前を向き、農業と地域の明るい未来を切り開きたい。記念すべき第30回JA全国大会が、その力強い足がかりになることを切に念じたい。(大金)
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