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JAの活動:第30回JA全国大会 持続可能な社会をめざして

【鼎談 地域の農業と医療に新境地を拓く協同の力】JA佐久浅間と佐久総合病院の新たな挑戦(1)【第30回JA全国大会特集】2024年10月9日

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「農村医学の父 若月俊一」の足跡が残るJA長野厚生連佐久総合病院。JA全国大会に向けて「鼎談(ていだん)地域農業と医療に新境地を開く協同の力」を企画した。参加者は佐久総合病院名誉院長の夏川周介氏、JA佐久浅間組合長の髙栁利道氏、東京大学名誉教授の谷口信和氏。地域医療と安心な暮らしへの新たな挑戦として語ってもらった。

写真左から谷口信和東京大学名誉教授、夏川周介佐久総合病院名誉院長、髙栁利道JA佐久浅間代表理事組合長

写真左から谷口信和東京大学名誉教授、夏川周介佐久総合病院名誉院長、髙栁利道JA佐久浅間代表理事組合長

【出席者】
▽夏川周介 JA長野厚生連佐久総合病院
▽髙栁利道 JA佐久浅間代表理事組合長
▽谷口信和 東京大学名誉教授(司会)

先を見据え協同組合精神さらに

谷口 まず髙栁さんに、JA佐久浅間の概要からお話しいただけますか。

髙栁 JA佐久浅間は平成12(2000)年に、3市4町(佐久市、小諸市、佐久穂町、軽井沢町、御代田町、立科町、東御市の一部)にまたがる4JAが合併して発足しました。北に浅間山、南に八ヶ岳、蓼科を望み、中央には千曲川が流れ、標高700~1000メートルの準高冷地に位置しています。山麓では野菜や果樹、平地では水稲や花き類が生産されています。

農業をめぐって複合的な危機が続く中、食料・農業・農村基本法が改正され、転換期を迎えています。変動性、複雑性が増す中、「変化に勝てる高みの経営」をめざして、事業改革とともに未来への投資も進めていこうと取り組んでいます。

JA佐久浅間代表理事組合長髙栁利道氏

JA佐久浅間代表理事組合長髙栁利道氏

谷口 実は高校3年生だった昭和40(1965)年夏にこの地域の学生村に泊まって勉強合宿をしました。友達がぽっとん便所に驚いたという記憶があります。そこが、こんなに変わるとは思ってもみませんでした(笑)。

髙栁 いい堆肥になったんですよ。終戦当時、大陸から引き揚げられた方が農地を4ヘクタールずつ割り当てられて開墾された。その方々が大変な苦労をされて地域農業の礎を築きました。変化ということでは、高速交通網、上信越自動車道が大きいですね。昔はどこに行くにも峠越えでしたが、今は佐久から高速に乗れます。そこで、葉物野菜の夏場の産地として中京、京阪神地域から注目されています。

もう一つ自慢したいのは、管内に新幹線の駅が二つあることです。一つは軽井沢駅で、コロナ明けからインバウンドで盛り上がっています。ややオーバーツーリズム気味ですが、訪れる観光客に地元農産物をアピールしています。もう一つは佐久平駅の周辺で、東京の通勤圏に入ったことで、水田地帯に高級マンションが建ち、若者中心に人口も増えています。

谷口 もしかして人口が増えているのは、佐久総合病院の影響もありますか。

髙栁 今それを言おうとしたんです(一同笑)。人口が増えれば医療も必要ですから。私も今度、JA長野厚生連の監事になりました。

谷口 夏川先生、佐久総合病院グループの概況を教えていただけますか。

夏川 ちょうど今年が80年になります。始まったのが昭和19(1944)年です。当初はわずか20床の小さな病院で入院患者はゼロでした。内科の医師が、年配の男性と若い女医さんの2人だけ。翌年3月、治安維持法違反で逮捕されていた若月俊一先生が解放され、長野に来ました。「民衆のために働きたい」という思いから農村の佐久病院に赴任したのです。

若月はまず労働組合を結成し、翌年には院長になっています。運営は病院と組合との話し合いで行う体制を作った。それが昭和21(1946)年です。

そして今ではグループで3病院(本院の佐久総合病院、佐久医療センター、小海分院)、小海診療所、2老人保健施設、7訪問看護ステーション、1宅老所を擁しており、医師が250人、従業員が2500人に達する規模となっています。また、厚生連健康管理センターと佐久総合病院看護専門学校の運営を担っています。

佐久総合病院夏川周介名誉院長

佐久総合病院夏川周介名誉院長

谷口 佐久総合病院グループに来る方で地域外の方はどのくらいですか。

夏川 3分の2は地域内の方々ですが、残りの多くが上田地区からです。若月先生が引退したのが1998年ですから、それから30年近くになります。若月は「病院は大きくなり過ぎた」と言っていましたが、それから病院の再構築を進め、さらに規模が当時の約倍になっています。

大きく変わった地域のスガタ

谷口 JAの話に戻りますが、総合産地型になってきたということで何が変わったのでしょうか。たとえばお米の割合が下がったとかいった変化はあるのでしょうか。

髙栁 佐久は良質米の産地で米への依存が大きく、なかなか減反を聞いてくれませんでした。そこで、子実コーン、ブドウ、トルコギキョウの3品目を推奨しながら、生産調整を進めてきました。

谷口 3品目はどういう基準で選んだのですか。

髙栁 収量が上がって単価も良く作りやすいことです。関東よりも中京、関西方面に出ていますが、今は働き方改革の課題もあるので、農家所得も考えて地産地消を増やそうとしています。

直売所は大変な人気です。軽井沢、小諸、そして一番大きいのはヘルシーテラス佐久南です。中部横断道のインターチェンジに立地しています。Aコープ店にもサクサク市場という直売コーナーを設け、昨年は全部合わせて11億円の売り上げとなり、農家所得向上に寄与しました。

インバウンドもあってにぎわうヘルシーテラス佐久南(直売所)

インバウンドもあってにぎわうヘルシーテラス佐久南(直売所)

谷口 気候危機もあるので、できるだけ遠くに運ばないのはいいですね。堆肥のペレット化もされています。

髙栁 佐久市から土づくりセンターの業務委託を受けています。ウクライナ戦争で化学肥料が入ってこない時があり、苦肉の策でペレットを作りました。化学肥料を入れない純粋のペレット堆肥を作ることに成功し、国内でみどりの食料システム法に基づく登録第1号をいただきました。昨年から生産を始め、今後広げたいと思います。

活躍するJAの農業法人

谷口 グリーンフィールドというJAの子会社も重要ですね。

髙栁 私はJAを退職後に10年間、社長をしていました。高齢化で廃業する畜産農家が多いなか、せっかくの牛舎と肥育牛を農協が継承し有効活用をしてきました。肉牛、豚も増やし、売り上げを7億円から15億円まで伸ばしたという実績があります。

けれども今、再び経営が非常に厳しいです。私の頃には、トン2万円から3万円ぐらいだった餌代が、今は10万円になっています。国の支援を得つつ、農協からも若干支援しながら、どうにか維持しています。

谷口 畜産を取り巻く環境はそのぐらい無茶苦茶なんですよね。エネルギー価格上昇に戦争も絡んで、餌を遠方から運んでくるためにコストがはね上がりました。

髙栁 足元では飼料価格は落ち着きましたが、高止まりしています。グリーンフィールドでは、軽井沢で野菜20ヘクタールと米を4ヘクタール作っています。遊休荒廃地を使ってキャベツを中心に生産してきました。やる気のある若い方に農地をのれん分けして、お貸ししています。

谷口 のれん分けは増えそうですか。

髙栁 頭打ちだと思いますね。苦労しても収入が少ないので。キャベツ頼みには限界があります。コンテナにキャベツを入れて出荷する契約で、価格は一定で所得は計算できるのですが、もうかりません。

【鼎談 地域の農業と医療に新境地を拓く協同の力】JA佐久浅間と佐久総合病院の新たな挑戦(2)へ続く

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