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JAの活動:第30回JA全国大会 持続可能な社会をめざして

「よみがえれ農協」この半世紀に農協は何をしてきたのか 【JA全国大会傍聴記】2024年10月22日

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今月18日、およそ20年ぶりに全国農協大会の空気を吸った。カラフルな大会議案書。決められた時間通りの進行。一番長かった来賓あいさつ。予定され、映像を使った青年、女性、農協代表の意見表明。全国から集まった農協代表は整然と拍手するだけ。「農協よ。どこへ行こうとしているのだ」と思いながら、大会の進行を見ていた。
(全国農協大会傍聴記・客員編集委員 先﨑千尋)

よみがえれ農協ー全国農協大会傍聴記.jpg

私の書棚には、第11回大会からの議案書や組織討議案などが約30cmもある。その中の白眉は私が農協に席を置いた年、1967年(第11回)の「日本農業の課題と対応(農業基本構想)」と次の大会の「生活基本構想」だ。前者は、農業基本法に基づく農家の選別という国の構造政策に対抗し、集団生産組織と営農団地造成を基軸にした高能率・高所得農業の実現を旗印に、行政とは違う農協の主張を高く掲げた構想であった。

また、生活基本構想は、組合員の生活防衛と向上を図ることが農協の使命だとし、それだけでなく、農村地域社会の建設をうたった格調の高い宣言文だった。いずれも目標を10年後に置いている。

それから半世紀以上経った。農業と農家、農村の現状はどうか。農家も農業従事者も農地も大幅に減り、集落はスカスカ。荒廃農地が増え、イノシシが跋扈(ばっこ)し、太陽光発電のパネルが乱立している。周りでは農業従事者の高齢化とリタイアも進む。米作農家の1時間当たりの収入はわずかに10円(米価の高騰により今年は少しは上がっているが)と、国の定める最低賃金の100分の1程度では、誰も農業を継げない。「思えば遠くへ来たもんだ」と、あの当時の二つの構想の実現に胸躍らせた者にとって、私だけの責任ではないけれど、わが力のなさに忸怩(じくじ)たる思いでいる。同時に、農協はこの間、何をしてきたのか、してこなかったのかを多くの農協人に問いたい。

きちんとした総括を

私は、目標や計画がその通りに実現するとは思っていない。私たちを取り巻く環境は刻々変化し、自分や家族、地域、村や町の姿だって、思った通り、計画通りにはいかない。私が所属していた農協も同じだ。そこで大事なことは、目標や計画がどこまで進んだのか、進まなければなぜなのかをきちんと総括することだ。

農協という組織はこれまで「計画すれども実行せず」だとやゆされてきた。それだけでなく、農協内部に身を置いていて分かったことだが、全国連も単協も、反省、自省することを怠ってきた組織であり続けた。組織としては内なる批判こそ最も大事なことなのに。

そこで今回の大会議案を見る。前回大会議案には、農協は「持続可能な食料・農業基盤の確立」や「持続可能な地域・組織・事業基盤の確立」、「協同組合としての役割を支える人づくり」などに取り組む、とあった。今回の議案書を見たが、これらの目標がどうなったのか、実現のために農協は何をしてきたのかの記述はほとんどない。

さきに触れたように、農業生産基盤は一層弱体化し、合併や支店・事業所の統廃合などにより、組織・事業基盤も確実に弱体化しているのが現状だ。組合員が農業で食べられる(生活できる)ような活動、事業を農協がどう展開していくのかが最も重要なことだが、現場で農協の動きを見ていると、農業を持続できる基盤づくりや地域づくり、言葉を換えれば、農家の営農、生活上の問題解決、期待や願望の実現のために、農協が積極的に取り組んできたとは思えない。新規就農者の支援、移動購買車や農協まつり、各種の相談会などは当然のことで、免罪符にはならない。組合員側から考えれば、オレんちの農業経営や暮らしに農協がどれだけ役に立っているかが判断の物差しだ。

議案書には「(改正食料・農業・農村基本法の)施策の具体化、実践をはかっていく」とあるが、この表現では農協が国の農政の実施機関になってしまい、独自性が失われてしまうのではないか。50年前の「農業基本計画」が国の向こうを張って独自路線を主張したのとは大違いだ。

組合員の声を運営の基本に

組合員の動向や意見を聞くための座談会は不可欠だが、せいぜい農協総代や各種部会の役員どまりで、一般組合員が農協の運営にモノを言う機会はまずない。農協の機関紙は、私の時代よりはるかにレイアウトがきれいになり、ページも多くなっている。だが紙面は一方通行で、農協の広告記事が多い。編集委員会に組合員が入っている例は、少なくとも茨城県では聞いたことがない。組合員の投書欄ももちろんない。紙面からは、経営者が現在の農業や農村の状況、変化をどう考え、問題解決のために何をしたいのかが分からない。

さきに挙げた「生活基本構想」は次のように書いている。

「農協が、その基盤である農業者、農業、農村の変化に対応できず、しかも企業との競争にうちかてず、組合員に利益と便益をもたらしえなければ、その存立すらむずかしい。(農協の)事業が運動として展開されるためには、構成員が協同して企画し、協同して活動に参加することが基本であり、構成員の間の人的結合が前提となる」。この文言は、今でも通用する重要な指摘である。

組合員は現在、農協が展開しているあらゆる事業で、農協を利用しなければ困るということはまずない。戦前の産業組合時代や戦後の物資不足の時代とは決定的に違う。例えば、生産資材面ではホームセンターのほうが品ぞろえは豊富で、しかも安い。事業を運動としてどう進めていくのか。そのことは議案書には書かれていない。

最近、若い農協職員が数多く辞めていると聞く。信用、共済、購買事業の過重な推進に耐えられず、ということがその原因にあるようだが、人手不足の昨今、農協活動の原動力となる職員の動向と農協経営者の対応も気になることだ。

その他にも注文をつけたいことは多々あるが、農協の一員として長いこと仕事をしてきた私は、農協が食料危機、農業危機を突破する組織、組合員が必要だと思う組織としてよみがえることを切に願う。

(本稿は筆者の個人的見解を述べたものである)

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