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JAの活動:2025国際協同組合年 持続可能な社会を目指して 協同組合が地球を救う「どうする?この国の進路」

農業犠牲の世情 あってはならない地域喪失 歌人・時田則雄【2025国際協同組合年 どうする・この国の進路】2025年1月7日

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2025年、新しい年を迎えた。北の大地の歌人が戦後農業の歩みを振り返り、未来へ言葉を紡ぐ。

2025新年短歌.jpg2025新年短歌

野男の名刺すなはち凩(こがらし)と氷雨にさらせしてのひらの皮

私の住む十勝の面積は1万831平方キロメートルで岐阜県の広さに相当する。北海道の名付け親で探検家・開拓使開拓判官の松浦武四郎は北海道内の調査のために十勝川と音更川との合流域に至り、<此のあたり馬の車のみつぎもの御蔵を建てて積まま欲しけれ>と詠んだ。安政5(1858)年のことである。それから167年を経た十勝平野は日本有数の畑作酪農地帯となり、食料自給率は1212%。JA取扱高は3770億円であり、農業王国と呼ばれる所以(ゆえん)である。つまり、武四郎は先見の明があったということだ。

ちなみに十勝の原野に最初に開墾の鍬(くわ)を下ろしたのは依田勉三の率いる晩成社の人たち。明治16(1883)年のことである。だが、当初は食うに事欠き、山菜にわずかな米をいれた雑炊であったという。このような暮らしを嘆いて晩成社幹事の渡辺勝は、<おちぶれた極度か豚と一つ鍋>という句を詠んで勉三に見せたところ、勉三は「そんな精神ではいけない」と言って、<開墾の始は豚と一つ鍋>と添削し、開墾にあたっての覚悟を説いたという。

私の祖父仁三郎は明治12(1879)年、新潟県刈羽郡石地村(現柏崎市石地)にて生まれた。その後、幾つかの経緯を経て下帯広村(現帯広市)にて質屋を営んだが、後に百姓に転じて80haの農場主になったが、私が生まれる前の昭和14(1939)年に亡くなった。私は身一つで北海道に渡って大農場主になった祖父の生き方に魅かれる。私の夢は祖父のような大農場主になることだったのだ。祖父に対する挑戦でもあったのだ。ちなみに私の農場の耕地面積は40ha。残念ながら祖父には遠く及ばない。思うに北海道の3代目の百姓は私のように開拓初代に対する挑戦者だと思う。それは隔世遺伝によるものと思うのだ。

ブラキストン・ライン越えきし祖父の意志継ぐべし今日も空果てしなし

「ブラキストン・ライン」というのは、北海道と本州の間に引かれた動物分布境界ラインであり、イギリス人のT・W・ブラキストンによって明治16(1883)年に引かれたのだが、北海道と本州とでは気候風土が極度に違うので、私は精神の境界ラインだとも考えている。それは元北大教授の風巻景次郎の「北緯四十度圏の北海道の自然と見てくれが、本州や九州と違うだけではない。そこでは自然と人間の関係が違っている」という言によっても頷くことができよう。

私が百姓になったのは昭和42(1967)年。つまり、58年間百姓を続けているのだが、この間、自民党は「農業は国の基」と公言しながらも、農業を犠牲にして自動車産業などの大企業を優遇してきた。その結果、耕作放棄地の増加、農業者の高齢化、後継者不足などを招き、農業は危機的状況に追い込まれている。農村は疲弊し、町内会はその機能を完全に失ってしまった。日本の農業・農村をつぶしてしまったのは自民党だ、といっても言い過ぎではあるまい。最近の報道によると、日本の酪農家は1万戸を割ったという。農地面積も1961年の609万haをピークに減り、2023年には430万haまで落ち込んだという。十勝のJA取扱高は3770億円と先述したが、ロシアのウクライナ侵攻や円安などで、農業の生産資材が高騰しているので、肝心の手取りはどうなのだろう。仮に日本が紛争に巻き込まれて空港や海港がその機能を失い、食料が入ってこなくなったらどうなるか。日本には豊かな水と肥沃(ひよく)な土地がある。農家は超一流の栽培技術をもっている。政府は今こそ本腰を入れて食料自給率を上げるための努力をするべきである。

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