JAの活動:2025国際協同組合年 持続可能な社会を目指して 協同組合が地球を救う「どうする?この国の進路」
【JAトップ提言2025】有機農業で次代に活路 JA常陸組合長 秋山豊氏2025年1月17日
第30回JA全国大会は「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力~協同活動と総合事業の好循環」を決議した。2025年度はその実践の初年度となる。いうまでもなく地域によって課題は異なる。そのなかでどう戦略を打ち出すべきか、JA常陸組合長の秋山豊氏に提言してもらった。
JA常陸組合長 秋山豊氏
政治、経済、国際情勢が混迷している中、そして環境破壊が極限まで進んでいる中、この国の針路は不確実である。しかし、私たち大人は、この国の子孫に明るい未来を残さなければならない。それは、行き過ぎた資本主義経済を是正し、環境を修繕し、人間性の回復を図るものであろう。どうすればいいのだろうか。先の見えない今、一人一人が目の前の正しい事をやるしか無いのではないだろうか。
私のJAでは今、地元の市と二人三脚で、有機農業とオーガニック給食に取り組んでいる。その目的は、関税引き下げ、輸入農畜産物の増加、後継者不足、環境破壊により縮小の危機にある日本農業を守るために、そして子どもの健全な育成、地域活性化のためである。全国の小中学校3万2000校、923万人の生徒が9年間、有機農産物を食べる事によって、健康である事のすばらしさ、自然の摂理、社会の抱える問題を学べば、日本の進路は正しい方向に向くのではないだろうか。
茨城県の北部、常陸大宮市でJA常陸が市と共に有機農業、学校給食に取り組んで3年、改めて自然の持つ調和と力に感動している。最初の年に植えたのはジャガイモ。土壌分析をして堆肥、土壌改良材を投入し、マルチや防虫用の麦を植え、納豆菌で土壌を満たし悪玉菌を抑圧する。するとジャガイモ本来の免疫力が働き害虫を寄せつけない。6月の収穫では病気はひとつもなく収量も十分。保育園児と収穫を行い女性部のお母さんに蒸かし芋にしてもらい食べると「おいしい」の連発だ。続けてカボチャ、ナス、人参、サツマイモと約1haで成功し、給食に初めて供給した。
2年目は米づくりにも挑戦した。4haだが、集落挙げて協力していただき14haの水田を有機エリアと、慣行農法エリアに区分し、お互いに迷惑をかけない生産に関する協定を結んだ。これは、全国初とのことで県より表彰を受けた。牛ふんと鶏ふん堆肥を散布、深水でトロトロの代掻き2回で無酸素層を作り雑草を完全に防ぐ。田植えをしたら一歩も田に入らない。高温被害で1等米比率がJA平均50%の中で、コシヒカリで一等米70%、食味計が85、管内で日本一を取った米と同じ味である。驚きと感動を呼び、名前を「ゆうき凛々」とした。
詳細は割愛するが、40年ほど前の有機農業勃興期に比べ技術が完成され、米の場合、生産コストも労働費を入れて貫行農法より1俵当たり2000円高い程度である。収量が2割ほど落ちるが市の買い上げ価格は2倍であるため、はるかに所得は良い。市、給食センター、JA、集落が一体となり給食のオーガニック化100%を目指して取り組んでいる。肉や加工品まで考えると10年以上はかかる長期戦である。しかし「決して失敗せず、失敗しても後退せず」の信念で挑戦している。
先日、この常陸大宮市で第2回全国オーガニック給食フォーラムが開催された。当日は予想をはるかに上回り900人を超える活動家、消費者団体、市民グループ、行政関係者、JAが全国から参加し大盛況となった。暗黙のテーマが「JAが変われば日本が変わる」である。化学肥料や農薬の供給を担い、一部のJAを除き有機とは対極にあったJAグループが有機農業に取り組む事に、驚きと賞賛が寄せられている。深刻な環境破壊、原因不明の健康障害等からSDGs国連決議、みどりの食料システム戦略等、オーガニックの流れは世界でも日本でも大きな潮流となり拡大している。
フォーラムの最後に全国から参加した八つのJAが壇上にあがり決意を表明した。その中で私は発言した「私は明るい未来を予感している。国が食育基本計画にオーガニック給食の30%導入を明記し、全国の小中学校で、有機農産物を子どもたちが何代にも渡って食べる。そこから社会が変わるのではないか。JAはその抵抗勢力になってはならない」と。
この国の進路を決めるのは人である。人が何を食べ何を考えて育つかによって、その国の希望が生まれ進路が決まる。オーガニック給食は、自然の恵みと人間本来の生き方を子どもたちに伝える事ができる。全国の子どもたちがそれを感じ成長し社会を担う、大人たちも襟を正す。その積み重ねによって、この国は正しい進路を取ることができるのではないだろうか。
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