JAの活動:【Never Give Up! 新時代へ前進あるのみ 第71回JA全国青年大会特集】
【座談会】JA全青協OBの思い 経験が糧に(3)先が分かる経営者たれ2025年2月27日
第71回JA全国青年大会を記念してJA全青協出身者に当時の思いを含めて座談会を企画した。出席者は福岡県・JAくるめ組合長の八尋義文氏、埼玉県・JAいるま野枝豆部会部会長の飯野芳彦氏。司会・進行役に農政や地域農業に詳しい岡山大学名誉教授の小松泰信氏に当たってもらった。
飯野芳彦氏(JAいるま野枝豆部会部会長)
先が分かる経営者たれ
八尋 合併協議は大詰めです。小さなJAごとにちまちまやってると農畜産物の販売力が限られますが、合併でロット数を持てばスーパーにも棚を作ってもらえる。大きくなることへの懸念もわかりますが、青年部や女性部、各種団体も近隣JAとコミュニケーションをとりながらスキルアップできると期待しています。青年たる者、スキルを磨いて経営を発展させなければ。隣町で雇用型の経営をしている若い担い手は、自分で行動できるスキルを持っていてたくましいですね。
飯野 八尋さんのところは営農にプラスな合併なんですね。一般に大きな合併は、金融共済にはプラスですが営農にはマイナスになりがちです。そこで私は、信用共済だけ先に合併し営農は地域に残す。それで選果場は共同で、という形もあるんじゃないかと考えています。
小松 青年部で活動した若い農家から、なかなかJA経営者が出てこないのはなぜでしょう。
八尋 スキル不足もあるのではないでしょうか。農業はしっかりやってても、JAに出荷した後の野菜の動きが分からない。作物を出して終わりでなく最後まで見届け、JA運営にまで目を向けなければ本当の経営者にはなれません。
小松 農家にJA経営は無理だという人もいます。
八尋 一人でやろうとするから無理なんで、仲間がいるじゃないですか。人を大事にすれば仲間が増え助け合いが広がる。私はもともと、「組合員たる以上、職員の給与は自分たちが守っていかんば」と思ってきました。計算には弱いが、生産現場の強みもあります。いい雰囲気で運営できれば業績も伸びてくる。職員上がりが悪いとは言いませんが、青年部出身者は、チャンスがあればやってほしい。試しながらスキルを磨いていけばいいので。
飯野 私は品目別部会の部会長になったところですが、青年部出身者がJA役員にもなっていくのは大切なことだと私も思います。全青協役員をしても、その後あきらめてしまう人も、あるいはJA批判側に回る人もいます。でも、志ある農業者は一人ではやっていません。JAでなくても、生産でも販売でも一種の協同、ミニJAみたいな活動をしています。私は既存のJAの中でしっかり協同活動ができる新しい仕組みを作りたい。
小松 「ですよね」という納得しかありません。青年部は経営者とさしで話すので、JA経営を知る機会が多いですね。
八尋 そこがいいところです。全青協などの役員になると出かける用事も増え、私も役員だった2年間は年収が500万円ほど下がりました。でも、必ず後で取り戻すことができます。かけがいのない期間になるし、ならなければいけない。任期が終わるときにはみな「きつかったけど頑張って良かった」と言います。
小松 女性参画はいかがですか。
八尋 理事は17名中2名が女性です。JAの経営に大いに参画してほしいと思います。「何しよってね」とか、女性は言うべきことをポンポン言いますから。女性職員は代理も課長もいますが頑張っています。私も、組合長になって妻にも相談したら「あんたおらんでも私が頑張る」というので、農業を妻に移譲しました。研修生を使いながら、うまくやっています。女性はいざとなると、力が爆発しますね。職員を見ても、むしろ男性に勢いがちょっと......。
小松 わかります。大学教員時代も、どの学部もトップクラスは女子が占めていました。
飯野 いるま野にも女性理事はいます。「地域農業のために何かを」と考えてきた人たちで頼もしい。地区座談会の弱体化など、そういう人たちを見出すチャンスが細っているのが厳しいですが。女性管理職も増えてきています。
自分のJA 議論身近に
八尋義文氏(JAくるめ組合長)
小松 「紅一点」とかでなく、役員も管理職も当たり前に女性が何人もいるようにしたいものですね。今度の全青協大会、そして青年部への期待は。
八尋 みんなでまとまって、全国的に何かをやらんですか、と言いたいです。私たちの頃はWTOの農業交渉がスイス・ジュネーブでありました。全中の派遣団に同行させてほしいと県中央会に直談判し、行かせてもらいました。知らない世界に足を踏み入れ経験することで視野もぐっと広がります。
飯野 青年部で議論を重ね学んできた人たちは、心に「きれいごと」をもっています。協同組合活動には「きれいごと」があって、それを具現化するために仲間とどうやっていくか。理想に向かうトライ&エラーの積み重ねこそがボトムアップにつながります。
小松 青年部出身者がJA経営に入ってくるのもウェルカムですか。
八尋 はい、「自分たちのJA」ですから。「役員のJA」じゃない。若い人が入ってきて役員がピリピリするくらいにならんと。
小松 青年部出身者から役員が出てくるための課題について、飯野さんはどう思いますか。
飯野 以前はJAも地区も人が多かったので、有象無象の中から人材がすっと浮き上がって周囲が支えました。それが今、人数も減ってうまくいきません。ひとまず、同級生でも先輩でもいいから身近なところに何でも話せる5人衆を作ったらいいと思うんです。5人衆でまず議論し、どう具現化するか考えていく。
小松 全青協の『ポリシーブック』はすばらしい。各党の支持者に向けて農業者が抱える実情を伝え、逆に農業者、JAへの期待を吸い上げるチャンネルとして、与党に限らず野党とも『ポリシーブック』を使って対話してはどうでしょう。
八尋 福岡は保守王国で、与党県議には県の補正予算はじめ大変世話になっているので、裏切れないし裏切るつもりもありません。ただ、与野党伯仲で国会議論が活性化したのは良かったと思います。
小松 裏切れとは言ってません(笑)。
飯野 「農協改革」の渦中で、農政活動や行政との関りが不自由でした。私が会長の時は「全方位で動こう」と考え、農水省の職員に会いまくって、全体での意見交換も実現した。当時の民主党の議員さんたちとも会いました。ところが、都市農業への納税猶予制度を活用などの課題をめぐって「政府が悪いんだから市街化調整地域とかやめた方がいい」と言われたんで、「今ある制度を農家が使うのは当然です。やめろというなら、より良い法制度を立法府として作ってください」と反駁したら何も返ってきませんでした。
小松 幻滅する部分もあるけど、国会議員の農政理解レベルは農協側にも責任があるのでは。
飯野 それはあります。野党との対話から、与党に進言する際の切り口が見つかるかもしれません。
小松 お二人のますますのご活躍を願っています。今日はありがとうございました。
【座談会を終えて】
美味なる農産物を作りながら、青年部活動を全国段階で担われてきただけのことはある。肝が坐っている。そして謙虚。「一人でやろうとするから無理なんで、仲間がいるじゃないですか。人を大事にすれば仲間が増え助け合いが広がる」(八尋氏)、「身近なところに何でも話せる5人衆を作ったらいい」(飯野氏)。期せずしてふたりから出てきた言葉がその証し。やはり、全青協経験者にはJA経営者の道を目指してほしい。
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