JAの活動:【Never Give Up! 新時代へ前進あるのみ 第71回JA全国青年大会特集】
【青年大会特集座談会】国の礎「食」を支える自負を(1)京大藤井聡教授・田中均組合長・久保田治己氏2025年2月28日
第71回JA全国青年大会に合わせて青年農業者の奮起に期待を寄せて座談会を企画した。参加者は多彩な言論で活躍する京都大学教授の藤井聡氏と長野県JA松本ハイランド組合長の田中均氏、そして食料安全保障推進財団専務の久保田治己氏に進行役を務めてもらった。
写真左から食料安全保障推進財団専務・久保田 治己氏、
京都大学教授・藤井聡氏、JA松本ハイランド組合長・田中均氏
新自由主義を疑う
久保田 「NEVER GIVE UP! ~新時代へ前進あるのみ~」をスローガンとする第71回JA全国青年大会に向け、農業と日本経済を取り巻く状況と若い人たちへの期待をめぐって話し合いたいと思います。
農協法の第1章第1条には「この法律は、農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とする」とあります。農家のことだけでなく国民経済の発展という目的がありますが、この点について思うところはありますか。
藤井 第1条を平たく読めば、農業を通して国民経済を発展させるという趣旨でしょう。そのために国民経済の持続のために不可欠な食料自給率を高める食料安全保障として農業があるという点も大切ですが、それに加えて大きな安定的国産需要として国民の食需要があり、その食需要を産業化、マネタイズ(収益化)しているのが農業だ、という点も忘れてはなりません。霞が関、永田町、マスコミ、世論に最も欠けているのはその理解です。日本人は毎日の食事ができる点だけでなく農業が日本経済の核となっている事を理解し、農家に感謝しなければなりません。
田中 農家の中で「営農が国のためになっている」と認識して農業をしている人は残念ながら少ないと思います。稼ぐ手段、生活の糧として農業を捉えている人が多い。「公共性ある農業に誇りを持て」という強いメッセージと受け止めさせてもらいました。
農協法は占領下だった昭和22(1947)年、食料難の時代にできました。輸入で胃袋が満たされ食料不足でない今日、この第1条をどうアピールすればいいか。難しい課題と思います。
地域で生きる品格
藤井 日本の食料輸入額は年9兆円ほどです(2023年、農畜産物)。9兆円が外国の農家に流れていますが、日本の農家が全部供給していたら9兆円のマネーが国内で回る。政府が大型経済対策を毎年打つのと同じです。
久保田 農協法と違って会社法には「国民経済のため」といった規定はありません。日本で農業を営めば国民経済に寄与します。会社も国民経済に寄与できますが、100%外資の企業が日本で得た利益を海外に持ち出すのは適法でも、日本経済にはマイナスです。
藤井 他産業と比べ農業は公共への寄与度が圧倒的に高い。田園という意味でも米文化という意味でも、日本人が日本人であるアイデンティティーに関わっています。皇室も農業、米作りを軸に成立しています。こうした「農の崇高さ」への認識がないことが現代日本のもはや宿痾(しゅくあ)でしょう。
田中 農協は夜逃げできないんですよ。最近松本市で、大手ショッピングモール撤退の動きがあります。もうからなければ会社は出ていきますが、農協はつねに地べたと一緒にあります。
藤井 その点からも、地域に貢献する存在なんですね。
久保田 米の「値上がり」に関するマスコミ報道はどう見ていますか。
田中 正直、憤りを感じます。政府備蓄米の放出に関して多くのマスコミは「遅きに失した」と言いました。30年前、食管制度が廃止されてから、「これからは自由主義経済」という論調でマスコミはずっときた。民間在庫があるのに政府備蓄を放出するのが彼らのいう自由主義経済なのでしょうか。
藤井 農家の維持・発展に配慮した報道がないことに私も強い違和感があります。「生産調整をやめて供給を増やし米価を下げたらいい」という論調が一部にありますが、消費者、生産者、その他公益を総合的に考えて定めるべき適正価格を、消費者の視点だけから米の価格を論ずるのは間違いです。
田中 適正価格はたしかにあって、今はちょっと異常かもしれません。「今だけ、金だけ、自分だけ」が世間にまん延しています。お米、あるいは農産物全体かもしれませんが、自由主義経済一辺倒でいいか考え直す時です。
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