【2016参議院選挙】米地帯の農民が怒る!2016年7月15日
市民プラス野党協力で流れは変わった
森島賢(立正大学名誉教授)
先日の参院選は与党の大勝だった、と多くのマスコミが伝えている。そうだろうか。
農村から、やや詳しくみると、そうではない。市民プラス野党協力は、緒戦で大成功をおさめている。
マスコミは、そのことに気づかない。いまの市場原理主義農政が信認された、と考えているようだ。そして、つぎの国会で、TPPがすんなり批准される、と予想しているようだ。
野党は、与党大勝という報道に惑わされて、敗者のように下をむいて、与党の暴走を傍観してはいられない。緒戦の勝利を広げ、一強政治に歯止めをかけて、政治を活性化しなければならない。
◆東北・甲信越 大都市でも与党離れ
第1図は、1人区の選挙結果をみたものである。この図から分かることは、東北をはじめ、甲信越での野党の圧勝である。唯一つの例外は、秋田での敗北である。それに沖縄、大分、三重の野党の勝利が加わる。
これは、市民を中心にした4野党の合意による選挙協力の成功である。緒戦で、幸先のいい大成功をおさめたことになる。
これに加えて、次の第2図で示した複数区の北海道での野党の勝利がある。
つまり、北海道と東北と甲信越をみると、与党は2勝10敗である。勝率は17%になる。目を覆うばかりの惨敗である。もしも、この勢いが全国に広がれば、与党の誇り高い責任者は、ただちに辞任を表明するだろう。
もちろん、これは農業者だけの審判ではない。この地域の全有権者の厳正な審判である。
第2図は、複数区の結果である。これをみると、大都会である東京、大阪、京都は、全て与野党の当選者が、同数である。決して与党が勝ったわけではない。
両図から分かることは、東北などの農村が、与党に対して、反旗をひるがえしたことである。それと同時に、都市でも大都市を中心にした与党離れが進んでいる。
これらの結果から、与党が学ぶべきことは、市場原理主義農政の見直しである。
ことに、当面するTPPの国会批准に、どう対処するかである。また、いわゆる農業・農協改革や、米の減反廃止を、これまで通りに強引に進めるのかどうか。農業者は、そこに注目している。
もしも、いままで通りなら、農村の与党離れは東日本だけでなく、西日本にまで広がっていくだろう。
◆大都市部には格差拡大に強い不満が
第3図は、1人区で野党の得票数が、前回の参院選と比べて、どれほど増えたか、を示したものである。
西日本の1人区でも、軒並み得票数を増やしている。当選者は少なかったが、西日本でも野党は健闘し、与党に迫っていることが分かる。
農村だけではない。都市には格差拡大に対する強い不満がある。非正規雇用の規制緩和を原因とする格差拡大である。貧困の拡大といってもいい。いまや、非正規雇用は野放しともいえる状態にある。
いったん格差を拡大しておき、あとで再配分して格差を縮小する、などという「滴り落ちる」理論は聞き飽きた。格差拡大の原因は、その根源を断たねばならない。
もしも、非正規雇用の規制に失敗すれば、都市の不満は、農村の与党離れと互いに共鳴しあって、政治の大変動を招くかもしれない。
◆TPP批准拒否と非正規雇用の規制強化が課題
このような選挙結果だが、与党は勝利の宴に酔っている。多くのマスコミは、与党の勝利を讃えている。反TPP運動に冷や水を浴びせる、という魂胆なら悪質だ。
やがて、アベノミクスが決定的に破綻する前に、衆院選を行ってしまえ、という主張が、与党から出てくるだろう。年内の衆院解散もささやかれている。そうすれば、衆院選でも大勝し、現政権が長期に安定すると予想している。
野党は、それに備えねばならない。常在戦場である。さっそく、こんどの、市民を中核にした野党4党の、選挙協力の成功を教訓にして、衆院小選挙区での選挙協力の協議を始めるべきだろう。
政治理念が違う政党間の協力は、野合という非難があるかもしれない。
しかし、いま、平和主義を旗印にする公明党と、武力を頼りにする自民党が連立して政権を握っている。以前は政治理念が互いに相容れない自・社・さ政権があった。
充分な政策協議を重ねた末の、期間を区切った部分的な協力なら、非難すべきものではない。
野党協議の中心課題は、農村部では、TPPの批准問題と、農業・農協のいわゆる改革問題と、米政策だろう。都市部での課題は、憲法問題やTPP問題、沖縄問題、原発問題と、それに加えて、非正規雇用を規制して格差を縮小するための、具体的で実効性のある制度と法制だろう。
それらを、われわれは、耳目をそばだてて見守っている。
余談ではないが、いま激戦中の東京都知事選で、立候補を予定していたある人は、時給1500円以下の労働者を雇っている企業には、都の事業を発注しない、と公約していた。参考にしたらどうだろうか。
(写真)東北の農民の怒りは爆発。参議院選挙戦期間中の7月2日、福島県のJAふくしま未来では「TPP問題を通して食と農、市民生活を考える」をテーマにしたマルシェを開催した。
重要な記事
最新の記事
-
「農業」「くらし」「地域」「漁業との連携」で優良事例を共有 JAバンク経営者フォーラム 農林中金2025年12月1日 -
12月の野菜生育状況と価格見通し トマト、たまねぎなど平年を上回る見込み 農水省2025年12月1日 -
スーパーの米価 2週ぶりの上昇 5kg4312円2025年12月1日 -
神奈川県産米から誕生「湘南はるみライスウイスキー」販売開始 JAタウン2025年12月1日 -
幻のりんご「広島県産高野りんごフェア」14日まで開催中 JA全農2025年12月1日 -
愛媛オリジナル柑橘「愛媛県産紅まどんなフェア」20日まで開催 JA全農2025年12月1日 -
みやぎ応援ポケモン「ラプラス」コラボ 仙台名産「笹かまぼこ」登場 JAタウン2025年12月1日 -
JAタウンで「福袋」販売開始 年末年始にお得な福袋を多数品揃え2025年12月1日 -
新生活応援「お米5kgプレゼントキャンペーン」実施 ジェイエーアメニティーハウス2025年12月1日 -
飲食料品値上げ 2025年は2万609品目で2年ぶり2万品目超 帝国データバンク2025年12月1日 -
第23回JA祭開催 JAかみましき2025年12月1日 -
北海道オープンイノベーションプログラム第3期に採択 輝翠2025年12月1日 -
スペインからの豚肉等 輸入を一時停止 農水省2025年12月1日 -
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2025年12月1日 -
助成総額384万円 2025年度「くらし活動助成基金」贈呈式開催 パルシステム茨城 栃木2025年12月1日 -
宮崎県学校給食会、JA ARUniCoと包括的連携協定を締結 東洋ライス2025年12月1日 -
グッドデザイン賞の「パルシステム給付型奨学金」奨学生新たに12人決定2025年12月1日 -
JA北びわこと協業に向けた協議開始 コメリ2025年12月1日 -
「日本酒イベントカレンダー2025年12月版」発表 日本酒造組合中央会2025年12月1日 -
新潟市にコメリパワー「黒崎店」8月10日に新規開店2025年12月1日


































