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【どうするTPP 農業改革(上)】地域の協同を守る政策を TPP再交渉阻止へ 山田俊男参議院議員2016年10月25日

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山田俊男参議院議員
聞き手:小松泰信岡山大大学院教授

 TPP審議が最大の焦点となっている国会をはじめ11月までにまとめる生産資材価格問題など、この秋は日本農業、農村の将来に関わる課題の議論が山積している。どう展望を切り開くのか。山田俊男参議院議員に聞いた。

◆米国との争点明確に

山田俊男参議院議員 聞き手:小松泰信岡山大大学院教授 小松 臨時国会でTPP協定が審議されています。米国では大統領候補が2人ともTPP反対を表明しているなか、なぜ日本は前のめりで審議するのかとの声も強いです。
 山田 交渉参加にあたっては、重要5品目、聖域をしっかり守れと主張してきたわけですが、大筋合意に向かうなか納得できないところはたくさんありました。だから、引き続きTPP絶対反対、国会決議違反だと主張して活動できればそれに越したことはありません。
 しかし、私がいちばん危惧しているのは、二人の米国大統領候補がともに主張するように再交渉を求めてくる可能性もあることです。そうなったら重要5品目にもさらに手がつくことになる可能性や、投資やサービス、ISD条項に関わる米国の主張が浮上しかねない心配があります。韓国の米韓FTAでも再交渉し多くの妥協をさせられた。
 合意を阻止して交渉をなきものにしていけるのなら別ですが、わが国、また世界経済全体のなかでの経済成長や需要の拡大という面が崩れることになったら農業にも国民生活にも混乱を来しかねない。ですから、今回政府は厳しいなかそれなりの交渉をしたと思いますから、これ以上の妥協はしない、再交渉はさせないという立場でここは議決したほうがわが国にとってベターだと思っています。
 小松 では、どういう審議が必要ですか。
 山田 強行採決などということになれば国会が混乱し、TPP協定は衆議院だけの議決で30日で自然成立しますが、関連する牛肉・豚肉のマルキン対策などの法律は仕上がらないということになります。重大事です。そのためにはきちんと審議して成立させなくてはなりません。
 審議で明らかにしたいことの1つは再交渉の規定がどうなっているのか、です。2つは政府は交渉経過は報告できないと言っていますが、しかし、一体何が争点になっていたのか、牛肉のさらなる枠拡大だったのか、豚肉か、それとも他の作物だったのか、そうした点をきちんと把握しておかないといけない。なぜなら協定発効7年後に、求められたら再協議には応じなければならないからです。
 いずれにしても政府は交渉経過は示さないという姿勢ではなく、どこにどんな争点があったのか、そのことを質疑のなかで明らかにしたほうが今後のためにいい。そのために必要なら、甘利前大臣に率直に困難だった交渉の争点を答弁してもらう。その中身を聞くことによって、農業者も、そういう経過があって決まったのかと納得できる人もいると思います。
 そうした一定の情報開示のうえ、さらに関連対策についてもこれで十分かどうか審議していくべきです。

◆輸出で農業所得増大を

 小松 その対策については輸出力強化などが強調され、食料自給率問題が論じられません。政府の責任とは国民を飢えさせないことだと思います。しかし自給率4割とは基礎代謝すら補えていないということですから、政府の責任放棄です。にもかかわらず輸出をしきりに強調する。違うのではと思います。
 山田 基礎的食料の自給は大前提ですが、飼料穀物まで自給となると非常に難しい。ただ、水田フル活用や中山間地域の活性化という観点から、国内需要に焦点を当てた野菜や果物や畜産物などわが国の得意な品質のいいものをしっかりつくる。そのうえで輸出の可能性も探って農業者の所得を上げていくことが必要です。そのためにも輸出にはもっと力を入れてゆかねばならないと思います。
 小松 TPP対策として「安定した経営所得安定制度」の必要性を強調されています。どう構築することが必要ですか。 
 山田 中心的な担い手の所得がきちんと実現できる政策でなければなりません。生産資材を1円でも安くし農産物を1円でも高く売って所得を実現できるならいい。しかし、コストが安くなったら、買い叩きにあって所得に結びついていない。そこは政策できちんと所得を実現するということがなければなりません。
 かつては米価水準もコストを勘案して決めてきたわけですが、食管制度がなくなって米の生産高、販売高はどんどん下がってきました。それが日本農業全体の産出額を下げているわけです。規模拡大して生産性を上げることは挑戦して取り組んでいるわけですが、国土の制約もあることから所得対策が不可欠です。

◆家族農業経営が基本

 小松 その点は民主党政権下で戸別所得補償政策がありました。自民党はそれはもう見直すということでしょうか。
 山田 私自身、一律に交付することがよかったのかという問題があったと思っています。一律10a1万5000円を交付したら米価は極端に下がりました。米の過剰も要因でしたが、交付金があるではないか、と値引きを求める買い手側とのやりとりがあったという話も聞きました。結果的に翌年の東日本大震災で供給が減り米価は回復しましたが、かりに震災がなかったら米価はもっと下がっていたかもしれません。そう考えると一律に交付することは問題だと思います。ですから需給調整は不可欠ですし、生産調整と連動した担い手への所得安定対策が必要です。
 小松 そうなると「担い手」についてはどうお考えですか。
 山田 まずは家族農業経営であり、それらが参加した集落営農組織であり、それを法人化する。地域で担い手がきちんと存在していて、それら担い手が地域の作業も請け負いながら地域の農業を支えていくというかたちだと思っています。
 小松 一方、小泉進次郎氏もそうですが、基本的に1次産業は遅れた産業だからたたき直してやる、企業的な経営が必要だといった議論ばかりを感じます。
 山田 日本の土地利用の制約や災害の多い気候などの問題をきちんと見て言ってほしい。家族農業が基本になって地域のなかで農地や自然を守って存在しているということをイメージしなければ国は成り立たない。それをイメージせず、株式会社が参入すればいいなどというのは日本を壊すことになると言いたいです。

【どうするTPP 農業改革(下)】ー現場から政策提案を、与党内で可能性追求、【インタビューを終えて】

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