【インタビュー・民進党衆議院議員篠原孝氏に聞く】国会審議は不十分2016年12月17日
国のあり方もっと怒りを
この秋の臨時国会ではTPP協定の承認案と関連法案が成立した。衆議院では審議が不十分だとの批判が強まるなか委員会では強行採決された。ただし、米国のトランプ次期大統領は来年1月の就任時にTPPから離脱すると表明しており、先行きは不透明だ。TPP反対を貫き、臨時国会では衆議院TPP特別委員会の野党側筆頭理事を務めた篠原孝議員に臨時国会を振り返るとともに、今後の課題を聞いた。
--TPPの国会審議をどう総括しますか。
衆議院のTPP審議時間は30時間。うち総理出席が20時間、一般質疑が10時間で、こんな委員会は前代未聞だと思います。この臨時国会はTPP、年金、カジノと3つが強行採決でした。
参議院では審議が60時間を超えて衆院よりも突っ込んだ議論になったと思いますが、しかし、結局、審議できたのは農業と食の安全ぐらいまで。知的財産、政府調達など問題だらけの分野で掘り下げた議論はまったくできていません。政府は秘密交渉といってきたのだから、国会審議を通じて交渉結果を国民の前に明らかにしなくてはならないのに、その役割はまったく果たせなかった。国会は国民の負託に答えられなかったと思いますが、TPP協定はそもそも膨大な内容でそう簡単にすべてがわかるものではないという問題もあります。
ただ、米国ではTPPはだめだという国民の声がサンダース現象を起こし、トランプも反対、クリントンも私のめざしたTPPではないといい、そしてトランプ次期大統領は日本で国会審議中に離脱を表明しました。これまで自由化問題では米国の外圧とさんざん言われましたが、今回は米国民の声がもとでTPPが空中分解することになった。日本国民ももっと怒らなくてはいけないんじゃないか。韓国では怒りのうねりが朴大統領を追い詰めていますが、日本ではそうした動きがみられない。
--改めてTPPの問題点をどう考えるべきですか。
明らかに米国の遠大な戦略のもとに日本の仕組みを米国と同じようにしていこうということです。それを日本ではアジアの成長に乗り遅れるなといって参加したが、中国も韓国もタイ、インドネシア、フィリピンも入っていないのに、どこかアジアなのか。そもそもが虚飾の経済外交なんです。
TPPは関税ゼロが原則で例外は無理です。それはブルネイ、シンガポールといった農業がない国がチリとNZと互いに補完しようというからできること。その交渉にいろいろな産業を抱える大国が入っていけば矛盾だらけになることは分かりきっていた。
実は2国間交渉は米国が嫌がっていたことであって、12か国の衣をかぶせて米国ルールを日本に押しつけようとしたのがTPPです。しかし、12か国で交渉するならなぜWTO(世界貿易機関)交渉でできないのか、となる。矛盾だらけの地域協定は瓦解して当然です。
--米国のトランプ次期大統領の言動をどう見ていますか。
グローバリズムとナショナリズムの相克があって、グローバリズムでなくてはいけないという強迫観念に世界は囚われていたが、英米という本家本元から、もう嫌だ、という声が出てきました。
農業者だけでなく米国の田舎に住む人たちから何が自由貿易だ、足元はどうなっているんだと違う方向に舵を切った。
フォードが海外に出ていって米国に輸出するなら関税をかける、だからこの国で作れとトランプ氏は言う、荒っぽいが正論だと思います。農産物もそうだがその国の国民が必要とするものはなるべくその国でつくったほうがいいに決まっている。
発効したパリ協定(地球温暖化対策の新たな枠組み)の眼目はモノの輸送をなるべく少なくすること。フードマイレージ、ウッズマイレージは言われてきたが、今度はグッズマイレージだ。その国で必要なものはその国で作る。トランプ氏は一面の真理を突いていると思います。
安倍総理はTPP再交渉はしないといっているのだから、それなら米国から2国間交渉を求められてもするべきではありません。
--今後の農政の課題をどう考えていますか。
安倍総理はよく、決めつけはよくないというが実はその代表は農業だ。農業は保護されてきた、ということほどの決めつけはない。ずっと減額され続けてきた予算額から見てもそれは明らか。農業は丸裸にされてしまったから、こういう苦しい状況になったということを改めて考えなければならないと思います。
自国で食料のきちんと作って地方で暮らしていけるようにすることは絶対に必要で、それは国民が望んでいることだと思う。
米国や英国で起きているような今の政治への反発は日本では起きていないというが、全国的には起きていなくても参院選で東北を中心に動きが出た。日本も英米を同じような価値を追いかけてきたのだから、東北、甲信越の結果を偶然ではなく英米と同じ傾向が出ているとみるべきです。
私はずっとTPP反対でした。来年は農協改革も国会できちんとチェックしていかなければなりません。それにしても安倍政治は官邸の規制改革推進会議などを重用しまったく民主主義的な政策決定をしていません。米国でホワイトハウスが審議会をどんどんつくって政策を決めていくなんてことはない。それを許したら議員は選挙で落とされます。日本も選挙できちんとチェックすべきです。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(138)-改正食料・農業・農村基本法(24)-2025年4月19日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(55)【防除学習帖】第294回2025年4月19日
-
農薬の正しい使い方(28)【今さら聞けない営農情報】第294回2025年4月19日
-
若者たちのスタートアップ農園 "The Circle(ザ・サークル)"【イタリア通信】2025年4月19日
-
【特殊報】コムギ縞萎縮病 県内で数十年ぶりに確認 愛知県2025年4月18日
-
3月の米相対取引価格2万5876円 備蓄米放出で前月比609円下がる 小売価格への反映どこまで2025年4月18日
-
地方卸にも備蓄米届くよう 備蓄米販売ルール改定 農水省2025年4月18日
-
主食用МA米の拡大国産米に影響 閣議了解と整合せず 江藤農相2025年4月18日
-
米産業のイノベーション競う 石川の「ひゃくまん穀」、秋田の「サキホコレ」もPR お米未来展2025年4月18日
-
「5%の賃上げ」広がりどこまで 2025年春闘〝後半戦〟へ 農産物価格にも影響か2025年4月18日
-
(431)不安定化の波及効果【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月18日
-
JA全農えひめ 直販ショップで「えひめ100みかんいよかん混合」などの飲料や柑橘、「アスパラ」など販売2025年4月18日
-
商品の力で産地応援 「ニッポンエール」詰合せ JA全農2025年4月18日
-
JA共済アプリの新機能「かぞく共有」の提供を開始 もしもにそなえて家族に契約情報を共有できる JA共済連2025年4月18日
-
地元産小粒大豆を原料に 直営工場で風味豊かな「やさと納豆」生産 JAやさと2025年4月18日
-
冬に咲く可憐な「啓翁桜」 日本一の産地から JAやまがた2025年4月18日
-
農林中金が使⽤するメールシステムに不正アクセス 第三者によるサイバー攻撃2025年4月18日
-
農水省「地域の食品産業ビジネス創出プロジェクト事業」23日まで申請受付 船井総研2025年4月18日
-
日本初のバイオ炭カンファレンス「GLOBAL BIOCHAR EXCHANGE 2025」に協賛 兼松2025年4月18日
-
森林価値の最大化に貢献 ISFCに加盟 日本製紙2025年4月18日