【国際ジャーナリスト・堤未果 氏に聞く】100年先の幸せを考える(2)2018年12月21日
・特別インタビュー2018年から19年へ
・協同組合いよいよ出番
◆海が売られる
--漁業法改正とTPP協定の問題を。
おそらくこの臨時国会で最も国民の日常的関心が薄く、最も危機的な法改正をされてしまった分野が漁業でしょう。これももちろんTPP11と連動しています。TPP協定第20章16条や第10章にある、漁港の整備や燃料への補助金支給の廃止、さらに漁船を建造するための融資規制、とどめは漁業権がオークション制になって外資も入札できるようになる事。これらはどれも日本の食料と軍事的安全保障を大きく脅かす内容ですが、TPPから関心がそれた日本では、もはや誰も関心を持ちませんでした。トランプが次にどんな暴言を吐くか、どんな悪さをするかの報道や、各界のスキャンダルなどを次々に流すワイドショーに、目を奪われ続けていたからです。
漁業が苦境にあるのは高齢化と日本人の魚離れだと言われていますが、最大の理由は魚介類の輸入が多すぎるからであることは、現場関係者なら皆知っています。本来、漁村、漁業は食だけでなく安全保障、国境を守るものですから国家が保護をしなければならない分野です。では何故それをしないのか? TPP11の条文にある、「魚介類の輸入制限撤廃」を見ればその答えがわかるでしょう。さらに漁業権が企業に売られることになったので、たとえば外資系の企業が漁業権を買い取り、そこで養殖をして儲からないから5年で撤退した過去の事例がありましたね。あれが常態化すると言うことです。その時日本の漁村はもうないかもしれない。それが食料だけでなく沿岸の安全保障を脅かす事に、日本国民は今気づかなければなりません。このように日本が叩き売りされた一年で、その総仕上げに向かおうというのがTPP11、日欧EPA、そしてアメリカの財界と投資家が今まさに手ぐすねを引いて交渉に入ろうとしている、日米FTAなのです。
--2019年にどう向かうべきでしょうか。
今申し上げたことの数々、国家丸ごと民営化の流れはこのまま加速してゆきます。なぜなら今アメリカの中間選挙が終わり、次は大統領選挙だからです。トランプは次に農業分野と医薬品、バイオ業界に対して一気に点数を稼がなければいけない。議会がねじれてしまったので外交で点数を稼ぐしかありません。アメリカ抜きで発効したTPP11、中国入りのRCEP、どちらも米国の業界のフラストレーションを高めています。年明けから始まるFTA交渉はものすごく厳しくなるでしょう。
何が厳しいかといえば、日本はTPPを推進してきた側として交渉する立場であること。日本政府の次の目標はアメリカのTPP復帰ですが、アメリカがTPPに戻るたった1つの条件を知っていますか? それは日本がTPP11よりも譲歩することです。農業でも将来の関税撤廃品目をもっと増やすことが要求される。医薬品は高値で据え置かれたり医療保険から外される方向で要求がくるでしょう。さらに日欧EPA発効でヨーロッパからも乳製品や木材などが入ってきて日本を直撃してくる。日本政府が旗を振るRCEP(東アジア地域包括経済連携協定)については、TPPはアメリカが主導しており、RCEP(東アジア地域包括経済連携協定)は中国が主導しているもので、どっちにつくかの問題だといったピントはずれな解説がありますが、これはどれもみな同じ方向をめざしている事を忘れてはなりません。
2019年からはますます、ここの現象ではく全体像や向かっている方向を見ることが重要になってきます。私たちもニュースを点で見てはいけない。目くらましをされないよう、個人でなく法律やお金の流れを見るように意識しなければなりません。
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